キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2014年2月12日(水)
[ 2014年外交・安保カレンダー ]
幸いソチ冬季オリンピックは今のところ順調に進んでいるが、ロシアの隣国ウクライナでは騒動が拡大しつつある。事の発端はヤヌコビッチ大統領が政治判断を誤り、昨年11月に欧州連合(EU)加盟の前提となる「連合協定」の調印を見送ったことだ。ウクライナ国民の多くはEU志向を強めている。にもかかわらず、大統領はロシアからの圧力を受け、同協定署名を拒否したばかりか、同国から資金援助まで受ける始末。爾来EU加盟推進派の怒りは爆発し、既に大規模デモが10回も発生している。キエフの独立広場が大統領退陣を求める勢力で埋め尽くされたのは2004年のオレンジ革命以来だろうか。だが肝心の欧米の足並みは乱れたままだ。
10日、EUは対ウクライナ経済制裁の是非を巡って外相会議を開くが、恐らく結論は出ないだろう。米国もこうしたEUの中途半端な態度に業を煮やしつつある。そんな中でEUを強く非難する米高官の内輪発言内容がYouTubeで暴露され、EU側は猛反発。欧米間では今も醜い非難合戦が続いている。EUは相変わらずまとまりを欠いているようだ。
もう一つ気になるのが中台関係だ。11日には台湾大陸委員会の王主任委員が訪中し、南京で中国国務院台湾事務弁公室の張主任と会談する。中台関係に関する閣僚級の公式会談は初めてだ。最近の中台関係の進展を象徴するような話ではないか。2008年の総統選挙で国民党が政権復帰して以来、中国の対台湾政策、東シナ海戦略は大きく変わった。爾来、農産品の買い上げから台湾メディア買収まで、中国の台湾に対する一見善意だが、実に計算された一連の懐柔政策が実を結びつつある。1996年の総統選挙の際のようにミサイル発射などで威嚇してくれば台湾の人々にも判りやすいのだろうが、最近の中国による対台湾政策は見事と言う他ない。台湾のビジネスマンも「このままでは大陸に吸収されてしまう」といった懸念を深めている。このままでは台湾が危ないと考えるのだが・・・。さて、今週はこのくらいにしておこう。
2月10日 EU外相理事会(ブリュッセル)
10日 危機を超えて:ビジネスin欧州2014(ブリュッセル)
10日 太平洋同盟首脳会合(コロンビア・カルタヘナ市)
10日 欧州委員会、欧州サイバー危機センター設立から1年
10日 欧州委員会、アルプス地方のためのEUの戦略の道を開く会議(ブリュッセル)
10日 モルドバ外相、NATO本部訪問
10-13日 欧州議会委員会(ブリュッセル)
10-14日 日・コロンビア経済連携協定(EPA)交渉第4回会合(ボゴタ・コロンビア)
10-28日 第57期女性に対する差別撤廃委員会(ジュネーヴ)
11日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
11日 欧州委員会、欧州の競争フォーラム2014(ブリュッセル)
11日 フランス大統領、訪米
11日 欧州地域委員会 、地方レベルでのEUの移動に関する市長会議(ブリュッセル)
11日 欧州委員会 、第8回行政における財政経済学者のネットワーク会議(ブリュッセル)
11日 中台、双方の担当閣僚が初の正式会談(南京)
11-12日 欧州委員会、EU•ASEAN航空サミット(シンガポール)
11-12日 NATO軍事委員会、グルジア訪問
11-14日 第1回APECビジネス諮問委員会(ABAC)(オークランド)
11-16日 航空見本市「シンガポール航空ショー2014」(シンガポール)
11-21日 第52期国連社会開発委員会(ニューヨーク)
12日 欧州経済社会評議会 、原子力や放射線緊急事態に関して市民と危機コミュニケーションに関する公聴会(ブリュッセル)
12日 欧州評議会、常駐副代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
12日 WTO総長、EU幹部と会合(ブリュッセル)
12日 インド2013年12月工業生産指数発表
12日 中国1月貿易統計発表
12-13日 ハンガリー首相、ビジネス代表団を率いて中国訪問
12-14日 ギリシャ大統領、マルタ訪問
12-16日 マーシャル諸島大統領、広島訪問
13日 欧州委員会、EU-中国の貿易•投資関係に関する会議(ブリュッセル)
13日 オランダ首相、欧州議会訪問
13日 チュニジア制憲議会大統領、欧州議会訪問
13日 米国1月小売売上高統計発表
13日 ブラジル2013年12月月間小売り調査発表
13日 トルコ2013年12月国際収支発表
13-14日 欧州経済社会評議会、新しいグローバル•パートナーシップ:欧州の市民社会のポスト2015枠組
13-14日 第2回核兵器の人道的影響に関する会議(メキシコ)
13-14日 欧州理事会、新世代ネットワークの高速化(NGN)ユビキタス:デジタル成長の柱(アテネ)
13-15日 東アフリカ良質コーヒー協会(EAFCA)年次総会・展示会(ブルンジ・ブジュンブラ)
13-15日 エジプト観光相、イタリア訪問
13-15日 Bit 2014:国際観光交流(ミラノ)
14日 米・ヨルダン首脳会談(カリフォルニア)
14日 中国1月消費者物価指数(CPI)発表
15日 第12回「気候変動に対する更なる行動」に関する非公式会合(東京)
15-17日 サウジアラビア皇太子、パキスタン訪問
16-18日 エリトリア外相、ロシア訪問
【来週の予定】
17日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
17日 欧州委員会、大西洋の戦略:直接運用するファンドと運用プログラムに関するワークショップ(ブリュッセル)
17-18日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
17-18日 欧州委員会、欧州への投資:明日の都市(ブリュッセル)
17日か18日 ロシア1月鉱工業生産統計発表
17-20日 欧州議会委員会(ブリュッセル)
17-21日 人権理事会、人権、多国籍企業およびその他の企業に関する第7回作業部会(ジュネーヴ)
17-21日 国連先住民族のための自主基金第27期理事会(ジュネーヴ)
17-28日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会、ワーキンググループB、第42セッション(ウィーン)
18日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
18日 日本・サウジアラビア・ビジネスカウンシル(東京)
18日 成長の操縦者として競争政策の執行会議(ブリュッセル)
18日 第33回市民的及び政治的権利に関する国際規約締約国会議(ニューヨーク)
18-20日 アフリカエネルギー会議「Africa Energy Indaba」(南ア・ヨハネスブルク)
18-21日 サウジアラビア王国皇太子殿下、来日
18-26日 国連憲章及び国連の役割強化に関する特別委員会(ニューヨーク)
19日 欧州評議会、常駐副代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
19日 欧州委員会、空港や航空会社のための新しい国家補助ガイドラインを採用(ブリュッセル)
19日 米大統領、メキシコ訪問
19日 フランス、ドイツ協力強化対話
19-20日 欧州評議会、常駐代表委員会(Coreper II)(ブリュッセル)
19-20日 第37期国際農業開発基金理事会(ローマ)
19日か20日 ロシア2013年貿易統計発表
19-21日 第25期国連独立監査諮問委員会(ニューヨーク)
19-21日 犯罪防止・刑事司法委員会、ラテンアメリカおよびカリブ海地域準備会合(サンホセ)
20日 リビア憲法制定議会選挙
20日 欧州委員会、 沿岸の観光戦略を立ち上げ(ブリュッセル)
20日 植民地及びその人民に対する独立の付与に関する宣言の実施に関する特別委員会(ニューヨーク)
20日 米国1月消費者物価指数(CPI)発表
20日 ブラジル1月月間雇用調査発表
20-21日 EU競争担当相理事会(ブリュッセル)
20-21日 EU・ブラジル首脳会議
20-21日 欧州委員会、エコデザイン•エネルギーラベル表示の国際的動向:製品政策に関する会議(ブリュッセル)
20-21日 "Financing Creativity"会議(アテネ)
21日 第5回反トラストの新しいフロンティア国際会議(パリ)
22-23日 G20財務相・中央銀行総裁会議(オーストラリア・シドニー)
22日-3月7日 ダライ・ラマ、アメリカ訪問
23日 皇太子殿下誕生日(54歳)
23日 山口県知事選
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問