外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2011年10月26日(水)

DC道場フェロー・レポート(下院編・10月25日)

[ 2011年DC道場 ]


 本日は、昼食を2回取るはめとなった(朝食も夕食もインタビューを兼ねて行ったのでしっかりと会食し、今日一日で相当のカロリー摂取である)。何故2回かというと、1回目はThe Congressional study group on Japan (以下CSGJ:議員による日本研究グループ)に出席し、2回目は事務所スタッフの誕生パーティーに参加したからである。CSGJの会合の内容はオフレコとのことなので明かせないが、非常に興味深い団体なのでその概要をお伝えしたい。   CSGJとは、The United States Association of Former Members of Congress(以下FMC:議員経験者協会)の中にある研究会である。FMCというのは、議員経験者、つまり既に引退した、若しくは落選中の元国会議員の集まりであり、超党派で形成されていて出身も上院・下院を問わない。現在の登録者数は592名となっている。1970年に超党派且つ非営利の団体として、教育や調査研究を行うことを目的に設立された。何の教育・調査研究かというと、「公共の福祉を促進し、国内および世界において民主主義の強化普及に努める」ための活動である。異なる価値観を持つ国々からすれば大きなお世話かと思うが、民主主義を掲げる国々が米国議会との接点を持つためには結構便利な存在である。Life After Congressという、引退後(落選後)の生活についてのセミナーもやっているそうだ。この辺りは、日本の政界でも参考にしてみても良いかもしれないと思われる。日本では大野伴睦の格言(?)にもあるように、「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちればただの人」と、落選した国会議員は物心ともに厳しい状況に置かれる人が多い。このFMCは参加メンバーも結構おり、連邦議会に対して少なからぬ影響力を持っていると言われる。   FMCの活動は、米国内向けプログラムと国際向けプログラムに分けられる。 US Programs: (1) The Common Ground Project:超党派的な議員の交流促進、有権者との対話促進、議会・議員に対する偏見を払拭し、信頼を取り戻す (2) Congress to Campus:学生への教育・啓蒙・広報 (3) Civics Connection:市民への教育・啓蒙・広報。 (4) Publications:出版 International Programs: (1) Congressional Study Group:主に現職議員(Current members of Congress)で構成される。CSGJは非公式且つ超党派のフォーラム。日米が直面する主な課題に関する政策の研究を行い、米国の議員達に日本側のカウンターパートと話し合う機会を設ける。日本の政府高官との定期的な会合も設ける。日本の大使館員や民間企業の駐在員等も、会合に参加している。共同議長は4名で、上院からはJim Webb (民主党・バージニア州選出)、Lisa Murkowski (共和党・アラスカ州選出)、下院からはJim McDermott (民主党・ワシントン州7区選出)、Shelley Capito (共和党・ウェストバージニア州2区選出)という布陣である。同様の研究会は、他にドイツとトルコに関するものがある(それ以外には無い)。 (2) Democracy Building and Legislative Strengthening:代議制民主主義の推進活動。 (3) Trilateral Energy Roundtable:米国、ドイツ、インドによる三国間エネルギー会議。 (4) Congress to Campus International:学生向け活動の海外版。 (5) Network of Overseas Former Legislators:海外の元議員による団体との交流。現在、40以上の団体と交流をしているそうである。(日本に同様のものがあるかどうかは寡聞にして知らないが、特定の課題に関する議員連盟に元職が顧問等で入っていることはよくある。因みに日本でいうところの議員連盟のように、同じ政策課題のために形成された議員のグループはGangと呼ばれることがあるらしい。)  FMCは資金的には独立した存在で、議会からはビタ一文予算をもらっていない。その運営は、個人及び企業からの寄付金で賄われている。「代議制民主主義の啓蒙に努める」という崇高な目的のために寄付が行われるというのは、「自由の国・アメリカ」らしい。と、ここまで書いてきてふと気づいたが、FMCの住所はKストリートである。ご存知の方も多いと思うが、Kストリートは「石を投げればロビイストに当たる」と言われる街である。国民の税金が投入されていない故に、活動について公にする必要もやや薄いと思われるこの団体は、実は強力なロビー活動を展開しているのかもしれない。いや、そうに違いない。FMCの中にはCSGJという親日的なグループがあるのだから(何故枢軸国だった日本、ドイツとイスラム国家であるトルコに関してのみ、グループが形成されたのか?そういう国だからこそ、誰かが一生懸命働きかけたのだろうか?)、日本の国会議員にも積極的にこの団体と親睦を深めて頂き、日本の意見を米国議会に反映させるような活動をして頂きたい。物事を上手く推進するためにパーソナルタッチが必要なのは、洋の東西を問わずに同じである。 (了)

柄山直樹 PAC道場第2期生