キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2013年6月25日(火)
[ 2013年外交・安保カレンダー ]
今週は北京で中韓首脳会談が開かれる。日本では朴大統領が日本より中国を優先したなどと懸念する向きもあるが、果たしてどうだろうか。先々週のカリフォルニアでの米中首脳会談を見ても、中韓関係が急速に進展するとは思えない。
中韓関係は磐石ではない。中国は韓国の同盟国ではないし、相互信頼関係が深まっているわけでもない。両国に共通するのは、対日関係が悪く関係改善を急いでいないことぐらい。日本は中韓の違いをよく吟味し、対韓関係改善から始めるべきだ。
6月27日から米国とフィリピンがスカボロー礁近くで共同海軍演習を行う。現在同礁では中国が軍事施設を建設していると報じられた。6月7-8日には米原潜がフィリピンに寄港。今年に入り既に10隻の米主要艦船がフィリピンに寄港しているそうだ。
こうした政策をフィリピンが1990年代から維持していれば、現在のような南シナ海情勢はそもそもなかったはず。その意味でも、スービックから米海軍を追い出した1992年のフィリピンは21世紀の東アジアの運命を変えたともいえるだろう。
先週の最大のサプライズはスノーデン元CIA職員の香港出国、ロシア入国だ。弱冠29歳の男一人に米国政府全体が振り回されている様は、悲劇というより喜劇に近い。しかも、この喜劇の登場人物たちの置かれたそれぞれの状況は更に喜劇的だ。
まずは米国。ワシントンはスノーデンがNSA関係の機密情報をどの程度保持しているかすら正確に承知していないという。NSAといえば米国諜報機関の中でも最も機密性の高い機関なのに。これが事実なら本当に米国は大丈夫なのかと心配になる。
スノーデンの保持する情報が単なる事実関係情報だけなら良いが、NSAの情報収集システムそのものに関する最高機密の技術情報が漏洩した場合のダメージは計り知れない。当面は米国のお手並み拝見というところか。
今回香港は巧く立ち回った。米国にスノーデンを引き渡せば、中国との関係がギクシャクしかねないし、逆に中国側に引き渡せば、米国との関係は決定的に悪化する。幸いにも「時限爆弾」は香港領域内で炸裂しなかったということだ。
その点は中国も同様だ。万一、スノーデンが中国に亡命を求めてきたら、北京はどう対応するつもりだったのだろう。下手にスノーデンを保護すれば、米国との関係悪化は決定的となる。中国にとってスノーデンはそれほど価値のある男だろうか。
ロシアの動きも基本的には同じだろう。スノーデンの情報は欲しいが、米国との関係悪化は避けたい。されば、ロシアとしてもスノーデンの身柄拘束に消極的とならざるを得ないが、かといって、米国の言いなりになる義務もない。悩ましいところだ。
ここで注目されるのはエクアドルの動きだろう。スノーデンに対し政治亡命を認めるかどうかが注目される。ウィキリークスで有名なアサンジは現在ロンドンのエクアドル大使館に「亡命」しているが、いくら反米政権とはいえ、エクアドルはスノーデン一人のために米国と本気で喧嘩を始めるつもりなのだろうか。
今週は米国外交の威信そのものが問われている。
6月24日 第11回日露領事当局間協議(東京)
24日 EU外相理事会(貿易)(ルクセンブルク)
24日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
24日 セルビア議会議長、EU加盟交渉に先駆け連邦議会視察(ドイツ)
24日 社会保障審議会日本年金機構評価部会(全国町村議員会館)
24日 社会保障制度改革国民会議(首相官邸)
24日 政府税制調査会が安倍政権発足後初会合(首相官邸)
24日か25日 ロシア5月雇用統計発表
24-25日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
24-25日 アザロフ・ウクライナ首相、EU・ウクライナ協力会議出席(ブリュッセル)
24-25日 第147回FAO評議会
24、26日 WTO加盟国通商政策レビュー:ブラジル(ジュネーブ)
24-27日 第41回UNIDO工業開発委員会(ウィーン)
24-28日 持続可能なエネルギー週間2013(ヨーロッパ全域)
24日-7月3日 日EU経済連携協定(EPA)交渉の第2回会合(東京)
24日-7月7日 テニス ウィンブルドン選手権
25日 EU一般問題理事会(ルクセンブルク)
25日 欧州委員会、OECD欧州委員会によって提示された2013年に教育概要(ブリュッセル)
25日 ベトナム第13期第5回国会最終日
25日 特許行政年次報告書2013年版(経産省)
25日 総合資源エネルギー調査会電気料金審査専門委員会廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループ(経産省)
25日 シリア国際会議の準備会合(ジュネーブ)
26日 モンゴル大統領選
26日 通常国会閉幕
26日 東京電力、株主総会
26日 米国第1四半期GDP発表(確定値)
26日 欧州評議会、常駐代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
26日 欧州委員会、国家ローマの統合戦略に関する進捗報告書(ブリュッセル)
26日 欧州委員会、新たな長期投資のフレームワークを提案
26日 米第1四半期GDP
26-28日 第60回軍縮問題に関する諮問委員会(ジュネーヴ)
26-29日 台北国際食品見本市(FOOD TAIPEI 2013)
26日-7月3日 米大統領がアフリカ3カ国歴訪
27日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
27日 中韓首脳会談(北京)
27日 総合資源エネルギー調査会総合部会(経産省)
27日 ユーロ圏5月マネーサプライM3・季調済、6月消費者信頼感
27日 南ア5月生産者物価指数
27日 米5月個人所得
27日 パウエルFRB理事・アトランタ連銀総裁、講演
27-28日 欧州理事会(EU首脳会議)(ブリュッセル)
28日 南米南部共同市場(メルコスール)首脳会合(ウルグアイ・モンテビデオ)
28日 中米統合機構(SICA)首脳会合(コスタリカ・サンホセ)
28日 日本5月有効求人倍率・雇用統計・全国消費者物価・鉱工業生産
28日 米6月ミシガン大学消費者信頼感
28日 サンフランシスコ連銀総裁・クリーブランド連銀総裁・リッチモンド連銀総裁、講演
28日 トルコ5月貿易統計発表
28日 南ア5月主要経済指標発表
29-30日 地球温暖化防止とサンゴ礁保全に関する国際会議(沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学)
29日-7月2日 ASEAN地域フォーラム(ARF)関連会合(ブルネイ)
30日 ギニア国民議会選挙
30日 横須賀市長選
【来週の予定】
7月1日 日銀短観(6月)
1日 リトアニアがEU議長国に就任(12月末まで)
1日 クロアチアがEUに加盟
1日 ユーロスタット、5月失業率発表
1日 ベトナム改正個人所得税法、改正関税管理法施行
1-2日 ガス輸出国首脳会議(モスクワ)
1-4日 欧州議会本会議、委員会会議(ストラスブール)
1-5日 第7回法と実践における女性に対する差別問題作業部会(ニューヨーク)
1-26日 経済社会理事会、実質的な会期(ニューヨーク)
1日-9月14日 第3回アフガニスタン警察官訓練。日本の警察官が派遣、柔道訓練を行う
2日 ブラジル5月鉱工業生産指数発表
3日 マダガスカル大統領選、議会選
3日 米国5月貿易統計発表
3日 トルコ6月消費者物価指数発表
3-5日 日EU戦略的パートナーシップ協定交渉の第2回会合(ブリュッセル)
4日 静岡県知事任期満了
4日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
4-7日 JAPAN EXPO 2013(パリ近郊)
5日 米国6月雇用統計発表
5日 ブラジル6月拡大消費者物価指数発表
6-17日 第27回ユニバーシアード競技大会(ロシア・カザン)
7日 マリ大統領選
7日 バハ・カリフォルニア州知事選挙(メキシコ)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問