外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2013年6月18日(火)

外交・安保カレンダー(6月17-23日)

[ 2013年外交・安保カレンダー ]


先週のサプライズはイランの大統領選挙だった。投票日翌日に内務省が早々と最終結果を発表したこと自体、かなり驚いた。政府発表によれば、投票率は72.7%で、ロウハニ候補は得票率で50.7%の1,861万票余りを獲得する勝利だったという。

2位、3位は保守強硬派のテヘラン市長ガリバフ候補と核交渉担当のジャリーリ候補だが、得票率はそれぞれ16%と11%程度。従来は接戦のため公式発表が遅れたり、不正工作が噂されたりしたものだが、今回は「改革派・穏健派」の圧勝だった。

これだけ差がつくと、不正工作も効果がなかったのか。安保理経済制裁は相当効いてきたのか、国民は対欧米強硬策を続ける宗教界強硬派や軍部の失政と腐敗に不満を抱いていた。イラン国民は国際協調路線と生活レベル向上を求めたのだろう。

1979年以降、イランでは最高指導者に近い宗教勢力が常に政治的主導権を握ってきた。ところが、今回の選挙は今のイランに政治的変化を求める声が消えてはいなかったことを示している。これは今回筆者が読み切れなかった点でもある。

但し、楽観は禁物だ。穏健派・改革派の大統領というと、個人的には1997年に当選したハタミ大統領を思い出す。中東第二課長だった筆者は当時、穏健派大統領選出によりイランが徐々に変わっていくだろうと大いに期待したものだ。

しかし、その期待は二つの理由で裏切られた。一つはハタミ選出後保守強硬派が巻き返し、新大統領が新政策を打ち出せなかったため。もう一つは、米国がイランの穏健派・改革派を信用せず、新大統領との直接対話に踏み切らなかったためだ。

この個人的体験のせいか、今回穏健派・改革派の候補が勝利したからといって、イランを巡る情勢が大きく変わるとは思えない。特に、新大統領が継承するイランの内外情勢は1997年当時よりもはるかに複雑で困難だ。この点を忘れてはならない。

欧米がイランを見る目は厳しい。新大統領が国際社会から信頼を得るためには核、シリア問題を含む諸懸案につき大幅な譲歩が必要だろうが、イランの国内政治情勢はそれを許さないだろう。特に、核問題で新大統領に譲歩の余地は少ない。

また、アフマディネジャード前大統領の時代には、同大統領・軍部とハーメネイ最高指導者以下宗教勢力との間の確執が伝えられた。ロウハニ大統領の下ではこの関係が再び変化し、宗教(イスラム法学者)勢力が主導権を奪い返す可能性もある。

そうだとすれば、新大統領は真の政治経済改革や穏健な外交政策を本当に主導できるのか。再び裏切られる可能性があることだけは覚悟すべきだろう。こうした厳しい状況の中で唯一の救いはイランの若い有権者たちである。

彼らはパーレビ王制崩壊やホメイニ革命を知らない。彼らが知っているのは自由がなく、硬直化し、腐敗が進み、統治の正統性を失い始めた「イスラム共和制」だけである。こうした若い世代が本当に動けばイラン内政は再び変化し始めるだろう。


 
6月17日 南ア休場(青年の日)
17日 オバマ米大統領がロシアのプーチン大統領と会談(北アイルランド)
17日 安倍首相、ロシア大統領や英首相、米大統領と会談(北アイルランド)
17日 欧州委員会、雇用創出を後押しする公共雇用サービスのネットワークを提案する委員会(ブリュッセル)
17日 欧州委員会、電気通信の単一市場に関する情報公開セッション(ブリュッセル)
17日 米NY連銀製造業景気指数発表
17-18日 G8首脳会議(英国・ロックアーン)
17-18日 オバマ大統領、北アイルランド訪問
17日か18日 ロシア第1四半期経済活動別GDP統計発表
17-19日 持続可能な開発目標に関するオープン作業部会(ニューヨーク)
17-20日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
17-21日 UNCTAD 第5回 貿易開発委員会(ジュネーヴ)
17-21日 第20回拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約委員会(ジュネーヴ)
17-21日 子どもの権利委員会、会合前ワーキンググループ、第65回セッション(ジュネーヴ)
17-23日 パリ国際航空ショー
18日 EU環境相理事会(ルクセンブルク)
18日 CIS経済理事会(モスクワ)
18日 欧州委員会、ヨーロッパの大学で教育と学習における質の向上に関する報告(ブリュッセル)
18日 米国5月消費者物価指数(CPI)発表
18日か19日 ロシア1-5月鉱工業生産指数発表
18-19日 米大統領が訪独、メルケル首相と会談(ベルリン)
18-19日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
18-19日 中国による中東和平国際会議
18-19日 欧州連合外務・安全保障政策上級代表、エチオピアとの会談の為エジプト訪問(エジプト)
18-20日 第4回東アフリカ・石油・ガス・エネルギー会議(ナイロビ)
18-20日 台北国際フラットパネルディスプレー見本市
18-20日 第12回貧困体験者の欧州会議(ブリュッセル)
18-21日 コミュニックアジア2013(情報通信機器展示会)(シンガポール)
19日 エジプト議会選(第4ステージ)
19日 安倍首相、アイルランドを日本の首相として初めて訪問、ケリー首相と会談(ダブリン)
19日 国連Habitatの常任委員会、第49回会合(ナイロビ)
19日 ブリュッセル経済フォーラム(ブリュッセル)
19日 欧州委員会、新たな地域援助のガイドラインを採用(ブリュッセル)
19日 欧州委員会、気候変動とエネルギー政策のために枠組み2030に関する会議(ブリュッセル)
19日 安倍首相、経済政策について講演(ロンドン)
19日 ベトナム国家主席が訪中
19日 南ア、南アフリカ準備銀行、「四季報」(第1四半期)発表、5月消費者物価指数発表
19-20日 第5回中韓グリーン経済協力フォーラム(中国・青島)
20日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会、一般理事会(フランクフルト)
20日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ルクセンブルク)
20日 松山政司外務副大臣、ロシアを訪問。北方領土交渉を20日に再開する見通し。
20日 WTOサービス理事会(ジュネーブ)
20日 ブラジル5月月間雇用調査(失業率など)発表
20-21日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ルクセンブルク)
20日か21日 ロシア1-4月貿易統計発表
20-22日 サンクトペテルブルク国際経済フォーラム
20-23日 ゴルフ日本ツアー選手権
20-23日 台湾国際医療産業見本市(台北)
21日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ルクセンブルク)
21日 欧州経済社会委員会、"市民のための食糧"に関する会議(ダブリン)
21日 欧州委員会、意味相互運用性会議2013(ダブリン)
21日 ネパール制憲議会の再選挙
21日 ギリシャ新政権発足1年
21日 国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)第56会期、最終日(ウィーン)
21日 黒田日銀総裁が全国信用金庫大会であいさつ
21-22日 再生可能エネルギーとエネルギー効率に関する議会間会議(ダブリン)
23日 アルバニア議会選
23日 東京都議選投開票
23日 沖縄慰霊の日
23-25日 COSAC全体会議(ダブリン)
 
【来週の予定】
24-28日 日EU経済連携協定(EPA)の締結に向けた交渉会合
24日 EU外相理事会(貿易)(ルクセンブルク)
24日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
24日 セルビア議会議長、EU加盟交渉に先駆け連邦議会視察(ドイツ)
24日か25日 ロシア5月雇用統計発表
24-25日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
24-25日 アザロフ・ウクライナ首相、EU・ウクライナ協力会議出席(ブリュッセル)
24-25日 第147回FAO評議会
24、26日 WTO加盟国通商政策レビュー:ブラジル(ジュネーブ)
24-27日 第41回UNIDO工業開発委員会(ウィーン)
24-28日 持続可能なエネルギー週間2013(ヨーロッパ全域)
24日-7月3日 日EU経済連携協定(EPA)交渉の第2回会合(東京)
24-7月7日 テニス ウィンブルドン選手権
25日 EU一般問題理事会(ルクセンブルク)
25日 欧州委員会、OECD欧州委員会によって提示された2013年に教育概要
25日 ベトナム第13期第5回国会最終日
26日 モンゴル大統領選
26日 通常国会閉幕
26日 東京電力、株主総会
26日 米国第1四半期GDP発表(確定値)
26-28日 第60回軍縮問題に関する諮問委員会(ジュネーヴ)
26-28日 ブラジル大統領、訪日
26-29日 台北国際食品見本市(FOOD TAIPEI 2013)
26-7月3日 米大統領がアフリカ3カ国歴訪
27-28日 欧州理事会(EU首脳会議)(ブリュッセル)
28日 南米南部共同市場(メルコスール)首脳会合(ウルグアイ・モンテビデオ)
28日 中米統合機構(SICA)首脳会合(コスタリカ・サンホセ)
28日 トルコ5月貿易統計発表
28日 南ア5月主要経済指標発表
29-30日 地球温暖化防止とサンゴ礁保全に関する国際会議(沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学)
30日 ギニア国民議会選挙


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問