キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2011年10月23日(日)
[ 2011年DC道場 ]
今日の午前は、ある議員事務所の外交政策スタッフにお話を伺った。インタビューの概要は以下の通りである。
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議会スタッフになる前には、大学で政治学を学び、大学院ではアジアの歴史を学んだ。小さい頃から、米国憲法の内容などから議会は重要な役割を果たしているとの認識があり、議会で働きたいと思っていた。
議会の仕事を探していたとき、丁度、外交委員会が東アジアの専門家を募集していたので応募し、外交委員会で働くことになった。一般的には、議員スタッフとして働いた後に委員会スタッフになることが多いので、これは珍しい例である。委員会で2年半働いたのち、現在の議員のオフィスに移った。
自分は法律の学位は持っていないが、これはスタッフとして仕事をこなす上での問題とはならない。議会の中には「Legal Counsel」という部署があり、法案の適法性についてはここで審査してくれる。彼らは法律のプロであり、過去の法律などとの整合性や、法案の書き方などもアドバイスしてくれる。従って、政策スタッフが良い政策を作りさえすれば、それを法案化するのは難しいことではない。スタッフの中には法律の学位を持っている人もいるが、彼らは「Legal Counsel」の職員ほど詳しくはない。
自分の取り扱っている日米間の政策課題の1つに、「離婚した親による子供の奪取と親権問題」がある。これは米国と日本で法律が異なるために発生しており、日本人との間に子供を持つ米国人が離婚後に子供に会えなくなる事例が頻発し、社会問題となっている。しかし、米国政府は日米関係を安全保障中心に考える傾向があり、この問題は十分な注目を得られていなかった。このため、議会が働きかけを行い、ようやく重要な課題として扱われるようになった。
もう1つは沖縄の問題である。米国政府は沖縄の人々に対して一層の配慮をすべきであるが、反面、日米間の合意が履行されるべきであるというのも事実である。
今後、これらの問題を日米間で解決していかなければならないが、議会と日本の民主党との人的関係が不十分なのは憂慮される。自分の場合も日本人と会ったことがあるのは日本大使館の人だけで、あとは、たまに日本の議員が挨拶に来るが、短時間挨拶を交わすだけで実質的な議論はできていない。また、自分のカウンターパートである、日本の国会のスタッフには会ったこともない。今後、議会同士の交流も活発になれば幸いである。
道下徳成 政策研究大学院大学准教授・PAC道場第1期生