外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2012年10月29日(月)

外交・安保カレンダー(10月29日-11月4日)

[ 2012年外交・安保カレンダー ]


先週は、温家宝国務院総理の「隠し資産」につきニューヨークタイムスが優れた記事を書いている。これ自体非常に興味深いのだが、中国共産党の党大会まではまだ少し時間があるので、今週は国際エネルギー革命の地政学的意味について考えたい。
最近シェールガスなど非在来型エネルギーが注目を集めている。環境問題を理由にこれに異を唱える声もあるが、この趨勢を変える力にはならないだろう。日本にもメタンハイドレートがある。恐らく、世界の「ガス」革命開始は時間の問題だろう。
日本の経済界は早くも将来の天然ガス利用拡大を見据えている。ガスに対応した国内エネルギー・インフラの整備・拡充が必要なのだそうだ。経済面の議論は結構だが、このガス革命が日本の安全保障に及ぼす影響については意外に議論が少ない。
この革命が成就すれば、日本はサウジアラビアに次ぐ世界第8位の可採天然ガス埋蔵量を持つ国となる。その推定埋蔵量は中国の約二倍、この事実は一体何を意味するのか。この点をより戦略的、地政学的見地から真剣に考える必要がある。
中国にもシェールガスがあり、2010年には研究が本格化した。米国はシェールガス開発技術を中国に供与し、対中投資を拡大しようとしている。米国主導による中国シェールガス・エネルギー供給の安定は結果的に地域の安定に資するだろうか。
逆の見方もあり得よう。中国シェールガスの多くは新疆ウイグル自治区にある。同地域の安定が損なわれれば、ただの絵に描いた餅だ。実際の採掘コストも未知数だろう。中国エネルギーの中東依存はそれほど大きく変わらないかもしれない。
更に、米国という強力なライバルが出現し、中東エネルギー産出国はどう対応するか、という問題もある。米国の湾岸駐留は不要になるとの極論も一部にあるが、米国には湾岸地域からのエネルギーの流れを特定国の慈悲に委ねる選択肢はない。
イスラエルの安全保障にコミットする以上、米国は非産油アラブ諸国も無視できない。シェールガスの生産増で余力が生まれた米国は、より多くの資源を中東に投入する可能性もあるだろう。この問題についてはいずれより深く検証してみたい。


10月29日 第181臨時国会召集(11月30日まで)
29日 野田佳彦首相、所信表明演説(衆議院のみ)
29日 日米印協議第3回会合(デリー)
29日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ルクセンブルグ)
29日 ベラルーシ・ロシア外相会談(ロシア)
29日 伊西首脳会談
29日 米9月個人所得、個人支出、PCEデフレーター発表
29-30日 日・ウルグアイ投資協定に関する予備協議(ウルグアイ東方共和国・モンテビデオ)
29-31日 第8回日ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)に関する合同委員会(東京)
29-31日 北方四島周辺水域における日本漁船の2013年の操業に関する政府間協議及び民間交渉(モスクワ)
29 -11月2日 米国務長官、バルカン諸国など歴訪
29-11月23日 第49回拷問禁止委員会(ジュネーブ)
30日 バヌアツ議会選
30日 日銀金融政策決定会合、経済・物価情勢の展望発表
30日 総務省、9月失業率発表
30日 厚生労働省、9月有効求人倍率発表
30日 ユーロ圏10月消費者信頼感・確報
30日 米8月S&P/ケース・シラー住宅価格指数、10月消費者信頼感指数
30-11月2日 第7回アフリカ経済会議(ルワンダ、キガリ)
31日 プーチン大統領、インド訪問(1日にシン首相と会談)
31日 インドネシア大統領、イギリス訪問
31日 日韓通貨協定は拡充部分打ち切り
31日 財務省、外国為替平衡操作の実施状況発表
31日 欧州統計局、9月失業率発表
31日 米10月ADP全国雇用者数、シカゴ購買部協会景気指数発表
31-11月2日 インドネシア大統領、訪英
31-11月2日 ポスト2015年開発目標に関するハイレベルパネルの第2回会合
11月1日 第1回日・メルコスール経済関係緊密化のための対話(ブラジリア)
1日 中国共産党第17期中央委第7回総会
1日 ユニバーサル造船、アイ・エイチ・アイマリンユナイテッド(IHIMU)合併
1日 CIS外相会合(トルクメニスタン・アシガバード)
1日 米10月ADP雇用者数、新規失業保険申請件数、10月ISM製造業景況指数
1日 中国10月製造業PMI
1-3日 ノルウェー王国首相、来日
1-29日 UNESCO、「すべての人にグローバル教育を」ハイレベルフォーラム(パリ)
2日 CIS首脳会議(アシガバード)
2日 日銀議事録(10月4、5日分)」
2日 米10月雇用統計、9月製造業受注指数
2日 米アップルが「iPad mini」を日本などで発売
2日 米国10月雇用統計発表
3日 中国10月非製造業PMI
3-16日 チャールズ皇太子とカミラ夫人、オールトラリアとNZ訪問
4-5日 G20財務相・中央銀行総裁会議(メキシコシティー)
4日 米国、冬時間に移行


【来週の予定】
5日 津波防災の日
5-6日 第9回アジア欧州会合(ASEM)首脳会合(ビエンチャン)
5-8日 第5回災害リスクの軽減に関するアジア閣僚会議(AMCDRR)(インドネシア)
5-8日 国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)事務局長、来日
6日 米国大統領選挙投票日・連邦議会上下両院議員選挙
6日 パラオ大統領選、議会選
6日 プエルトリコ国民投票、議会選
6日 欧州連合理事会、結束政策に関する閣僚非公式会議(キプロス)
6日 ユーロ圏9月生産者物価指数
6-7日 WTO・知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)理事会(ジュネーブ)
6-8日 世界遺産条約採択40周年記念最終会合(京都)
6-10日2012中国国際工業博覧会(上海)
7日 欧州委員会、欧州景気予測発表(ブリュッセル)
7日 ユーロ圏9月小売売上高
7日 米9月消費者信用残高
7-8日 アジア経済共同体フォーラム(仁川)
8日 中国共産党第18回党大会(北京)
8日 欧州中央銀行(ECB)理事会(フランクフルト)
8日 富山県知事選
8日 欧州中銀金融政策発表
8日 米国9月貿易統計発表
9日 タークス・カイコス諸島、大統領選
9日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
9日 OPEC、月間石油市場報告発表
9日 米10月輸入物価指数
9日 中国10月CPI、固定資産投資、社会消費品小売総額など発表
9-10日 G20財務相・中央銀行総裁会議(メキシコシティ)
10日 中国10月貿易統計発表
10日 アイルランド、国民投票
10-12日 雪氷に関する国際会議(中国)
11日 岡山県知事選
11日 スロベニア大統領選
11日 サンマリノ議会選
11-15日 インド首相、来日


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問