外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2011年10月13日(木)

DC道場フェロー・レポート(上院編・10月12日①)

[ 2011年DC道場 ]


 今日はお世話になっている事務所の上院議員が担当する、Homeland Security and Government Affairs Committee (HSGAC)の公聴会が開催された。詳細は提出されたテキストおよび議事内容のビデオをHPで見ることができるので割愛するが、「9/11から10年」というテーマのもとで開催されている一連のシリーズであり、今回は「情報共有についての現状報告」について、5人の証人が招かれ、発言および質疑応答を行った。
 HSGACは上院にある多くの委員会の中の1つであるが、外交・安全保障関係では、上院にはその他にもSenate Armed Services Committee (SASC。「サスク」と呼ぶ。下院の委員会は「ハスク」)とSenate Committee on Foreign Relations (SCFR)がある。
 しかし、SASCとSCFRの機能や運営は大きく異なる。まず、SASCの使命は年1度、National Defense Authorization Act (NDAA)を成立させるところにあるので、全ての作業はこの目的に従属することになる。例えば、一般の委員会では「マークアップ」と呼ばれる、委員会で法案についての議論、修正、書き直しなどを行うセッションを頻繁に開催するが、SASCでは年1度、NDAAのためのマークアップを行うだけであるし、法案の審議も年1度、NDAAの審議を行うだけである。しかし、だからといって、この作業が容易なわけではない。米軍は巨大であり、国防予算も6600億ドル(2010年度)と巨大である。NDAAは1000ページ以上にわたる大部のものなのである。
 他方、SCFRは大使任命の承認など雑多な案件をかかえており、なかなか法案を通すことができないでいるとのことである。どんな法案でも通すのに1週間はかかるが、休会などの制約を考えると、1年に20本程度の法律しか作ることができない。このためSCFRは事実上、機能しなくなっており、国務省もリップサービスを行い、「SCFRは機能している」というフィクションを維持する作業には加担しているが、実際はほとんど無視しているのだという。
 これは国務省にとっては喜ぶべきことなのかも知れないが、新しい時代に適合した法律ができないことで、場合によっては、無用の長物になった古い法律に行動を制約されることになる。(了)
(付録)公聴会で出てきたジャーゴンの一部(これらについて、誰も一々、説明していなかったが、議員は理解していたようであった。)
ISE=Information Sharing Environment
UCP=Unified Command Plan
JTTF=Joint Terrorism Task Force


道下徳成 政策研究大学院大学准教授・PAC道場第1期生