キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2014年3月25日(火)
[ 2014年外交・安保カレンダー ]
今週の注目はハーグで開かれる核セキュリティ・サミットだが、恐らく大方の関心は日米韓首脳会議など一連の個別会談の方だと思われる。これらについては今後多くの報道があると思うので、詳細には触れない。要は、米中、中韓の首脳会議が開かれても、現時点では大きなブレークスルーはない、ということ。これが実態だろう。
日米韓首脳会談についても、大きな期待は禁物だ。近年、韓国にとって日米韓の枠組みの重要性は大幅に低下している。これも中国が台頭していることへの韓国の対応と見るべきだ。簡単に言えば、韓国にとって、日米韓の連携はあくまで北朝鮮に対峙するためのものであって、対中関係には使えないということである。この点を読み誤ると日韓関係、日米韓関係は進展しない。
歴史的に、韓国は中国に対し特別の感情・関係を持っている。自然の要塞を持たない朝鮮半島は中国からの侵略に無力であり、独立維持のためには冊封関係しかない。韓国エリートの多くは、そのような歴史的記憶に基づき中国と付き合っていくしかないと信じているようだ。
クリミアをめぐる戦いはロシアの圧勝に終わったが、プーチンがこれで満足するとは思えない。ロシアの目的はクリミア併合ではなく、あくまでウクライナの中立化・緩衝国化である。だからこそ、ロシアは、独立したクリミアを直ちにロシア連邦に正式に編入したのだろう。ここまでプーチンは見事なほどケシカラン男であった。今や、欧米の関心はロシアがウクライナ南東部に侵攻を開始するか否かに移っている。だが、あからさまでない、静かな侵攻であれば、既に始まっていると考えた方が良さそうだ。プーチンにとってもう失うものは少ない。ロシア側が一気に動いても、欧米の制裁レベルは一気に強化されないと、欧米の足元を見ているのではないか。
個人的に今週一番気になったのは、エジプトで前大統領を支持したムスリム同胞団関係者529人に死刑判決が下ったことだ。まだ第一審だが、恐らく逆転はないだろう。同胞団が憎いのは判るが、500人を超える死刑判決は今後必ず逆噴射する。こんなことを繰り返しても、エジプトに安定は決してやって来ないだろう。エジプトの軍部・政治エリートにはなぜ、そんな簡単なことが判らないのか。エジプトからの報道に接するたびに、心が暗くなる。今週はこのくらいにしておこう。
3月24日 G7首脳、ウクライナ問題について協議(ハーグ)
24-25日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
24-25日 第3回ハーグ核セキュリティ・サミット(オランダ・ハーグ)
24-25日 米大統領、オランダ訪問
24-25日 欧州大統領、デンマーク訪問
24日か25日 ロシア2月雇用統計発表
24-26日 国際シアナッツ会議(アビジャン)
24-26日 エネルギー・鉱物資源に関する在外公館戦略会議(東京)
24-26日 欧州議会代表団、国連人権理事会訪問(ニューヨーク)
24-27日 欧州議会委員会(ストラスブール)
24-27日 欧州委員会、欧州原子力予防措置トレーニングセミナー(ルクセンブルグ)
24-27日 アジアの国際エンターテインメント総合見本市「香港フィルマート2014」(香港)
24-27日 天然ガスに関する会議・展示会「ガステック2014」(韓国・京畿道高陽市)
24-28日 第16期国連開発政策委員会(ニューヨーク)
24-28日 国際連合国際商取引法委員会、第29期作業部会III(ニューヨーク)
24-28日 国連環境計画(UNEP)常任委員、第126期オープンエンド委員会(ナイロビ)
24-28日 日・カナダ経済連携協定(EPA)交渉第5回会合(東京)
24日-4月3日 日ロさけ・ます漁業交渉開催(東京)
24日-4月4日 国連宇宙空間平和利用委員会、法務委員会(ウィーン)
25日 日米韓首脳会談
25日 能登半島地震から7年
25日 欧州委員会、有機農業に関する改正規則委員会の提案(ブリュッセル)
25日 欧州委員会、ICTの標準化に関するローリングプラン(ブリュッセル)
25-27日 欧州委員会、欧州原子力セーフガードトレーニングセミナー(ルクセンブルグ)
25-27日 パレスチナの問題に関する国連の国際会議(キト・エクアドル)
25-28日 UN Women事務局長、来日
25-28日 韓国大統領、ドイツ訪問
25-29日 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第2作業部会(横浜市)
26日 欧州評議会、常駐副代表委員会(Coreper I)、常駐代表委員会(Coreper II)(ブリュッセル)
26日 EU-USサミット(ブリュッセル)
26日 イギリス貿易代表団、オマーン訪問
26日 米大統領、ベルギー訪問。ファンロンパイ欧州連合(EU)大統領、バローゾ欧州委員長と会談。
26-27日 スウェーデン国王夫妻、ラトビア訪問
26-27日 中国国家主席、フランス訪問
27日 欧州委員会、交通・ビジネス・サミット2014(ブリュッセル)
27日 欧州委員会、第10回RAPEX年次報告書を提示(ブリュッセル)
27日 欧州委員会、欧州経済の長期的な資金供給に関するパッケージを採用(ブリュッセル)
27日 欧州委員会、2014欧州近隣政策パッケージの採用(ブリュッセル)
27日 米大統領、イタリア訪問。米伊首脳会談。ローマ法王フランシスコと会談(バチカン市国)
27日 フィリピン反政府武装勢力モロ・イスラム解放戦線(MILF)と政府、包括和平合意の調印式(マニラ)
27日 米国2013年第4四半期GDP発表
27日 ブラジル2月月間雇用調査発表
27-29日 英国小規模企業連盟(FSB)年次総会(マンチェスター)
27-29日 アフリカ財務閣僚会議専門家委員会、第33期計画および経済開発会議(アブジャ、ナイジェリア)
28日 欧州評議会、常駐副代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
28日 欧州委員会、電磁界に関するワークショップ(EMF)と健康への影響:科学から政策や市民意識へ(アテネ)
29日 スロバキア大統領選
30日 トルコ地方選挙
30日 欧州各国、夏時間入り
30日 羽田空港の国際線発着枠が拡大
30-31日 日朝政府間協議(北京)
30日-4月1日 中国国家主席、ベルギー訪問
【来週の予定】
31日 レジオスターズ(RegioSters)賞授賞式2014(ブリュッセル)
31日 欧州議会委員会(ブリュッセル)
31日 医療保険制度改革法(オバマケア)に基づく新規保険申込期限
31日 トルコ2月貿易統計発表
31日の週 日EU経済連携協定(EPA)交渉第5回会合
31日-4月1日 アフリカ経済委員会、第47期計画および経済開発会議(アブジャ、ナイジェリア)
31日-4月4日 国連人権理事会、第14期アフリカ系の人々に関する専門家作業部会(ジュネーヴ)
31日-4月4日 国際連合国際商取引法委員会、作業部会VI(ニューヨーク)
31日-4月11日 第20期国連移住労働者委員会(ジュネーヴ)
31日-4月11日 第11期国連障害者の権利委員会(ジュネーヴ)
31日-4月11日 核兵器あるいはその他の核爆発装置用の核分裂性物質の生産を禁止する専門家委員会(ジュネーヴ)
31日-4月17日 万国郵便連合、郵便業務理事会(スイス・ベルン)
4月1日 欧州委員会、成長と雇用創出のためのより柔軟なビザに関するルールを作成(ブリュッセル)
1日 欧州議会委員会(ブリュッセル)
1日 欧州地域委員会、欧州の地域と都市のために:若者の視点(ブリュッセル)
1日 EU統計局(ユーロスタット)、2月失業率発表
1日 消費税率8%に引き上げ、地球温暖化対策税の税率引き上げ
1-2日 ブラジル中銀、金融政策審議会(Copom)
2日 ブラジル2月鉱工業生産指数発表
2日 欧州評議会、常駐副代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
2日か3日 ロシア2013年経済活動別・需要項目別GDP統計発表
2-3日 第4回EU・アフリカ首脳会議(ベルギー・ブリュッセル)
2-3日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
2-3日 欧州評議会、常駐副代表委員会(Coreper I)、常駐代表委員会(Coreper II)(ブリュッセル)
3日 欧州委員会、慢性疾患サミット(ブリュッセル)
3日 イギリス女王、法皇と会談(イタリア)
3日 欧州議会委員会(ブリュッセル)
3日 米国2月貿易統計発表
3日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
3日 トルコ3月消費者物価指数(CPI)発表
4日 CIS外相会合(モスクワ)
4日 欧州評議会、常駐副代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
4日 米国3月雇用統計発表
4日 日銀・異次元緩和から1年
5日 アフガニスタン 大統領選
5日 第18回ASEAN財務相会議(AFMM)(ネピドー)
5-7日 中国清明節休暇
6日 ハンガリー議会選
6日 コスタリカ大統領選
6日 京都府知事選
6-8日 アラブ諸国塩水脱塩会議(Arwadex)(リヤド)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問