キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2013年7月30日(火)
[ 2013年外交・安保カレンダー ]
日本では大きく報じられていないが、やはり欧米メディアの関心は中東和平プロセスの再開とイランの新大統領就任ではなかろうか。どちらもオバマ政権の「やる気」が問われているのだが、どうも最近のオバマの対中東政策はどれも感心しない。
先ずは、中東和平プロセスから。米国務省は中東和平交渉がイスラエルとパレスチナ双方の担当者が出席し7月29日夕(日本時間30日午前)からワシントンで行われると発表した。同プロセスは2010年秋から中断している。
中東専門家の反応はいま一つ。そりゃ、そうだろう、協議の内容は「交渉の具体的中身」でなく、あくまで「今後数カ月の交渉の進め方」についてだからだ。具体的内容ではなく、何をどのように話すかという「形式」に関する議論は物事の核心ではない。
誰もがそれを理解しながら、付き合っている。仲介役のケリー米国務長官がネタニヤフ首相とアッバス議長に電話をかけ、双方に交渉団派遣を要請したという。イスラエルはリブニ法相、パレスチナは和平交渉責任者のアリカットが出てくるそうだ。
これはもう限りなく歌舞伎に近い。今回は2日間の顔見世興行だが、ここでサプライズの進展があるとはだれも思っていない。ケリーの個人的執念か、それともオバマは本気でその政治的資産を費やすつもりがあるのか。恐らく前者だろう。
イランについては、ロウハニ新大統領の就任状承認式と就任宣誓式が8月3-4日、テヘランで開かれる。欧米でのロウハニに対する評価は割れており、核疑惑を巡りロウハニとの対話を唱える勢力と、更なる対イラン圧力を求める勢力が拮抗している。
ロウハニ新大統領の下でイランは変わるのか。核問題交渉で局面打開は可能か、それとも、国際的孤立を更に深めるのか。新大統領は経済制裁を緩和させ、疲弊したイラン経済を立て直すことが出来るのか。これもオバマの腹次第だろう。
一つだけ確かなことがある。ロウハニの登場は、ようやく従来の「強硬派の枢軸」、すなわちワシントンの反イラン強硬派、エルサレムのリクード等強硬派、アフマディネジャードとの間の「共存共栄」関係に終止符が打たれる可能性があるということだ。
ロウハニはこのトライアングルの奇妙な相互依存リンクを断ち切り、オバマ政権にクセ球を投げ始めるに違いない。ワシントンのいわゆる「ネオコン」の生き残りはこうした微笑外交的攻勢に耐えられるだろうか。お手並み拝見である。
個人的には30日に予定されるパキスタン大統領選に関心がある。関心といっても結果は見えている。野党第1党パキスタン人民党(PPP)が選挙をボイコットした以上、与党パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派=PML(N)候補の勝利は確実だ。問題はその次に起こることだろう。
7月29日 岸田文雄外務大臣が広島市訪問
29日 社会保障制度改革国民会議(首相官邸)
29日 安倍首相、宮城視察
29-9月13日 国連軍縮会議第三部(ジュネーヴ)
30日 パキスタン大統領選
30日? イスラエル、パレスチナ直接和平交渉の準備交渉(ワシントン)
30日 第16回日本・中米「対話と協力」フォーラム(外務省)
30日 イタリアのベルルスコーニ元首相、実質的に経営するメディア企業の脱税事件で最高裁に出廷
30日 原子力委員会の在り方見直しのための有識者会議(中央合同庁舎4号館)
30日 全日本柔道連盟臨時評議員会(講道館)
30日 自民党参院議員会長選(国会内)
30日 経済財政諮問会議(首相官邸)
30日 経済同友会提言「日本の将来ビジョン」発表
30日 米軍岩国基地(山口県岩国市)にオスプレイ陸揚げ
30日 総務省6月失業率発表
30日 厚生労働省6月有効求人倍率発表
30日 ユーロ圏7月消費者信頼感発表
30日 5月米S&P/ケース・シラー住宅価格指数、消費者信頼感指数発表
30-31日 米国FOMC
30-8月1日 日・オマーン投資協定交渉第2回会合(マスカット)
30-8月2日 日中韓自由貿易協定(FTA)交渉の第2回会合(上海)
31日 ジンバブエ大統領選、議会選
31日 兵庫県知事任期満了
31日 一般特恵関税制度(GSP)、アンデス貿易促進・麻薬撲滅法(ATPDEA)が失効
31日 財務省外国為替平衡操作の実施状況
31日 ユーロスタット、6月失業率、7月消費者物価指数発表
31日 南ア5月実質小売売上高 [前年比] 、貿易収支発表
31日 米7月シカゴ購買部協会景気指数、FOMC政策金利、ADP全国雇用者数発表
31日 トルコ6月貿易統計発表
8月1日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
1日 チューリッヒ休場(建国記念日)
1日 欧州中銀金融政策発表
1日 ECB政策金利・ドラギECB総裁、会見
1日 米7月ISM製造業景況指数、自動車販売台数発表
1日 中国製造業PMI(7月)
1日 ブラジル鉱工業生産指数発表
1-5日 台北コンピュータアプリケーション見本市
2日 経済財政諮問会議(首相官邸)
2日 日銀、7月マネタリーベース発表
2日 ユーロ圏6月生産者物価指数発表
2日 米7月雇用統計、製造業新規受注・PCEデフレータ・個人所得支出(6月)
2日 セントルイス連銀総裁、講演
2-7日 臨時国会召集見通し
3日 ロウハニ新イラン大統領就任(ハメネイ師による承認)
3日 中国7月非製造業PMI発表4日 ロウハニ新イラン大統領の就任宣誓式
【来週の予定】
5日 シドニー休場(バンクホリデー)、トロント休場(シビック・デー)
5日 ユーロ圏7月PMIサービス業、6月小売売上高発表
5日 米7月ISM非製造業景況指数発表
5日-9月6日 米国議会(上院・下院)夏季休会
6日 広島原爆死没者慰霊式・平和祈念式
6日 パキスタン大統領選
6日 米国6月貿易統計発表
7日 米6月消費者信用残高発表
7日 ブラジル7月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
7-8日 日銀政策委・金融政策決定会合
7-9日 チリ食品見本市「Food & Service 2013」(サンティアゴ)
8日 ギリシャ首相、オバマ大統領と会談(ワシントン)
8日 財務省6月経常収支発表
8日 財務省6月貿易収支発表
8日 内閣府7月景気ウォッチャー調査発表
8日 ECB月例報告発表
8日 中国7月貿易統計発表
8-10日 断食明け大祭(Eid Al Fitr)
8-11日 ゴルフ 全米プロ選手権
9日 長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典
9日 日銀、金融経済月報公表
9日 米6月卸売在庫発表
9日 中国7月消費者物価指数(CPI)、固定資産投資、社会小売品総額発表
10-18日 世界陸上(モスクワ)
11日 マリ大統領選(第2ラウンド)
11日 仙台市長選投開票
11日 アルゼンチン中間予備選挙
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問