キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2013年8月27日(火)
[ 2013年外交・安保カレンダー ]
中国山東省済南で開かれていた薄熙来・元重慶市共産党委書記の裁判が今週終わる。判決が何時下されるかは知らないが、有罪は間違いないという。本当なのか。これほど結論が前もって分かっている裁判など、本当の司法裁判ではないだろうに。
今回は、中国版ツイッターなどで裁判を公開したことが「異例」だとか、中国政府が「透明性の向上」に努めた結果だとか、薄熙来が取調べ中の供述を翻したのは「予想外」だとか、実に様々なことが言われた。これほど的外れのコメントはないだろう。
中国において、政治的に機微な裁判が公開されるか否かの理由が「透明性の向上」であるはずはない。勿論、理由は政治だ。必ずしも国民すべてが「薄熙来は悪い」と考えていないと政府が感じたからこそ、この裁判は公開されたのである。
文革を指揮した四人組の裁判を思い出して欲しい。毛沢東の夫人だった江青は連日長時間テレビ中継された裁判の法廷で、「政治裁判」だと批判・嘲笑し、何度も退廷処分を受けたそうだ。今でも江青と裁判長との激しいやりとりを思い出す。
当時は1980年頃、中国にテレビは少なかっただろうが、「透明性」という点では今回よりもはるかに高かった。今の若い人には1966-76年の文化大革命が中国共産党にどれ程の悪影響を与えたかについて、どうもピンと来ていないらしい。
こうした背景を知れば、薄熙来がなぜ駄目なのか、どうして排除されなければならなかったのか、が分かる筈なのに。やはり、昔のことは当時の「同時代人」が一番良く分かっているのか。筆者も年寄りのようなことを言い始めたようだ、反省しなければ。
ところで、今週は安倍首相の中東訪問がある。これとの関係で面白いコラムを読んだ。Walter Russell MeadがWall Street Journalに、ホワイトハウスは中東に関し5つの大きな見込み違いをしたと書いているのだ。
見誤ったのは、①イスラム主義集団の政治的成熟度と能力、②エジプトの政治情勢、③最も重要な2つの同盟国イスラエルとサウジアラビアとの関係、④中東のテロ活動の新たな力学、⑤シリアに介入しないことのコスト、の5つだという。
これだけ見誤れば、確かに大失敗といえるだろう。米国の中東政策がかくもお粗末だとは思いたくないが、だからだろうか、最近ホワイトハウスの中東チームがかなり入れ替わっているそうだ。
しかし、これは担当者を入れ替えれば済むという話ではないだろう。最大の問題は米国民の間に対中東政策に関するコンセンサスがないことだ。どこかの国の対中政策とそっくりではないか。今週はこのくらいにしておこう。
8月26日 ロンドン休場(サマー・バンクホリデー)
26-28日 アフガニスタン大統領、パキスタン訪問
26-30日 人権理事会、恣意的拘禁に関する作業部会、第67回セッション(ジュネーヴ)
26-30日 民間軍事や警備会社の活動の規制、監視、監督に関する国際的な規制の枠組み起草の可能性を検討するための、オープンエンド政府間作業グループ、第3セッション(ジュネーヴ)
26-31日 内閣府、今後の経済財政動向について集中点検会合開催
26日-9月1日 柔道世界選手権(ブラジル・リオデジャネイロ)
26日-9月1日 松山政司外務副大臣、ベルギー、オランダ、スイスを訪問
26日-9月9日 テニス 全米オープン
27日 安倍首相、ジブチ、カタール訪問
27日 赤十字国際委員会のトップ、朝鮮半島を訪問最終日
27日 米8月消費者信頼感指数発表
27-28日 ブラジル中銀、COPOM
27-28日 原子力発電所の資材・機材国産化促進に向けた展示・説明会(釜山)
27-29日 アジア諸国向け気候変動政策対話(東京)
27-29日 第二回拡大東南アジア諸国連合(ASEAN)国防相会議(ブルネイ)
27-30日 小野寺防衛相、ブルネイ訪問
28日 ユーロ圏7月マネーサプライM3・季調済
28日 ワシントン大行進から50周年
28日 ロバート・キング北朝鮮人権問題担当特使、訪日
28-29日 欧州議会委員会(ブリュッセル)
28-30日 持続可能な開発の資金調達の専門家政府間委員会、第1セッション(ニューヨーク)
28-29日 ブラジル中央銀行金融政策委、政策金利発表
28-30日 韓国首相、スリランカ訪問
29日 中国・ASEAN特別外相会議(北京)
29日 米国第2四半期GDP発表
29日 トルコ7月貿易統計発表
29-30日 EU一般問題理事会(非公式)(リトアニア)
29-30日 第7回汚職に対する国連条約締約国会議、アセット•リカバリーに関する無期限政府間作業部会(ウィーン)
30日 オバマ大統領、バルト三国の大統領と会合
30日 ユーロスタット、7月失業率、8月消費者物価指数発表
30日 米8月ミシガン大学消費者信頼感発表
30日 インド2013年度第1四半期GDP発表
30日 ブラジル第2四半期GDP発表
31日 米デュークFRB理事、辞任
31日 シンガポール首相、訪中最終日
9月1日 電力3社(北海道、東北、四国)家庭向け電気料金値上げ
1日 中国8月製造業PMI発表
1-2日 第8回太平洋経済会議(ウラジオストク)
1-9日 岸田文雄外務大臣、ブラジル、アルゼンチン訪問
【来週の予定】
2日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
2日 米国(レーバーデー)
2-4日 UNCTAD、戦略的枠組みとプログラム予算に関する作業部会、第65回セッション(ジュネーヴ)
2-13日 障害者の権利に関する委員会、第10セッション(ジュネーヴ)
2日-12月10日 韓国通常国会開会(会期100日)
3日 ブラジル7月鉱工業生産指数発表
3日 トルコ8月消費者物価指数(CPI)発表
3日 中国8月非製造業PMI発表
3日 米8月製造業PMI改定値、7月建設支出、8月ISM製造業景気指数発表
3-5日 ドイツ大統領、フランス訪問
3-6日 ユニセフ第二通常理事会(ニューヨーク)
4日 欧州評議会、常駐代表委員会(Coreper II)(ブリュッセル)
4日 欧州委員会、影の銀行システムにおける通信を採用し、規制案を提案
4日 女性の一村一品セミナー(インドネシア・バリ)
4日 オバマ大統領、北欧諸国の大統領ら会談(サンクトペテルブルク)
4日 ユーロスタット、第2四半期実質GDP成長率発表
4日 米国7月貿易統計、米地区連銀経済報告発表
4日か5日 ロシア8月消費者物価指数(CPI)発表
4-5日 日銀政策委・金融政策決定会合
4-6日 第5回ハノイ部品調達展示商談会(ハノイ)
4-6日 トルコ首相、ロシア訪問
4-9日 安倍首相、G20とIOC総会出席の為、ロシアとアルゼンチンを訪問
4-9日 若林健太外務大臣政務官、アルゼンチン訪問
5日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
5日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
5-6日 G20首脳会議(ロシア・サンクトペテルブルク)
5-6日の間、日露首脳会談(サンクトペテルブルク)
5-6日 ロシア、中国首脳会談(ニューヨーク)
6日 日銀、金融経済月報公表
6日 秋篠宮ご夫妻の長男、悠仁さま7歳の誕生日
6日 欧州評議会、常駐代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
6日 ブラジル8月IPCA発表
6日 米国8月雇用統計発表
6-7日 第125回国際オリンピック委員会総会(ブエノスアイレス)
7日 モルジブ大統領選
7日 オーストラリア議会選
7日 EU外相理事会(非公式)(リトアニア)
7日 第20回APEC中小企業相会合(バリ)
7-11日 韓国大統領、ベトナム訪問
8日 モスクワ市長選挙
8日 茨城県知事選投開票
8日 中国8月貿易統計発表
8-10日 EU農水相理事会(非公式)(リトアニア)
8-11日 英国労働組合会議(TUC)年次総会(ボーンマス)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問