キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2012年12月24日(月)
[ 2012年外交・安保カレンダー ]
今週は安倍新内閣が始動する。新内閣とはいっても「デジャヴ」というか、2006年以来6年ぶりの返り咲き政権だ。総理自身も、また側近・周辺も、来年のことを考えると複雑な思いだろう。日本のために新内閣が国民の期待に応えるよう期待したい。
実は3年前の鳩山政権の時も同様の思いだった。現在の日本は2009年よりもはるかに危機的状況にある。3年前のような失敗は決して許されないという思いは私だけのものではないだろう。
日本の政局も方向性が見えたので、今回はインドを取り上げる。クリスマス・イヴだというのに、24日からプーチン大統領がインドを訪問する。毎年恒例の両国首脳同士の訪問だが、これはロシア正教のクリスマスが1月7日だから可能なのだろう。
インドとロシアは周辺国が考えるほど戦略的利益を常に共有している訳ではない。確かに、これまでロシアはインドにとって伝統的な武器供給国ではあったが、決して共通の価値と運命を共にするような同盟国同士ではなかった。
冷戦中からの米国によるパキスタン軍事支援や最近の中国の台頭は両国にとって大きな関心事項だろう。だが、これで両者が一層近付いたという気はしない。恐らくインドは引き続きロシアを適宜利用していくのだろう。
ロシアもそれは分かった上で、インドには武器とエネルギーを供給していくのだろう。その意味では両者の関係は経済的パートナーではあっても、同盟ではない。但し、今後少し状況が変わってくる可能性は否定できない。
そのきっかけは2014年末に予想される米軍のアフガニスタン撤退だ。米軍撤退によって生じるアフガニスタンの「力の真空」は以前も(ソ連軍撤退の際)見られた。しかし、今回の真空は以前よりも規模が大きい可能性がある。
特に、真空がアフガニスタンに止まらず、中央アジア全域に拡大すれば、ロシア、インドだけでなく、中国にとっても戦略的な脅威となり得る。ロシアとインドはこのことを百も承知のはずだ。2014年前後からはアフガニスタンと中央アジアが要注目である。
筆者注目のエジプトでは新憲法草案の第二回国民投票が終わった。どうやら「賛成」が過半数で新憲法は承認されそうだが、エジプトのゲームはこれで終わりではなく、いずれ不安定な次の「ラウンド」が始まるだろう。
12月24日 東京休場(天皇誕生日の振替休日)、香港、NY休場(クリスマスイブ)
24日 プーチン大統領、インド訪問
25日 木寺新中国大使、着任
25日 米国上院財政協議
25日 民主党、代表選
25日 自公代表、連立合意文書に署名予定
26日 特別国会召集
26日 安倍内閣組閣
26日 日銀議事録(11月19、20日分)
26日 原子力規制委員会の有識者会合(東北電力東通原発敷地内の断層が活断層か、結論をまとめる)
26日 トヨタ自動車世界生産計画発表
26-28日 特別国会
27日 パキスタンのベナジル・ブット元首相暗殺事件から5年
27日 経団連と自民党政調会長との政経懇談会
27日 米新規失業保険申請件数(12月22日までの週)
27日 米下院審議再開予定
28日 東京証券取引所などで大納会
28日 総務省、11月失業率、全国消費者物価指数発表
28日 厚生労働省、11月有効求人倍率発表
28日 財務省、外国為替平衡操作の実施状況発表
28日 米12月シカゴ購買部協会景気指数
28-29日 原子力規制委員会、関西電力大飯原子力発電所の断層を追加調査
29日 日・リヒテンシュタイン租税情報交換協定の発効
【来週の予定】
31日 東京休場(大晦日)、香港休場(ニューイヤーイブ)
31日 京都議定書第1約束期間終了(先進国による温室効果ガス削減)
2013年1月1日 アイルランドがEU議長国に(6月30日まで)
1日 英国が2013年のG8議長国に
1日 ロシアが2013年のG20議長国に
1日 モスクワ市が個人資産税と輸送税の税率引き上げ
1日 ロシア・韓国ビザなし渡航体制へ
1日 米国1月雇用統計発表
1日 台湾、最低賃金引き上げ実施、証券取引所得税の徴収再開、健康保険新制度の実施
2日 中国市場休場
3日 米国第113議会開会
4日 首相、年頭記者会見(首相官邸)
4日 米国2012年12月雇用統計発表
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問