外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2014年3月18日(火)

外交・安保カレンダー(3月17-23日)

[ 2014年外交・安保カレンダー ]


今週もワシントンの関心事はウクライナとマレーシア航空機のようだが、筆者が注目するのは17日からウイーンで始まるP5+1とイランの核問題協議だ。イラン外務省は既に「今回のラウンドで最終合意に達することは期待していない」と述べている。当然だろう、関係者の誰も簡単に合意できるとは思っていないはずだ。理由は簡単。なぜなら、イランのウラン濃縮の権利をどの程度認めるかが交渉の焦点だからだ。されば、最終合意の可能性は低い。
西側、特にイスラエルはイランに濃縮の権利など到底認めないのに対し、イランは濃縮の権利確保が最低条件だ。今回の交渉で結果が出ることはない。交渉期限は7月に来るが、その時点でも最終合意は難しいだろう。実際には当面双方とも、合意も、決裂も出来ないのではないか。
P5+1が下手にイランに濃縮の権利を認めて合意すれば、イスラエルが黙っていない。決裂すれば、ローハニはハメネイ最高指導者と国民の信頼を失うだろう。場合によってはイラン国内で力関係の逆転が起きるかもしれない。されば、イランはウラン濃縮(もしくは核兵器開発技術の取得)を再開するだろうから、いずれイスラエルはイランを攻撃するかもしれない。どちらに転んでも出口はない。筆者が交渉担当者なら、今年7月には3ヶ月か、6ヶ月程度交渉を延長することでお茶を濁す。とりあえず現状が維持できるからだ。正念場は来年1月以降ではないか。
17日にクリミアでの住民投票の結果が出た。95%以上の賛成でクリミアのロシアへの編入が支持されたという。次の焦点はロシアの対応だ。クリミアの代表団はモスクワに向かっている。理論的にロシアは、①歓迎はするが何もしない、②クリミアの独立は認めるが編入はしない、③ロシア連邦に正式に編入する等の選択肢がある。
だが、この期に及んで西側に配慮して何もしなければ、プーチンはロシア国民の失望を買うだろう。されば、独立を認めるだけにするか、編入まで踏み込むか否かだが、ロシア側の対応によって欧米の制裁レベルも変わってくるだろう。問題は米国と欧州の温度差だ。
ロシアの大金持ちならともかく、ビザ発給停止や資産凍結などにプーチンは痛みを感じないだろう。それでは、ロシアの天然ガスに依存する欧州諸国は(対イラン制裁のような)厳しい天然ガス輸入禁止措置に踏み切れるだろうか。要するに、欧米対ロシアの我慢比べは始まったばかりということだ。いずれにせよ、これを「新冷戦」と呼ぶのは、「冷戦」の本質を知らない人の議論だと思う。今週はこのくらいにしておこう。
 
3月17日 EU外相理事会(ブリュッセル)
17日 EU統計局(ユーロスタット)、2月消費者物価指数(CPI)発表
17日 6カ国とイランの核協議(ウィーン)
17日 パレスチナ大統領、ホワイトハウス訪問
17日 ルー米財務長官がブラジルのマンテガ財務相、トンビニ中銀総裁と会談(サンパウロ)
17日 北朝鮮をめぐる国連人権理事会会合(ジュネーブ)
17日 モルドバ外相代理、NATO訪問
17日 国立環境研究所や茨城大などが地球温暖化による日本への影響予測を発表(東京)
17-19日 アフリカ貿易金融会議「Africa Trade Finance Week」(ケープタウン)
17-19日 トルコ大統領、デンマーク訪問
17-19日 平成25年度中南米大使会議(東京)
17-20日 欧州議会委員会(ブリュッセル)
17-21日 第7回ベトナムEU自由貿易協定(FTA)交渉(ハノイ)
17-21日 欧州委員会、対話的な人口統計学の展示会(ブリュッセル)
17-21日 第57期国連麻薬委員会(ウィーン)
17-28日 第6期強制失踪委員会(ジュネーヴ)
17-28日 第78期国連人事委員会(ニューヨーク)
17-28日 ニュージーランド首相、中国、香港、オランダ訪問
18日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
18日 欧州委員会、欧州における健康会議(ブリュッセル)
18日 「中央アジア+日本」対話・第6回東京対話(東京)
18日 サン国家主席が国会演説、日・ベトナム首脳会談(首相官邸)
18日 米国2月消費者物価指数(CPI)発表
18-19日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
18日か19日 ロシア1-2月鉱工業生産統計発表
18-20日 バーレーン国王、パキスタン訪問
19日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
19日 欧州評議会、常駐副代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
19日 日露投資フォーラム(東京)
19日 国連人口賞第2通常会議(ニューヨーク)
19日 国連人間居住計画、第52期常任委員会(ナイロビ)
19日 経済財政諮問会議(首相官邸)
19日か20日 ロシア1月貿易統計発表
19-20日 日朝赤十字会談(中国・瀋陽)
19-20日 ウナギの国際的資源保護・管理に関する非公式協議(水産庁)
20日 地下鉄サリン事件から19年
20-21日 欧州理事会(ブリュッセル)
20-21日 微小粒子状物質PM2.5などによる大気汚染問題について日中韓3カ国が実務者レベルで話し合う「政策対話」の初会合(北京)
21-23日 ジャパン・フェア・イン・サンティアゴ2014(サンティアゴ)
21日 米格付け会社フィッチ、米国の格付けを発表
22日 モルディブ議会選
22日 防衛大卒業式(横須賀市)
22日-4月1日 中国国家出席、欧州歴訪
23日 大阪市長選
 

【来週の予定】
24-25日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
24-25日 第3回ハーグ核セキュリティ・サミット(オランダ・ハーグ)
24-25日 米大統領、オランダ訪問
24日か25日 ロシア2月雇用統計発表
24-26日 国際シアナッツ会議(アビジャン)
24-27日 欧州議会委員会(ストラスブール)
24-27日 アジアの国際エンターテインメント総合見本市「香港フィルマート2014」(香港)
24-27日 天然ガスに関する会議・展示会「ガステック2014」(韓国・京畿道高陽市)
24-28日 第16期国連開発政策委員会(ニューヨーク)
24-28日 国際連合国際商取引法委員会、第29期作業部会Ⅲ(ニューヨーク)
24-28日 国連環境計画(UNEP)常任委員、第126期オープンエンド委員会(ナイロビ)
24日-4月4日 国連宇宙空間平和利用委員会、法務委員会(ウィーン)
25日 能登半島地震から7年
25-27日 欧州委員会、欧州原子力セーフガードトレーニングセミナー(ルクセンブルグ)
25-27日 パレスチナの問題に関する国連の国際会議(キト・エクアドル)
25-29日 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第2作業部会(横浜市)
26日 欧州評議会、常駐副代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
26日 EU-USサミット(ブリュッセル)
26日 米大統領、ベルギー訪問。ファンロンパイ欧州連合(EU)大統領、バローゾ欧州委員長と会談。
26-27日 スウェーデン国王負債、ラトビア訪問
27日 欧州委員会、交通・ビジネス・サミット2014(ブリュッセル)
27日 米大統領、イタリア訪問。ローマ法王フランシスコと会談(バチカン市国)
27日 米国2013年第4四半期GDP発表
27日 ブラジル2月月間雇用調査発表
27-29日 英国小規模企業連盟(FSB)年次総会(マンチェスター)
27-29日 アフリカ財務閣僚会議専門家委員会、第33期計画および経済開発会議(アブジャ、ナイジェリア)
28日 欧州評議会、常駐副代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
28日 欧州委員会、電磁界に関するワークショップ(EMF)と健康への影響:科学から政策や市民意識へ(アテネ)
29日 スロバキア大統領選
30日 トルコ地方選挙
30日 欧州各国、夏時間入り
30日 羽田空港の国際線発着枠が拡大


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問