外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2011年10月12日(水)

DC道場フェロー・レポート(下院編・10月11日)

[ 2011年DC道場 ]


 米国でも、10月10日の月曜日は休日であった。コロンブス・デーといって、コロンブスが北米大陸に到着したことを祝う趣旨で、10月の第2月曜日を祝日としている。三連休が明けて今週の始まりは、議会調査局(Congressional Research Service)におけるオリエンテーションからである。
 議会調査局は、議会図書館(日本でいうところの、国立国会図書館にあたる)の中にあり、議員の要請に基づいて各種の調査・分析を行う機関である。この調査局だけで700人の陣容を誇る。本日のオリエンテーションをして下さったのは、アジア問題(外交、防衛、貿易)を担当されているMark E Manyin博士とEmma Chanlett-Avery女史のお二人である。主な任務は議会・議員からの要請に基づいた調査活動であり、調査した内容を一般に公開する義務は負っていない。議員専用のシンクタンクといったところであろうか。米国の議員は、事務所の立法担当スタッフと一緒になって自ら立法作業を行うことは、よく知られている。それをバックアップする組織が、議会調査局ということである。常に議員の立法担当スタッフから多くの要請があり、相当に忙しいそうだ。
 日本の国立国会図書館にも調査及び立法考査局というのがあり、議員或いは委員会からの要請を受けてレポートを作成している。しかし、私が永田町にいたときの印象では、国立国会図書館を有効活用している国会議員はそう多くないように思う。調査及び立法考査局では依頼のあるなしに拘らず、様々な調査を行ってかなりしっかりしたレポートを作成して議員会館に配布している。しかし、それにきちんと目を通している議員或いは秘書がどれくらいいるのだろうか?
 米国の議会調査局は、アカデミックの領域の人材だけでなく、ときにはCIA、DIAといった情報機関の調査・分析担当だったような人間も転職してくるらしい。ワシントンDCに来て印象的なことの一つに、「学」の存在がある。日本では「政」と「官」の関係の在り方については、四六時中俎上に昇るが、「学」との関係が希薄ではないかと思う。アカデミアの世界の人と政治家・官僚の繋がりは昔より増えてきていると思うが、まだ「エクスキューズ」に使われているような傾向が多いのではないだろうか。ワシントンDCでは、アカデミアの人間も政治任用やロビイストという立場で実際の政策立案から実行までのプロセスを経験し、政治家や役人も政権交代等を機にシンクタンクや大学に移って知の研鑽を積む。こうした入れ替わりの積み重ねによって、政治分野に相当程度の知のインフラが構築されているように思える。
 日本では長いこと政策マーケットを霞が関が担ってきたが、制度疲労が顕著となってきた今、米国のようなスタイルも一つの参考になるのではないか。(了)


柄山直樹 PAC道場第2期生