キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2012年7月23日(月)
[ 2012年外交・安保カレンダー ]
今週の日本はオスプレイ12機の岩国基地到着で始まった。「最近のマスコミの報道はジャーナリストとしての冷静さをちょっと失っているのではないか」とは、ある見識高いマスコミ人から本日内々聞いた話。こういう人がいる限り、日本のマスコミにも未来はあると思った。
日本ではオスプレイ騒動だが、大半のイスラム圏では23日から一ヶ月のラマダン(断食)月が始まる。早速イラクでは18都市のシーア派地区で死傷者合計360人以上といわれる連続テロが起きた。アル・カーイダ系の犯行らしいが、今は誰もイラクなどに関心はない。
中東地域での今の関心はシリアばかり。されば、今週はイラクの見通しを書いておこうと思う。2003-4年、筆者の現役時代最後の在外任地がイラクだった。当時はあれほど大騒ぎしたのに、今やイラク内政がどうなっているか知る人は殆どいない。
昨年末の米軍撤退以降、マーリキー首相暴走への不満が一層高まった。4月26日の「新エルビル合意」により、サドル派とクルド・スンニー系を中心に同首相不信任決議を求める動きが表面化した。しかし、現在にいたるまで議会で同決議は採択されていない。
最大の理由は、クルド・スンニー系がマーリキー首相の交代自体を求めているのに対し、サドル派は当面首相交代よりも、自派の内政上の影響力拡大を優先するなど、各勢力の立場が微妙に異なっているためだ。やはりイラクは全く変わっていないなぁ。
不信任の危機に直面したマーリキー首相は現在巻き返しに努めているが、反マーリキー勢力も決して一枚岩ではない。このような状況が続く限り、イラク内政の混乱は一層長期化し、重要な政治決定が引き続き先送りされる可能性が高いということだ。
シリア情勢はこのイラク内政に微妙な影響を与えるだろう。先週末から、シリア政府が化学兵器を使用するとの報道が絶妙のタイミングで流れている。個々の報道に一喜一憂することなく、今後もこの種の情報戦が続くと開き直った方が良いだろう。
気になるのはシリア外務省報道官が「外国の軍事攻撃を受けない限り、化学兵器は使用しない」と明言したことだ。さすがシリア、化学兵器が弱者の核兵器であることを知り抜いている。あの人たちは「使うべき時には必ず使う」ので、本当に要注意だ。
さて中国で23日は浙江省温州で起きた高速鉄道事故の一周年。予想通り、中国官製メディアは何事もなかったかのように沈黙を守る。やがて鉄道関係公共事業が再開され事件は風化していく。これで済むのだから、やはり中国は大した国だと思う。
7月23日 政府の東京電力福島原子力発電所事故調査・検証委員会、最終報告書公表
23日 オスプレイ12機を積んだ民間輸送船の岩国基地到着
23日 欧州連合理事会、外相理事会(ブリュッセル)
23日 国連事務総長、モンテネグロ訪問(初のバルカン半島周遊中)
23日 モンティ伊首相がロシア訪問、プーチン露大統領と会談
23日 IMF代表、ジャマイカ訪問
23日 経団連・関経連共催の「エネルギー政策のシンポジウム」
23-24日 APEC観光相会合(ハバロフスク)
23-26日 ナミビア共和国外務大臣、来日
24日 日本庭園「福島庭園」建設記念式典(ロンドン)
24-25日 パキスタンのビジネス代表団、ウクライナ訪問
24-26日 第7回日ASEANテロ対策対話(フィリピン・セブ)
25日 関西電力大飯原発4号機がフル稼働
25日 オバマ大統領全米都市連盟にて演説
25-26日 WTO一般理事会(ジュネーブ)
26日 欧州理事会、経済・財務相理事会(ブリュッセル)
26日 第1回日ウクライナ原発事故後協力合同委員会(東京)
27日 鹿児島県知事選
27日 日本全国消費者物価指数(6月)
27日 米第2四半期GDP速報値
27日 土用の丑の日
27日-8月12日 ロンドンオリンピック
28日 ロムニー氏、イスラエル訪問
28-8月20日 全国高校総体
【来週の予定】
30日 仙台空港国際線が震災前水準に回復
30-8月3日 OHCHR、自己決定に関して人々の権利行使を妨げる手段としての傭兵の使用に関する作業部会(ウィーン)
30-9月14日 第三軍縮会議(ウィーン)
31日 東電に政府から公的資金1兆円の資本注入
31日 ジョージア大統領選
31日 ドイツ6月雇用統計発表
31日 イスラエル6月主要経済指標、労働力調査発表
31日 シンガポール第2四半期雇用統計発表
8月1日 東電へ金融機関から3700億円の融資
1日 自販連、新車販売台数(7月)発表
1日 ユーロスタット、6月失業率発表
1日 インドネシア7月CPI、6月貿易統計発表
1日 タイ7月CPI発表
1日 ブラジル6月鉱工業生産指数発表
1日 ペルー7月CPI発表
2日 欧州中央銀行(ECB)理事会(独フランクフルト)
2日 オーストラリア6月小売り統計発表、6月貿易統計発表
2日 スーダン紛争解決期限
2-5日 フードショー(Food Show)(オークランド)
3日 森本敏防衛相、訪米
3日 APEC中小企業相会合、交通相会合(サンクトペテルブルク)
5日 オスプレイ配備反対の県民大会(宜野湾市)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問