外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2014年2月25日(火)

外交・安保カレンダー(2月24日-3月2日)

[ 2014年外交・安保カレンダー ]


今週のハイライトは何といってもウクライナだろう。ウクライナでは、2004年のいわゆるオレンジ革命以来、不安定な状態が続いている。EU加盟を志向する同国中部・西部とロシア志向の強い南東部で、国家の方向性に関する国論が事実上二分されており、両者間で妥協成立の可能性がほとんどないからだ。
2004年末、混乱の中で親欧米派のユシチェンコが大統領に選出されたが、2010年の大統領選では逆にヤヌコビッチが大統領に返り咲き、爾来ウクライナでは親ロシア的政策が続いた。しかし、昨年11月ヤヌコビッチが欧州連合(EU)加盟の前提となる「連合協定」の調印を見送ったことをきっかけに、ウクライナ国内で再び騒乱が始まった。
2月22日にはヤヌコビッチがキエフを追われ、元首相のティモシェンコが釈放された。更に24日には、ウクライナ議会がヤヌコビッチ大統領を解任し、議会の議長を大統領代行に選出したという。一見、親欧米派が勝利したようにも見えるが、ロシアが巻き返しを図る可能性も十分あるので、ウクライナがこのまま安定していくとは考えにくい。
そもそもウクライナの現行憲法では、大統領は弾劾または病気以外では辞任しない限り失職しない。弾劾手続きには時間がかかるので、議会側は今回一気に大統領解任を決議したようだ。しかし、議会による大統領解任そのものは憲法上の根拠がなく、解任自体が違憲となる可能性も十分あるという。
来年5月25日には大統領選挙が予定されているが、ウクライナ国内の親ロシア派、親欧米派に加えEU、ロシア、米国という5つの主要プレーヤーは、それぞれ、どのような思惑の下で如何なる行動をとるだろうか。いずれにせよ、事態が安定するまでにはかなりの紆余曲折があるだろう。
例えば、万一、ロシアが軍事介入すれば、EUも親欧米派に何らかの支援をせざるを得ない。そうなれば最悪の場合、ウクライナで内戦が始まり、国土が二分される可能性すらある。その際米国は介入するのか。オバマ政権はウクライナを米国の戦略的利益と考えるだろうか。それともシリアと同様、不介入主義を貫くのだろうか。
今後数週間以内にオバマ政権の対欧州政策が再びテストされる可能性がある。米国にとっては介入しても、しなくても、いばらの道が待っている。ロシアがウクライナを易々と手放す可能性は限りなくゼロに近いと思うからだ。今週はこのくらいにしておこう。
 
2月24日 ユーロスタット、1月消費者物価指数(CPI)発表
24日 EU教育・若年・文化担当相理事会(ブリュッセル)
24日 国連人口賞委員会、第一例会(ニューヨーク)
24日 EU-ブラジルサミット(ブリュッセル)
24日 日仏財務相会談(東京)
24日 欧州連合外務・安全保障政策上級代表、韓国訪問
24日 中国2013年経済状況(国民経済・社会発展統計公報)発表
24-25日 セネガル支援国会合(パリ)
24-25日 ドイツ首相、イスラエル訪問
24-25日 ルクセンブルグ外相、ロシア外相と会談(モスクワ)
24-25日 欧州委員会、国際移民と移動性に関するEU-OECDの会議:労働市場のニーズに経済的な移行をマッチング(ブリュッセル)
24-26日 国際連合経済社会理事会、実務活動セグメント(ニューヨーク)
24-26日 第3回SIDS国際会議、政府間準備委員会(ニューヨーク)
24-27日 欧州議会本会議、委員会(ストラスブール)
24-28日 拷問等禁止条約、第22回小委員会(ジュネーヴ)
24-28日 第12期人権理事会諮問委員会(ジュネーヴ)
24日-3月6日 米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」
24日-4月18日 米韓合同軍事演習「フォール・イーグル」
24日-3月21日 平和維持活動に関する特別委員会およびその作業部会、実質的セッション(ニューヨーク)
25日 欧州委員会、欧州経済見通し発表(ブリュッセル)
25日 アラブ連盟事務総長、アラブ首長国連邦を訪問
25日か26日 ロシア1月雇用統計発表
25-26日 ブラジル中銀、Copom
25-26日 WTO知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)理事会(スイス・ジュネーブ)
25-26日 「子供から大人までの栄養と身体活動: 挑戦と機会」会議(アテネ)
25-27日 アラブ首長国連邦アブダビ首長国皇太子殿下、来日
26日 WTOサービス理事会(ジュネーブ)
26日 欧州評議会、常駐副代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
26日 NATO国防相理事会
26日 欧州連合外務・安全保障政策上級代表、ニュージーランド訪問
26日 EU PROMETHEUS2014 - 運営委員会(アテネ)
26-27日 欧州評議会、常駐代表委員会(Coreper II)(ブリュッセル)
26-28日 国際バイオ機器産業展2014(BIO TECH KOREA 2014)(ソウル)
26-28日 サウジアラビア皇太子、インド訪問
26-28日 平成25年度アジア大洋州大使会議
26-28日 スウェーデン外務大臣、来日
26日-3月2日 フラワーショー(ニュージーランド・クライストチャーチ)
27日 ドイツ首相、イギリス訪問
27日 トルコ、ギリシャのキプロス人が、和平交渉のため同時にアテネを訪問(アンカラ)
27日 ブラジル2013年第4四半期GDP発表
27日 ユーロスタット、冬季経済予測発表
27日か28日 ロシア2013年対内投資統計発表
27日-3月1日 第11回クラスノヤルスク経済フォーラム(ロシア・クラスノヤルスク)
28日 米国2013年第4四半期GDP発表(改定値)
28日 ユーロスタット、1月失業率発表
28日 インド2014年度中央政府予算発表
28日 欧州評議会、常駐副代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
28日-3月2日 ポーランド外相、イラン訪問
3月1日 第24回中国華東輸出入商品交易会(上海)
1-2日 ハーバード大学にて欧州会議「欧州2014:再生成」(アメリカ)
2日 沖縄石垣市長選
2日 イスラエル首相、アメリカ合衆国訪問
 

【来週の予定】
3日 第12期全国人民政治協商会議第2回全体会議(北京)
3日 スーダン外相、エジプト訪問
3日 トルコ2月消費者物価指数(CPI)発表
3日 EU環境相理事会(ブリュッセル)
3-5日 ブラジルでカーニバル期間(全国)
3、5日 WTO加盟国通商政策レビュー:マレーシア(ジュネーブ)
3-6日 欧州議会委員会(ブリュッセル)
3-7日 女性差別撤廃委員会、第59回 会合前作業部会(ジュネーブ)
3-7日 人権委員会、第110回会合前作業部会、(ジュネーブ)
3-7日 第21期人権理事会、作業部会(ジュネーブ)
3-7日 IAEA理事会(ウィーン)
4日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ブリュッセル)
4日 欧州委員会開発委員、コンゴ訪問
4日か5日 ロシア2月消費者物価指数(CPI)発表
4-5日 再生可能エネルギー会議「Renewable Energy Forum South Africa」(ヨハネスブルク)
4-5日 サウジ川下産業フォーラム(サウジアラビア・ヤンブー)
5日 ユーロスタット、2013年第4四半期実質GDP成長率発表
5日 第12期全国人民代表大会第2回全体会議(北京)
5日 FRB、米地区連銀景況報告
5-8日 台北国際スポーツ用品見本市、台北国際マリンレジャー用品見本市、台北国際自転車見本市、台北国際スポーツテキスタイル見本市
5-9日 香港インターナショナル・ジュエリー・ショー2014
6日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
6-7日 EU司法・内務相理事会(ブリュッセル)
7日 米国2月雇用統計、1月貿易統計発表
7-8日 OPEC事務総長、イラン訪問
7-16日 第11回冬季パラリンピック(ソチ)
9日 コロンビア国会議員選挙
9日 北朝鮮最高人民会議代議員選挙
9日 エルサルバドル 大統領選
9-10日 欧州連合外務・安全保障政策上級代表、イラン訪問


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問