キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2014年3月11日(火)
[ 2014年外交・安保カレンダー ]
先週一週間はワシントン出張だったので、この原稿は成田行帰国便の中で書いている。帰国直前に米国で幾つか見た日曜朝トークショーは、案の定、ウクライナ問題ばかり。
但し、オバマ外交の詳細に触れる識者は少ない。問われているのはオバマ大統領がプーチンのロシアに対し「強いリーダーシップ」を発揮したか否かだからだ。
識者たちの関心は、クリミア併合問題でヒラリーが何を言うか、共和党保守派の集会で2016年の同党立候補予定者が如何にオバマ大統領を扱き下ろすかに集中していた。
関心はウクライナ情勢の行方ではなく、あくまで秋の中間選挙と次の大統領選挙。内政は外交に優先する。やはり米外交は変わっていないようだ。他国のことは言えないが・・・。
今回米国で感じたことは、ウクライナ問題が持つ戦略的重要性についての認識が欧米と日本ではかなり異なるのではないか、ということだ。日本はG7の一員としてロシアを非難する一方、ロシアとの関係悪化は避けたいと考えている。誤解を恐れずに申し上げれば、それ自体は問題ではない。問題は戦略的危機感の有無である。
欧米、特に米有識者は今回のロシアの動きを「ウクライナ政変に対するプーチンの気紛れな対応」などとは考えていない。今回のクリミア併合は今後10年、20年間の欧米対ロシア関係を左右しかねない戦略的意味合いを持つ。このことを日本は正確に理解した上で対応する必要があるだろう。
もう一つ気になるのが先週消息を絶ったマレーシア航空機だ。情報があまりに不足しているため、単なるメカニカル・トラブルではないとの見方を誰も捨てきれない。盗難旅券を使った二人のアジア系旅行者の話が独り歩きし始め、やれテロリストだ、いや麻薬の運び人だ、などといった噂が喧伝されている。実に困ったものだ。
現時点ではウイグル自治区関係者は勿論、イスラムのテロリストの関与を示唆する証拠どころか、情報すら十分得られていない。報道の要請と知的正直さとのバランスは常に難しいものだ。今週はこのくらいにしておこう。
3月10日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
10日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ブリュッセル)
10日 欧州委員会、沿岸と海洋観光のハイレベル会議(アテネ)
10日 米予算教書
10日 フィラデルフィア連銀総裁・ノワイエ仏中銀総裁、討論会
10-11日 王国人的資産管理サミット(リヤド)
10-11日 欧州委員会、イノベーション•コンベンション2014(ブリュッセル)
10-12日 第9回ヨーロッパ年次シンポジウム(ベルリン)
10-12日 アメリカエネルギー長官、インド訪問
10-12日 欧州ユース会議(ギリシャ)
10-13日 欧州議会本会議、委員会(ストラスブール)
10-13日 第48回ブラジル国際ギフトフェア(サンパウロ)
10-14日 国連気候変動枠組み条約の特別作業部会(ボン)
10-14日 リトアニア外務大臣、訪日
10-14日 拷問の犠牲者のための国連自発的基金、評議員会(ジュネーブ)
10-21日 第58期国連女性の地位委員会(ニューヨーク)
10-28日 第110期国連人権委員会(ジュネーヴ)
11日 チリ大統領就任式
11日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
11日 欧州委員会、自由、安全と正義分野に関する会議(ブリュッセル)
11日 米国フロリダ州選出連邦下院議員補欠選挙
11日 東日本大震災から3年、東日本大震災3周年追悼式(東京)
11日 スペイン列車爆破テロから10年
11-12日 日・ウルグアイ投資協定交渉第6回会合(テレビ会議)
11、13日 WTO加盟国通商政策レビュー:ミャンマー(ジュネーブ)
11-15日 ソマリア連邦共和国大統領、訪日
12日 欧州評議会、常駐副代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
12日 欧州委員会、TTIP第4ラウンド:首席代表による利害関係者へのブリーフィング(ブリュッセル)
12日 第57期国連麻薬委員会(ウィーン)
12日 英首相、イスラエル訪問
12日 春闘集中回答日
12日 ブラジル2月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
12日 トルコ1月国際収支発表
12-13日 欧州評議会、常駐代表委員会(Coreper II)(ブリュッセル)
12-14日 第27期人権の促進と保護のための国内機関に関する国際調整委員会(ジュネーヴ)
12-14日 UNCTAD、第67回戦略的枠組みとプログラム予算に関する作業部会(ジュネーヴ)
13日 ブラジル1月月間小売り調査発表
13日 米国2月小売売上高統計発表
13日 中国2月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
13-14日 欧州委員会、EUの結束政策による中小企業支援に関する会議(バルセロナ) 13-14日 欧州委員会、国際漁獲能力会議(ギリシャ)
13-14日 国連麻薬委員会、ハイレベル審査委員会(ウィーン)
13-16日 台湾エコプロダクツ見本市
13-16日 第30回韓国国際医療機器&病院設備展示会(KIMES)(ソウル)
13-27日 国際労働機関(ILO)第320期理事会およびその委員会(ジュネーヴ)
14日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ブリュッセル)
14日 WTO一般理事会(ジュネーブ)
14日 欧州経済社会評議会、ヨーロッパ消費者の日:危機の時代における消費者保護と社会的統合」
15日 オーストラリア・南オーストラリア州総選挙
15日 スロバキア大統領選挙
16日 セルビア議会選
16日 石川県知事選
16-19日 ベトナム社会主義共和国主席、来日
【来週の予定】
17日 EU統計局(ユーロスタット)、2月消費者物価指数(CPI)発表
17日 EU外相理事会(ブリュッセル)
17日 6カ国とイランの核協議(ウィーン)
17日 パレスチナ大統領、ホワイトハウス訪問
17-19日 アフリカ貿易金融会議「Africa Trade Finance Week」(ケープタウン)
17-19日 トルコ大統領、デンマーク訪問
17-20日 欧州議会委員会(ブリュッセル)
17-21日 第7回ベトナムEU自由貿易協定(FTA)交渉(ハノイ)
17-21日 欧州委員会、対話的な人口統計学の展示会(ブリュッセル)
17-21日 第57期国連麻薬委員会(ウィーン)
17-28日 第6期強制失踪委員会(ジュネーヴ)
17-28日 第78期国連人事委員会(ニューヨーク)
18日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
18日 米国2月消費者物価指数(CPI)発表
18-19日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
18日か19日 ロシア1-2月鉱工業生産統計発表
19日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
19日 欧州評議会、常駐副代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
19日 日露投資フォーラム(東京)
19日か20日 ロシア1月貿易統計発表
20日 地下鉄サリン事件から19年
20-21日 欧州理事会(ブリュッセル)
20-21日 微小粒子状物質PM2.5などによる大気汚染問題について日中韓3カ国が実務者レベルで話し合う「政策対話」の初会合(北京)
21-23日 ジャパン・フェア・イン・サンティアゴ2014(サンティアゴ)
22日 モルディブ議会選
23日 大阪市長選
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問