キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2011年10月7日(金)
[ 2011年DC道場 ]
現在、議会では、中国の「不正貿易慣行」についての議論が進行中である。これについて上院は中国元の価値が「不当に低く抑えられている」ことに対抗する、いわゆる「China Currency Bill」法案を通過させた。しかし、共和党はこの法案に批判的であり、下院では否決される可能性が高い。
それではなぜ上院で法案を通過させることに意義があったのかというと、「中国へのメッセージ・牽制」という側面がある。そして、その効果がうまく発揮されるためには、法案が下院に送られた状態で塩漬けになり、「基本的には法案が成立する可能性はないが、状況が悪化すれば下院での議論も変わりうる」というのがベストということになる。
これまでも、通商問題で議会が強硬な立場を取って、行政府がそれを背景に相手国と交渉するというのは、日米関係やその他の交渉においてもしばしば見られてきたことである。こうしたやり方がどの程度、「あうんの呼吸」で行われているのか、議会のリーダーあるいはスタッフの間である程度、根回し・計画した上でとられているのか、それとも、かなりの部分、各アクターがバラバラに動いているものが、結果として一定の「型」を作ることになっているのか、興味深いところである。これについては、「coordinatedとspontaneousの中間くらい」というのが現実のようである。(了)
道下徳成 政策研究大学院大学准教授・PAC道場第1期生