キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2011年7月18日(月)
[ 2011年外交・安保カレンダー ]
何と言っても今週の焦点はインドネシアで開かれるASEAN拡大外相会合、ASEAN地域フォーラム会合であろう。昨年の今頃は、クリントン国務長官が演説で、「南シナ海の航行の自由などは米国の国益である」と述べて大騒ぎになった。
今年中国は如何に対応するのだろうか。ASEAN側は11月のASEAN首脳会議までに、南シナ海での行動について「行動宣言」から「行動規範」への格上げ(法的拘束力を加える)を考えているようだが、中国側の巻き返しは必至だろう。
ASEAN・日米などが如何に連携を維持できるか、逆に言えば、中国側がどれだけASEAN分断を図れるかが鍵になる。今回も中国が柔軟に対応しないとなれば、南シナ海をめぐる意見の相違はかなり長期化し、中国の孤立も深まるだろうが、中国側に譲歩の兆しはない。
中東情勢は相変わらずだが、最近イランとトルコの動きがちょっとおかしい。イラクからの米軍撤退を睨み、イランが虎視眈々と影響力拡大を画策しているようだが、トルコもそのゲームに加わるのだとすれば、湾岸情勢は更にややこしくなる。
それ以外では、リビアも、イエメンも、エジプトも、シリアですらも、何かが動きそうで、未だ何ら実質的変化のない状況が続いている。これは次の新たな段階までの単なる移行期なのか、それともこのまま変化せずに終わるのか。どうも予測は難しい。
18日 日本外務省、大韓航空機の利用自粛措置
日本側の措置は当然だろうが、この種の問題に時間を費やし、両国間で戦略的な議論が出来なくなることの無いように願いたいものだ。
18日 中国国家統計局、6月の不動産価格について発表
中国のインフレはどこまで進むのか、悲観論と楽観論が交錯している。いずれにせよ、国家統計局の数字を鵜呑みに出来ないことだけは、悲観論者も楽観論者も意見が一致しているのではないか。
18日 ネルソン・マンデラ国際日
南アフリカのマンデラ元大統領が93歳になる。マンデラ氏の政治活動はもう67年となるそうだが、1994年、彼が元「人種差別の国」南アフリカで大統領に就任した時の感動は今でも忘れない。あれからもう17年も経ったのか。
18日 ウクライナ外相、NATO事務局長と会談(ブリュッセル)
18日 イタリア最高裁、首相セックススキャンダルに関し審議
18-19日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
18日 カナダ外相、訪中
18-21日 イラク首相、訪中
中国に来て、日本に来ないとは何事かとすら思うが、日本内政は今それどころではなさそうだ。
18-22日 台湾軍、中国の台湾侵攻を想定した図上演習を実施
偶然かどうか知らないが、ASEAN関連会合に合わせたように演習を実施するとは台湾も必死である。
18-23日 第44回ASEAN閣僚会議、ASEAN拡大フォーラム開催(バリ)
18-19日 第13回独露協議、首脳会談も開催(ハノーヴァー)
18-22日 ニュージーランド首相、訪米(オバマ・米大統領と会談の予定)
18-22日 パキスタン首相、訪英
18-22日 第2回日米経済調和対話 事務レベル会合(ワシントンDC)
19日 トルコ首相、北キプロス・トルコ共和国訪問
19-20日 第二回米印戦略対話開催(ニューデリー)
クリントン国務長官はインドから、ASEAN拡大外相会談、地域フォーラムに向かう。偶然かもしれないが、彼女の日程は、インドとの戦略対話とASEANとの協議が一つの発想の延長上になることを図らずも示している。これを忘れてはならない。
20-22日 カメルーン大統領、訪中
20日 第2次補正予算案、衆院を通過?
22日 第2次補正予算案、参院で可決・成立?
23日 ベルギー、スカーフ着用禁止?
ベルギーがフランスに続き、スカーフの着用を禁止するらしい。やはりフランス語圏の発想は似ているのか。
23日 ラトビア国民投票(国会解散の是非)
24日:日アナログテレビ放送が終了、地上デジタル放送に移行
【来週の予定】
25日 クリントン国務長官、訪中
27-28日 WTO一般理事会(ジュネーブ)
28日 ペルー新大統領就任
28-29日 EU一般問題理事会(非公式、ポーランド・ソポト)
29日 米商務省、11年第2四半期GDP発表(速報値)
29日 ブラジル高速鉄道事業権落札企業グループ発表
31日 埼玉知事選、福島市議選
31日または8月1日 ラマダン(断食月)開始予定(イスラム諸国)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問