キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2013年12月10日(火)
[ 2013年外交・安保カレンダー ]
今週の注目は、何と言っても、13日から始まる日本・ASEAN特別首脳会議だろう。過去一年、中韓はそれぞれ別々の思惑から日本を孤立させようと努めてきたが、日本にとっては幸いなことに、どうやらそうした試みは裏目に出つつあるようだ。
そもそもこの日・ASEAN首脳会議、タイミングが絶妙である。図らずも日本は、最近の中国による防空識別圏設定のおかげで、東シナ海と南シナ海での「航行と飛行の自由」についてASEAN諸国と首脳レベルで認識を一致させることができそうだ。筆者が防空識別圏設定を「中国外交の大失敗」と呼ぶ理由はこれだ。韓国メディアですら中韓の孤立を憂いている。こちら
タイの首相は訪日できそうもないが、今回の首脳会議の外交的意味を減ずることはないだろう。タイといえば、バンコクでの騒乱も気になる。今回の一連の動きは、タイにもエジプト並みの不安定要因があるということか。
しかし、それ以上に気になるのが北朝鮮内政だ。一部には権力継承の「仕上げ」と見る向きもあるが、果たしてそうなのか。北朝鮮は「国家」ではなく「企業」と考える方が分かりやすい、というのが筆者の見立てだ。この特殊な人間集団は1940年代のビジネスモデルを今も維持する巨大なオーナー中小企業。最近三代目が引き継いだが、既に会社は倒産の危機に瀕している。創業者の先々代を見て育った先代とは異なり、弱冠30歳の三代目にワンマン経営力はないかもしれない。まず古手の番頭を切り、今度は身内の相談相手まで失脚させたが、古いビジネスモデルと核兵器だけで三代目が生き延びることは難しいだろう。
最後に、中国について一言。「ワシントンポストが日中関係を憂慮」、「外交官では制御できなくなっている」なる報道を見て驚愕した。どうやら筆者の昔の同僚(複数)が外務省の対中政策について実名、匿名で同紙にぺらぺらと喋っているらしい。こちら
具体的には、「日本外務省内では、中国語を学び『チャイナスクール』出身と呼ばれる外交官が、駐中国大使やアジア大洋州局長に起用されない状態が続いていると指摘。これも日本国内の反中感情が一因だとの元外務省職員の見方を伝えた。」という。個人的には「恥ずかしい」としか言いようがない。読者の皆さんはどうお思いだろうか。
日本の対中外交を特定の語学専門家の処遇(または冷遇)で対外的に説明すること自体、およそプロの外交官・元外交官にあるべき言動ではないと思うのだが・・・。
今週も重要なイベントが目白押しだが、これ以上コメントするスペースがない。今週はこのくらいにしておこう。
12月9日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
9日 皇太子妃雅子さま50歳の誕生日
9日 中国11月消費者物価指数(CPI)発表
9日 トルコ10月鉱工業生産指数発表
9日 メキシコ11月消費者物価指数(CPI)発表
9-10日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ブリュッセル)
9-10日 EU教育・若年・文化担当相理事会(文化・スポーツ)(ブリュッセル)
9-10日 国際原子力機関(IAEA)第54期通常総会(ウィーン)
9-11日 汎欧州知的財産サミット2013(パリ)
9-12日 欧州議会本会議、委員会会議(ストラスブール)
9-13日 EUタイ自由貿易協定(FTA)会合(ブリュッセル)
9-13日 持続可能な開発目標に関する第6回オープン作業部会(ニューヨーク)
9-13日 国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)、第48期作業部会IV(ウィーン)
9-13日 生物・毒素兵器禁止条約締約国会議(ジュネーブ)
9-15日 ギリシャ共和国海運・海事・エーゲ海大臣、来日
10日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
10日 欧州委員会、欧州e-skill会議(ブリュッセル)
10日 欧州投資銀行、第13回FEMIP会議:「地中海地域のエネルギー効率」(ブリュッセル)
10日 欧州経済社会委員会、本会議(IMF専務理事、出席)(ブリュッセル)
10日 国連難民高等弁務官の計画に対する任意拠出に関する総会アドホック委員会(ジュネーヴ)
10日 国連環境計画(UNEP)125期常任委員会(ナイロビ)
10日 第26回日本・カナダ次官級経済協議(東京)
10日 ボルカールール最終案採択に向け金融監督機関が会合開催(米国)
10日 中国11月経済指標(固定資産投資、社会消費品小売総額など)発表
10日 環太平洋連携協定(TPP)閣僚会合最終日(シンガポール)
10日 イギリス代表団、オマーン訪問
10日 マリ大統領、欧州議会にて演説(ストラスブール)
10日 アゼルバイジャン防衛大臣、グルジア訪問
10-11日 ロシア外相、イラン訪問
11日 国連人間居住計画、第51回常任委員会(ナイロビ)
11日 欧州委員会、5ヶ年行動計画:抗菌抵抗合同会議(ブリュッセル)
11日 欧州委員会、政府の賃金法案:決定、相互作用と効果(ブリュッセル)
11日 欧州評議会、常駐代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
11日 安全保障と防衛力に関する懇談会(首相官邸)
11-12日 欧州委員会、2014年から2020年のギリシャの回復に関する地域への投資を集中支援する(クレタ島とアテネ)
11-12日 スロバキア大統領ウクライナ訪問
11-12日 国際農業開発基金(IFAD)第110期理事会(ローマ)
11-13日 国連第24期独立監査諮問委員会(ニューヨーク)
12日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(エネルギー)(ブリュッセル)
12日 EU外相理事会(開発)(ブリュッセル)
12日 ロシア大統領による年次教書演説
12日 第56期麻薬委員会と第22期犯罪防止刑事司法委員会の合同会議(ウィーン)
12日 黒海経済協力機構(BSEC)外相会合(アルメニア・エレバン)
12日 タイのステープ元副首相、前政権時代のデモ隊強制排除で初公判(バンコク)
12日 インド10月工業生産指数発表
12日 米国11月小売売上高統計発表
12日 ブラジル10月月間小売り調査発表
12-13日 欧州委員会、「Destination Europe会議」(サンフランシスコ)
12-14日 環境展示会「エコプロダクツ2013」(東京ビッグサイト)
12-15日 トルコ外相、アルメニア訪問
12-15日 欧州議会代表団はイランを訪問
13日 CIS経済理事会(モスクワ)
13日 欧州環境理事会(ブリュッセル)
13日 欧州委員会、再編のための品質枠組みを提案する委員会(ブリュッセル)
13日 アフガニスタン大統領、インド訪問
13日 トルコ外相、ギリシャ訪問
13-15日 日・ASEAN特別首脳会議(東京)
13-15日 第6回世界政策会議(モナコ)
14-15日 ハラール産業に関する国際会議(パキスタン)
15日 チリ大統領選
15日 マリ国民議会選(第2回投票)
15日 トルクメニスタン議会選
15-18日 日印グローバル・パートナーシップ・サミット(ニューデリー)
【来週の予定】
16日 日銀短観(12月分)
16日 米NY連銀製造業景気指数発表
16日 EU外相理事会(開発)(ブリュッセル)
16日 欧州委員会、EURES:欧州の雇用サービスのネットワークを強化するための規制を提案する委員会(ブリュッセル)
16日か17日 ロシア1-11月鉱工業生産発表
16-17日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
16-17日 第3回日本・アラブ経済フォーラム(東京)
16-19日 欧州議会委員会(ブリュッセル)
16-20日 米国とEUの包括的貿易投資協定(TTIP)第3回交渉会合(ワシントン)
17日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
17日 イラン大統領、トルコ訪問
17日 チュニジア総選挙
17日 米国11月消費者物価指数(CPI)発表
17日 米国第3四半期経常収支統計発表
17日 ユーロスタット、11月消費者物価指数(CPI)発表
17-18日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
17-18日 欧州委員会、子供の権利に関する第8回欧州フォーラム(ブリュッセル)
17-20日 中国外相、イスラエル訪問
18日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
18日 欧州評議会、常駐代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
18日 欧州委員会、大気環境法制の見直しとヨーテボリ議定書の実施を通じて2020の目標を確認(ブリュッセル)
18日か19日 ロシア1-10月貿易統計発表
19日 ECB一般理事会(フランクフルト)
19日 ロシア大統領の年次記者会見
19-20日 欧州理事会(ブリュッセル)
19-20日 日銀政策委・金融政策決定会合
19日 ブラジル11月月間雇用調査発表
20日 マダガスカル大統領選挙第2回投票、議会選挙
20日 米国第3四半期GDP発表
20日 格安航空バニラ・エア就航
20日か23日 ロシア11月雇用統計発表
20日 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の開門期限
20-23日 大阪モーターショー(大阪市、23日まで)
21日 モーリタニア議会選
22日 福島県相馬市長選
22日 モルディブ大統領、インド訪問
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問