キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2011年11月21日(月)
[ 2011年外交・安保カレンダー ]
今週も中東から始めたい。エジプトでは20日夜、タハリール広場で1万人以上の群衆が軍最高評議会に対する抗議行動を始めた。当然軍・治安部隊はデモ隊を強制排除し、10人が死亡したという。遂に、来るものが来たということだ。
報道によれば、最高評議会は軍予算を(議会承認の対象とならない)聖域とするよう提案したらしい。エジプト人が怒るのも当然だろうが、こうなることは、今年の2月にムバラクが退陣する時点からほぼ予想されていたことだ。驚きにも値しない。
本コラムの2月14日号で筆者は、「先週エジプトで起きたことは、本質的に「民衆による民主革命」には至らず、民衆騒乱を引き金に軍主流がムバラク一派を追放した「宮廷クーデター」に止まると思っている。」と書いた。詳しくはこちらを読んでほしい。
改めて問う。「フェースブック民主革命」、「アラブの春」などと言ったのは一体どなたか。このままでは国民議会選挙も延期され、大統領選挙など夢また夢だろう。あまり偉そうなことは言いたくないが、これがエジプト革命の本質なのかもしれない。
シリアも別の意味で恐ろしい。あのハーフィズ(前大統領)の子バシャールが「圧力には屈しない、シリアのために死ぬ用意がある」と述べたことに戦慄すら感じる。あのロンドンで眼科医を目指していた若き青年がこんな言葉を吐くようになるのだろうか。
アラブ連盟の制裁が現実味を帯びてきたことも気になるが、もっと気になるのはトルコの動きである。トルコは本気で「中東政治の主要プレーヤー」を再び目指し始めたのかもしれないが、それが成功する可能性は決して高くない。
何度も申し上げるが、シリア・バアス党政権の崩壊がもたらすインパクトはエジプトやリビアの比ではない。現状は極めて危険な方向に動きつつある。そのことは米国も、アラブ諸国も、トルコも、そしてイスラエルすらも良く理解している筈なのに。
スペインで新政権が誕生したが、これでEUやユーロが安定する保証はない。保守系の政権だそうだが、万一スペインの財政支出を絞り始めたらどうなるのだろう。EUの停滞がいわゆるバランスシート不況であれば、これは逆効果である。要注意だ。
19日の東アジアサミットでの米中の鍔迫り合いは見応えがあったが、問題は今後の中国の出方である。既に中国側の反応がトーンダウンしつつあるとの指摘もあるが、これは飽くまでも戦術的な動きだろう。中国の次の一手が気になるところだ。
20日 マリキ・イラク首相訪日
21日 タイ11年第3四半期GDP発表
21日 マーシャル諸島議会選
21日 2011年度第3次補正予算成立?
21日 欧州委員会、年次研究大会2011(Annual research conference 2011)(ベルギー・ブリュッセル)
21-24日 イラク農業・食品関連国際展示会「Iraq Agrofood」(エルビル)
21-25日 日・カリブ共同体(カリコム)官民合同経済ミッション、トリニダード・トバゴ及びジャマイカへ派遣
21-25日 アフリカ連合(AU)インフラ閣僚会議(ルワンダ・キガリ)
22日 米商務省、11年第3四半期GDP発表(改定値)
22日 日イラク首脳会談(東京)
22-23日 玄葉外相、訪中
22-24日 ギュル・トルコ大統領、訪英
23日 EU閣僚理事会の常駐代表委員会
23-24日 ASEAN+3財務相・中央銀行総裁会議
24日 ガンビア共和国大統領選
24日 欧州委員会、第3回産業競争力会議(3rd high-level conference on industrial competitiveness)
25日 ロシア・ベラルーシ連合国家最高国家評議会
25日 モロッコ議会選
25日 米NASA(航空宇宙局)火星探査車「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」打上
25日 アッバス・バレスチナ自治政府大統領とマシャール・ハマス指導者の関係改善のための対話(エジプト・カイロ)
25日 全国証券大会(白川・日銀総裁があいさつ)
25日 EU閣僚理事会の常駐代表委員会
26日 ニュージーランド議会選、選挙制度に関する国民投票
26日または27日 イスラム暦の新年(予定)
27日 大阪市長選
27-29日 再生可能エネルギー世界会議&エキスポアジア(クアラルンプール)
【来週の予定】
28日 コンゴ民主共和国大統領選、議会選
28日 ガイアナ共和国議会選
28日 エジプト下院選?(第1ラウンド)
28日 セントルシア議会選
28日 日韓、LNG共同調達に関する協議(東京)
28-29日 国際地熱会議「Congreso ACHEGEO 2011」(チリ・サンティアゴ)
28・30日 WTO加盟国通商政策レビュー:タイ(スイス・ジュネーブ)
28-12月9日 国連気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17、南ア・ダーバン)
29日 ユーロ圏財務相会合
29-30日 ブラジル銀行金融政策決定理事会
29日-12月1日 世界開発援助総会(釜山)
29日-12月3日 マレーシア与党統一マレー国民組織(UMNO)年次総会
30日 EU財務相理事会
30日 アゼルバイジャン地方選挙
30日 タイ中央銀行金融政策決定会合
30日 インド11年度第2四半期(7〜9月)GDP発表
30日 カナダ統計局、11年第3四半期GDP発表
11月末 美浜原発2号機、高浜原発2号機(ともに福井県)がストレステスト実施?
12月3日 ギリシャ国民投票
3-4日 日本共産党第4回中央委員会総会
4日 ロシア下院選
4日 クロアチア議会選
4日 スロベニア議会選
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問