外交・安全保障グループ 公式ブログ

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2011年10月14日(金)

DC道場フェロー・レポート(上院編・10月13日)

[ 2011年DC道場 ]


 今日は、現在、米海軍大学(Naval War College)で教鞭を執っているトマス・マンケン(Thomas G. Mahnken)氏に、国防省で政治任用者として勤務したときの経験についてお話を聞いた。マンケン氏は2006~2009年に米国防省の国防次官補代理(政策企画担当)として勤務した経験をもつ。以下、同氏との一問一答である。
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Q.どういう経緯で、国防省で勤務することになったのか?
A.前任者が退任を希望し、後任として自分を推薦した。具体的には、国防次官の秘書から電話連絡があったのが始まりであった。
Q.国防省でフルタイムで働いた経験がなかった状態で、いきなり国防次官補代理の仕事をこなすのは難しかったのでは?
A.それは事実であるが、官僚であるところの補佐官は極めて有能な人物であり、仕事のやり方が分かっており、どうすれば結果を出すことができるかを理解していた。そのサポートがあったので困ることはなかった。
 前任者が何人かの候補者を挙げ、その中から自分が面接などを通して適任者を選んだ。また、MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)を用いて相性診断も行った。MBTIは国防省や軍では広く用いられている。
Q.在職中はどのくらいの成果を収めたか?
A.目標の多くの部分は達成された。ただ、国防大学に他省庁から多くの職員を招き、「国家安全保障大学」のようなものに広げようとしたが、これはうまくいかなかった。
Q.政策の成功例としてはどんなものがあるか?
A.ブッシュ政権が退陣する前に、きちんとした国家国防戦略(National Defense Strategy)を作成しておきたいと考えた。国防次官にこの話を持っていったところ、彼は前向きだった。ゲーツも気に入ってくれた。それで、草案を作ってゲーツに持っていったところ、気に入ってもらえた。しかし、各軍には、あまり歓迎されなかった。これは、文書の内容が「優先順位を付ける」というものであったからである。しかし、ゲーツの後押しもあり、どうにか軍を説得できた。結果的に、ゲーツの求める方向性が明示されたNational Defense Strategy 2008を出すことができた。これによって、F-22がキャンセルされるなどした。
Q.官僚とうまくやっていくための方法は?
A.米国ではそもそも政治任用者と官僚が一緒に働くのが普通なので、問題は少ない。在任中は多くの友人を作り、人間関係を楽しんだ。
 自分の場合は、大学院生の時にインターンやパートタイムで国防省で働いていた経験があったのと、海軍大学で教えていたのはプラスに働いた。特に海軍大学で働いていたため、①高位級の軍人との接触に慣なれていた、②知り合いが沢山いた(自分の学生であった軍人もいた)、③彼らの言葉で話し、「仲間である」という感覚を共有することができた。また、官僚に「自身も政策のプロセスの一部である」「自分たちのアイディアが採用された」と感じてもらうことが重要である。
 政治任用者と官僚がうまくやっていくためには、両者が知り合いになるっていること、そのためのコミュニティができていることが重要である。日本でもそうしたコミュニティ作りが必要なのではないか。
Q.政治任用者の人材供給源は?
A.昔は大学が供給源であった。キッシンジャーしかり、ブレジンスキーしかり。しかし、最近では、シンクタンクが主要な人材供給源になっている。米国の大学は政策より理論を重視するようになり、政策の仕事をすることは評価の対象とならない。良くて「大目に見てもらえる」のであり、悪くすると「やめておいたほうがよい」と言われる。大学の教員が政治任用者として働くときは、歓迎されるのではなく、サバティカルに行く代わりに政策の仕事をするというような扱いになる。そういう意味でも政府の外にシンクタンクなどの人材供給源を確保するのが重要である。日本でも、もっとシンクタンクができるとよいのではないか。
Q.政治任用者の質の確保は?
A.①議会の承認、②「恥をかきたくない」という政権側の要請がセーフガードになっている。
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 以上、貴重なお話を聞かせてくださったマンケン氏に心より感謝したい。(了)


道下徳成 政策研究大学院大学准教授・PAC道場第1期生