キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2011年10月25日(火)
[ 2011年DC道場 ]
今日の昼は、上院の外交委員会のスタッフの方にお話しを聞いた。同氏はアジア問題(特に、日本、朝鮮半島、東南アジア、インド)、通商問題などを担当している。概要は以下の通りである。
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大学で国際関係のBAとMAを取得した。その後、シンクタンクで外交専門誌の編集の仕事をし、さらに別の防衛外交専門のシンクタンクで働いたのち、ロースクールに通った。その後、議員のスタッフとして働くようになったが、議員が委員会で重要な仕事をするようになったため、委員会のスタッフになった。
仕事の内容は多岐にわたるが、議員のスピーチや論評記事を書いたり、行政府の政策担当者や外国政府の担当者などに手紙を書いたりする。また、公聴会の準備を行うのも仕事の一部である。外交委員会のスタッフは50名程度であるが、基本的には全員が委員長のために仕事をしている。現在の委員長は25年も議会に勤めているため、個人的に尊敬されている上に、これだけのスタッフを抱えているため、強い影響力を行使できる。委員会のスタッフは委員長以外の一般の委員のための仕事は行わないので、一般の委員は各自のスタッフにサポートしてもらうしかない。このため、委員長の影響力は極めて大きいものとなる。
議員に政策の提案を行う場合には、あらかじめスタッフレベルでコンセンサスを作ってから上げる。そのため、意見が分かれて問題が発生することは多くないが、どうしてもコンセンサスができない場合には議員を交えて賛否両論を戦わせ、最終的には議員に判断してもらう。
委員会の外交への影響は、上述したような書簡による働きかけや、行政府から担当者を呼んで意見交換を行うような方法で行使される。また、議会は行政府の人事の審査権や武器売却などの承認権をもっているので、それによっても外交政策に影響を与えることができる。例えば、5億ドル以上あるいは重要性の高い兵器を売却する場合、上下両院がいずれも拒否するとこれを実施することができなくなる。
より間接的には、議員が新聞のOp-Ed(社説の反対側に掲載される署名入りの記事)に寄稿するなどして、世論形成を行う場合もある。以前、自分が起草して議員のチェックを受けた対北朝鮮政策についてのOp-Ed原稿が新聞に掲載されたことがある。議員は現在の政府の対北政策に疑問を感じており、もう少し話し合いをすべきであると考えている。(了)
道下徳成 政策研究大学院大学准教授・PAC道場第1期生