キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2012年2月13日(月)
[ 2012年外交・安保カレンダー ]
今週の焦点は何といっても習近平国家副主席の訪米だろう。
中国要人にとって訪米は鬼門であると同時に、政治的飛躍のチャンスでもある。ところが、先週2月8日、事もあろうに、この微妙なタイミングで、重慶市の王立軍副市長が「休暇式治療」という聞き慣れない理由で「休養」に入ったと報じられた。
その直後から王立軍の「失脚」がまことしやかに語られ始め、同副市長が成都の米国総領事館に政治亡命を求めたとか、同総領事館に一泊したとか、実に様々な噂や報道が流れた。勿論事件の真相は今も闇の中だ。
唯一確かなことは、米国が習近平訪米前にトラブルを回避したことだろう。米国務省と中国外交部の説明は、「王立軍は夜総領事館を訪問したが、翌日自ら立ち去っている。これ以上のコメントは行わない。」という重要なところで妙に一致している。
これは明らかに米中の出来レースだ。習近平は訪米前に顔が潰れずに済み、米国は不要な摩擦を回避して習近平に貸しを作った。この借りを習近平が返すかどうかは問題ではない。米中が現在も出来レースのできる関係にあることが重要なのである。
中国の内政は今も荒々しく、雄雄しく、小気味良いほど古典的だ。それにしても、王立軍の米総領事館訪問という政治判断はどう評価すれば良いのだろう。薄熙来が頼りになるなら米国には行かないはず。恐らく薄熙来に切られたに違いない。
一方、薄熙来から見れば、これは単なる裏切りではなく、昔のボスの顔に泥を塗る「受け入れ難い」仕打ちだろう。これで薄熙来も終わりなのか。それとも、不死鳥のように甦るのか。中国人でなくとも興味津々というところだ。
今週の中東も相変わらずで、特に、シリアの状況が徐々に悪化している。このボディブローは時間が経てば経つほど効いてくる。何度も申し上げるが、シリアのアサド政権の崩壊は中東三大地震プレートの一つであるパレスチナ・プレートを直撃する。
そうなれば、結果はシリアの混乱に限定されない。くどいようだが、出来ればシリアは政変まで追い詰めない方が良い。さもないと結果は破滅的なものとなるかもしれない。昨年10月にワシントンで友人たちにこう説明し回ったのだが、反応は鈍かった。
「君の言うことは正しいかもしれない。でももう手遅れだ(But, it's too late)」と最も親しい友人がそっと言ってくれた。今は毎週のようにシリア情勢がこれ以上悪化しないように祈っている。しかし、恐らく友人は正しいだろう。シリアはもう手遅れである。
2月13日 パキスタン・ギラニ首相が法廷侮辱罪で起訴
13日 岩手県平泉町、世界遺産認定書授与式
13日 イタリア、フランス、ドイツ国債入札
13日 ギリシャ債務交換の最終案提示期限
13日 オバマ米大統領、2013年会計年度の予算教書を提出
13日 第8回日本・チュニジア合同委員会(東京)
13日 11年10-12月期国内総生産(GDP)速報値(内閣府)
13日 泊原発廃炉訴訟の第1回口頭弁論(札幌地裁)
13-14日 日銀金融政策決定会合
13-16日 欧州議会、委員会会合、本会議
14日 エジプト・シューラ評議会選挙(第2ステージ)
14日 EU・中国首脳会議開催(中国・北京)
ファン・ロンパイEU大統領、バローゾ欧州委員会委員長、温家宝・中国首相らが出席
14日 習近平・中国国家副主席、訪米開始
オバマ米大統領、バイデン副大統領らと会談予定。
14日 EU運輸・通信・エネルギー相理事会
14日 日・ミャンマー投資協定に関する予備協議(ミャンマー・ネーピードー)
14-15日 WTO一般理事会(スイス・ジュネーブ)
14-17日 日豪経済連携協定(EPA)交渉 第14回会合(東京)
15日 スペイン、ポルトガル国債入札
15日 仏実質GDP・速報(第4四半期)、独GDP・速報(第4四半期)、ユーロ圏GDP・速報(第4四半期)
15日 ユーロ圏財務相会合
15日 東京都が招致を目指す20年夏季オリンピック委員会(IOC)への提出期限
16日 金正日総書記の生誕70年
16日 フランス国債入札
17日 ギリシャ国債償還(13億ユーロ)
17日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題相理事会
17日 米消費者物価指数(1月)発表、米商務省、11年第4四半期GDP発表(2次速報)
17日 資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐり、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪に問われた民主党元代表小沢被告の公判で、石川知裕衆院議員ら元秘書3人の検察官調書の採否決定(東京地裁)
19日 前橋市長選
19日? ギリシャ総選挙?(延期の可能性あり。4月説も)
19日 競馬フェブラリーステークス(東京競馬場)
【来週の予定】
20日 国連世界社会正義の日
20日 普天間飛行場移設環境影響評価への沖縄県知事の意見書(飛行場分)提出期限
20日 関西電力高浜原発3号機が定期検査入り
21日 国連国際母語デー
21日 イエメン大統領選
21日 日豪TPP事前協議
21-22日 日米TPP実務者協議
21-23日 アフリカ・エネルギー会議2012(ヨハネスブルク)
22日 エジプトのシューラ評議会選挙(第2回)決選投票
22日 アリゾナ州メサで共和党候補者討論会
22日 ニュージーランドのクライストチャーチ地震から1年
23日 皇太子さま52歳の誕生日
23日 欧州中央銀行(ECB)理事会(独フランクフルト)
23日 日ニュージーランドTPP事前協議
24日 社民党大会
23日 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と衝突した漁船「清徳丸」の父子が死亡した事故で、業務上過失致死などの罪に問われ、一審で無罪とされた元あたご当直士官2人の控訴審第1回公判(東京高裁)
25日 衆院選挙区画定審議会による首相への「1票の格差」是正の勧告期限
25-26日 主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議(メキシコ)
26日 セネガル大統領選
26日 東京マラソン
26日 アカデミー賞発表(米ロサンゼルス)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問