キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2013年9月17日(火)
[ 2013年外交・安保カレンダー ]
今週の目玉は22日に行われるドイツ連邦議会の選挙だろう。もう米国はシリアで何もしない、いや、できない。オバマ大統領が2週間前に「決定」した筈の「対シリア攻撃」だが、そもそもドイツでは誰もシリアに関心がないかのようだ。
15日のバイエルン州での選挙結果はメルケルにとって必ずしも芳しくなかった。メルケル率いるCSU(キリスト教民主同盟)の姉妹政党CSU(キリスト教社会同盟)は勝ったが、肝心の連立相手FDPが惨敗したからだ。それにしてもややこしい制度である。
ドイツの選挙制度は「小選挙区比例代表併用制」、要するに比例代表制を基本としつつ小選挙区制の要素を加味したものだ。定数は598、半数の299が小選挙区から、残り半数が比例代表により各政党の名簿から選ばれる。
有権者は2票持ち、各選挙区候補者と政党にそれぞれ投票する。各党が獲得する総議席数は政党に対する投票数に比例して決められるが、これとは独立して選挙区では最多得票を獲得した候補が当選する。
従って、場合によっては政党割り当て分を超える議席を得る政党も出るらしい。その際は「超過議席」が生じ、それに見合うよう「調整議席」が他党に追加配分されるので、定数が598を超える可能性もあるのだそうだ。何とややこしい制度だろう。
更に、比例代表で政党が議席を得るには得票の5%以上を獲得するか、または選挙区の当選者が3名以上いる必要があるらしい。この「5%条項」がメルケルの連立相手FDPの前に立ちはだかっているのだそうだ。
かなり勉強したつもりだが、ドイツの選挙制度は分かりにくい。一度多党化が進むと、なかなか安定多数ないし二大政党制に戻りにくいような気がする。メルケルが今回の選挙で勝てるか否かは、欧州政治にかなりインパクトがあるだろう。
ギリシャでは16日から20日まで公務員が性懲りもなく、またストライキを行うそうだ。これで、ドイツ内政が不安定化すれば、欧州でまともな国はなくなるかもしれない。その意味でも、22日の選挙結果は欧州の動向にかなりのインパクトを与えるだろう。
シリア問題の裏で今誰も語りたくないのがヨルダンの行方である。1978年のいわゆる「キャンプデービッド合意」体制はエジプトとヨルダンの対イスラエル平和条約とシリア・イスラエル間の事実上の非戦紳士協定により成り立っていた。
そのヨルダンの国王が15日から18日まで中国を訪問する。中国は中東で着々と力を付けていると思う。今週ワシントンに出張するので、このあたりについても政府や議会関係者に話を聞いてくるつもりだ。今週はこのくらいにしておこう。
9月16日 ルワンダ議会選
16日 東京休場(敬老の日)
16日 ソマリアに関する新政策会議(ブリュッセル)
16日 開城工業団地再開
16日 国連調査団がシリア化学兵器報告書提出(ニューヨーク)
16日 シエラレオネ大統領、訪米
16日 ジブチ大統領、NATO事務総長と会談(ブリュッセル)
16日 ユーロスタット、8月消費者物価指数(CPI)発表
16日 米NY連銀製造業景気指数発表、8月鉱工業生産発表
16日か17日 ロシア1-8月鉱工業生産発表
16-18日 欧州議会委員会(ブリュッセル)
16-18日 パキスタン首相、トルコ訪問
16-19日 ブラジル食品見本市「Alimentaria Brazil 2013」(サンパウロ)
16-20日 第57回国際原子力機関(IAEA)年次総会(ウィーン)
16-20日 IFAD理事会、第109セッション(ローマ)
16-20日 国連主催アフリカ地区麻薬取締機関長会議、第23セッション(アディスアベバ)
16-20日 国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)第59回作業部会II(仲裁及び調停)(ウィーン)
16-20日 松山政司外務副大臣、ベトナム及びカンボジアを訪問
16-22日 若林健太外務大臣政務官、ブラジル及びジャマイカを訪問
16-27日 第11回砂漠化防止条約(UNCCD)締約国会議(ナミビア)
16日-10月4日 第64回子供の権利委員会(ジュネーヴ)
17日~ 第68回国連総会(ニューヨーク)
17日 安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(首相官邸)
17日 総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(経産省)
17日 ギリシャ首相、EU本部を訪問
17日 米国8月消費者物価指数(CPI)発表
17-18日 米連邦公開市場委(FOMC)
17、19日 WTO加盟国通商政策レビュー:ベトナム(ジュネーヴ)
17-20日 米副大統領、パナマ、メキシコ訪問
18日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
18日 欧州評議会、常駐代表委員会(Coreper I、II)(ブリュッセル)
18日 欧州委員会、EUにおける電子調達や電子請求に関する会議(ブリュッセル)
18日 欧州委員会、ベンチマーク上の規則案を採用(ブリュッセル)
18-19日 欧州経済社会委員会全体会議(ブリュッセル)
18-20日 ベトナム大統領、デンマーク訪問
18-21日 環太平洋連携協定(TPP)交渉の首席交渉官会合(ワシントン)
19日 ECB一般理事会(フランクフルト)
19日 次期米駐日大使承認に関する公聴会(上院外交委)
19-20日 APEC財務相会合(バリ)
19-20日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(エネルギー)(非公式)(リトアニア)
19-21日 中国で中秋節休暇
19-22日 第12回国際投資フォーラム「ソチ−2013」(ロシア・ソチ)
20-24日 第10回中国・ASEAN博覧会(南寧)
20日 スワジランド議会選挙
20日 CIS経済理事会(モスクワ)
20日 APEC財務相会合(インドネシア・バリ)
20日 欧州評議会、常駐代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
20日 政労使円卓協議(仮称)が初会合(首相官邸)
20日か23日 ロシア1-7月貿易統計発表
21日 アサド政権、化学兵器の申告期限
22日 ドイツ議会選
22日 スイス国民投票
【来週の予定】
23日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
23日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
23日か24日 ロシア8月雇用統計発表
23-24日 日本ブラジル経済合同委員会(ブラジル・ベロオリゾンチ)
23-25日 安倍首相、カナダ訪問
23-26日 欧州議会委員会(ブリュッセル)
23-26日 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会の会合(ストックホルム)
23-27日 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)第2回交渉(ブリスベン)
23-27日 UNEP、常駐代表委員会の年間分科会、第1セッション(ナイロビ)
23日-10月10日 UNESCO理事会、第192セッション(パリ)
23日-10月23日 欧州委員会、単一市場の月(24ヶ国語でオンラインディベートの月)
24日 ギニア議会選
24-28日 インド首相、米大統領と会談
24日-10月2日 国連総会一般討論演説
25日 マダガスカル大統領選挙(第2回投票)、議会選挙
25日 欧州評議会、常駐代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
25日 欧州委員会、革新的な教育と学習を推進するためのイニシアチブ教育を開放(ブリュッセル)
25-28日 安倍首相、訪米
26日 核軍縮に関する国連総会のハイレベル会合(ニューヨーク)
26日 米国第2四半期GDP発表
26日 ブラジル8月月間雇用調査(失業率など)発表
26-27日 EU競争担当相理事会(ブリュッセル)
26-27日 欧州委員会、企業の研究開発と革新に関する欧州会議(セビーリャ)
26-29日 ボートショー(オークランド)
26-29日 台北国際発明展およびテクノマート見本市
27日 アルバ議会選
27日 インド首相、米大統領と会談(ホワイトハウス)
27日 国連原子力委員会、イラン当局者と会談(ウィーン)
28日 モルディブ大統領選
29日 オーストリア議会選
29日-10月2日 サウジ・カスタマー・サービス・ウイーク(リヤド)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問