キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2011年11月3日(木)
[ 2011年DC道場 ]
ウッドロー・ウィルソンという第28代目の合衆国大統領は、歴代大統領の中では唯一博士号を持つ人物で、プリンストン大学の学長も務めていたアカデミックの世界の大人物である。政治の世界でも、第一次世界大戦時の大統領としてリーダーシップを発揮し、戦後は国際連盟の創設を提唱し、またノーベル平和賞を受賞した人物としてつとに著名である。彼の功績を称えて創設された、ウッドロー・ウィルソン国際センターというシンクタンクがある。ここでは、年間500回にも及ぶセミナーやシンポジウムが開かれるという。私が宿としている建物から歩いて10分弱程度の場所に、「ロナルド・レーガン」ビルと名付けられた巨大なビルがあり、同センターはその一角を占めている。米国では公共施設やビルディング等の名前に、過去の大統領やその他の著名人の名を冠することが多く、そこかしこで著名人の名を目にする。因みに宿の隣にあるFBI本部ビルは、「J・エドガー・フーヴァー」ビルと云い、そのものずばりのネーミングである。
同センターで本日、「Security and Development on the Korean Peninsula(朝鮮半島における安全保障と発展)」と題して、朝鮮半島に関するシンポジウムが開催された。第一部が安全保障に関するもので、昼食をはさんで後の第二部は経済発展に関するものであった。昼食時にはGary Samore大統領特別補佐官を迎えてスピーチをして頂く等、大変豪勢な催しであった。こうしたところを見ても、ワシントンDCにおけるシンクタンクと実務家の間の密接な関係が伺える。内容の詳細については、他日サイト上で動画が掲載されるようなので、ご興味のある方はhttp://www.wilsoncenter.org/をご参照頂きたい。
我がDC道場の同志である道下さんは、何と本日のシンポジウムにおいて、第一部の安全保障に関する4人のスピーカーのうちの一人として、大役を務められたのである。米国人や韓国人の一線級の学者や実務家が並ぶ中、唯一の日本人として名前を連ねているのは、日本人として単純に嬉しい(因みに他の3人は、Choi Jinwook: Korean Institute for National Unification, Raymond M. Colston: Office of the Director of National Intelligence, Han Yong-sup: Korean National Defense Universityであった)。以前にも書いたが、朝鮮半島問題に関する研究者としては国際的に名が通った方であり、ワシントンDCでも著名なシンクタンクにおけるスピーチも、英語でさらっとこなしてしまう方である。因みに韓国語もペラペラのトライリンガルで、韓国系アメリカ人を交えて話していると、いつの間にか韓国語で会話していたりする。道下さんは本日のシンポジウムを終えられると、私より一足先に帰国される。このような筋金入りの優秀な研究者である道下さんに、地下鉄の乗り降りから飯屋の選び方といったワシントンDC生活のイロハの指導に始まり、綺羅星の如きキャリアを持つご学友の方々とのインタビューをセッティングして頂く等(官僚で結構なポジションにある人、政治任用で政府の枢要な地位に就いた経験者等)、筆舌に尽くせぬほどお世話になった。道下さんがいなければ、こうもスムーズに活動ができなかったであろうことは間違いない。この場を借りて御礼を申し上げたい。頼りにしていた師匠の帰国は非常に寂しいが、残りの日程を少しでも充実させることでご恩返しとしたい。
柄山直樹 PAC道場第2期生