外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2011年10月21日(金)

DC道場フェロー・レポート(下院編・10月20日)

[ 2011年DC道場 ]


 ワシントンDCには政治や行政を司る組織だけではなく、国際的な活動を行う組織の本部もいくつかある。例えば、IMFや世界銀行などだ。両者のビルは隣り合っている。先日参加した某セミナーでたまたま隣の席にいた方が、世界銀行のエネルギー部門(アフリカ地域担当)にお勤めの方であった。そんな方々と隣り合わせて気軽に名刺交換できるというのも、人付き合いがオープンな(少なくとも上辺は)米国らしい。著名な人物がその場にいても、仰々しい対応はせずに気軽に挨拶を交わす。ましてや普通のセミナーでは、構えるような雰囲気は微塵もない。米国の社会は昔からそういう風習なのだろうが、日本人の私には面白い体験である。せっかく知り合ったので、世界銀行とはどんなことをしているのか聞いてみようとインタビューを申し込んだところ、これも快く受けて頂けた。 

 世界銀行は発展途上国の社会インフラ整備をメインにやっており、その方もアフリカ諸国における発電所等のエネルギー関連施設への資金供給を担当している。最近では中国が天然資源の獲得を目指して、アフリカ諸国にいろいろな投資をしているという話を聞くのだが、世界銀行の方もまさにその点を指摘しており、融資を決定するまでの時間が世界銀行に比べて圧倒的に早く、何度かプロジェクトを取られているそうだ。世界銀行の場合、返済計画の審査は勿論、環境アセスメント等も含めてかなりの量のフィージビリティースタディを行うので、どうしても融資決定までに時間がかかる。また、インドや韓国のアフリカ大陸進出も活発であるという。残念ながら、日本がアフリカ大陸に大規模プロジェクトに進出してくる例は少ないそうだ。電化製品や照明器具等の個々の技術は優れており、そういったものを様々な健康管理プロジェクトと組み合わせて普及させる試み等は、なされている。例えば、サッカーのワールドカップ開催に合わせて村に大画面テレビを設置し、村中の人が見に集まってきたところでHIVの検査を行うという具合だ。しかし日本は、インフラ系の大規模プロジェクトを取りまとめて推進するコーディネートの能力に欠けると言う。

 米国にくっついていれば国際政治の秋霜烈日に晒されることなく生きてこられた日本だが、いつまでもそうはいくまい。Occupy Wall Street 運動のようなものが広がり、インテリジェンス予算の大幅カットを計画し、中東でのプレゼンスも段々と下がっており、そこかしこに米国の国力が傾き始めている兆候は見えている。一方、中国、インドといった新興国や、一度はIMF管理にまでなった韓国も、天然資源の獲得を目指して、つまりは国際政治の中で生き残ることを目指して果敢にアフリカ大陸に進出している。自助努力・自己責任という感覚が希薄とも思われる日本が、これからの国際情勢を鑑みて性根を入れていけるかどうか。 

 さて、話は変わるが、こちらにはハッピーアワーというのがある。平日の夕方4時、5時辺りから7時まで、酒類が割引で飲める時間のことを言う。日本の居酒屋でも早い時間に行けば、生ビール半額とかやっているのと同じだ。幸い、下院は今週リセスである。事務所のメンバーを誘って、早速5時から飲み屋に繰り出した(某栄養ドリンクのCMで「5時から男」とかやっていた、高田純次みたいだ)。店に入ると、年齢チェックのためにIDの提示を求められる(米国では飲酒は21歳からだそうだ)。今日参加したメンツは、私を除いて皆20代の若者であった。店員が私にも提示を求めてきたときに、うら若き女性スタッフが「え?彼は明らかに40歳くらいじゃない。ID見なくてもいいじゃん!」と、ケラケラ笑っていた。無邪気な乙女の鋭いつっこみに、高田純次の心はほんの少し傷付いたが、そこは高田純次なので気にせずに高らかに乾杯し、親睦の夜は更けていったのである。 (了)


柄山直樹 PAC道場第2期生