キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2011年3月28日(月)
[ 2011年外交・安保カレンダー ]
今週予想される動きと留意点を取り纏めました。これらは「事前予想」ではなく、あくまで研究者としての「心構え」です(出典は本邦日刊全国紙・通信社、外務省、ジェトロなど、あくまで個人の責任で集めました)
大震災の救援・復旧作業が続く中、27日に政令市長選(札幌市・相模原市・静岡市・浜松市・広島市)が告示された。統一地方選前半の投開票は4月10日。当然ながら外交・安保問題が今回の選挙の焦点となることはない。
しかし、米語に「All politics is local」という言葉がある。今回の統一地方選挙で表明される国民の声は、国際社会における日本の行く末を占う上でも、極めて重要なものとなるだろう。
未曾有の大震災とはいえ、過去2週間の政治・行政のちぐはぐな対応ぶりを見ていると、1945年以来の日本の国家統治に深刻な制度疲労が生じているのではないかとの思いを禁じえない。
当然ながら、こうした制度疲労は国内政策だけでなく、外交・安保政策決定プロセスと、決定された政策を世界各地の必要な場所に発信するシステムにも及んでいると見るべきだろう。
制度疲労といえば、中東情勢も新たな段階に入りつつある。特に、民衆騒乱がシリアにも及び始めたことは極めて重要だ。1978年以来の中東における既存の秩序が徐々に、しかし確実に変質し始めたと考えるべきなのか。この判断は今も難しい。
現在、騒乱が政変に転化する可能性があるのはイエメンではなかろうか。大統領は反対派の要求に応じ憲法改正、議会選挙、大統領選挙の実施を約束して生き残りを模索しているが、頼みのイエメン正規軍が割れてしまった以上、情勢はエジプトのムバラク政権末期に似てきたようだ。
イエメンにせよ、バハレーンにせよ、イランの影が見え隠れする。イエメン南部でのアル・カーイダの伸張も気になるが、それ以上に誰もが懸念するのはサウジアラビア王政の行方だろう。リビアも重要だが、アラビア半島情勢には今後とも目が離せない。
28日 参議院予算委員会、一般質疑
28日 衆議院災害対策特別委員会
28日-4月2日 TPP第6回政府間協議(シンガポール)
28-29日 チリISDB-T国際フォーラム(サンティアゴ)
29日 参議院本会議で予算案否決?(憲法60条の規定により、衆議院の議決が国会の議決となり、予算成立?)
29日 アラブ連盟首脳会合?(バグダッド?)
29日 中南米森林投資サミット(サンパウロ、31日まで)
30-31日? 主な予算関連法案や、所得税法等改正案と地方税改正案のつなぎ法案が成立?
31日 家電エコポイント終了
4月1日 パナソニック、三洋電機とパナソニック電工を完全子会社化
1日 中央三井トラスト・ホールディングスと住友信託銀行が経営統合し、三井住友トラスト・ホールディングスが発足
1日 性的漫画を規制した東京都の青少年健全育成条例の新しい自主規制スタート
2日 ナイジェリア国会(上院・下院)議員選挙
3日 チャド大統領選挙
3日 ベルギーのフィリップ皇太子経済ミッション、ロシア訪問
【来週の予定】
7日 英国商業会議所(BCC)年次総会
8日 ジブチ大統領選挙
9日 ナイジェリア大統領選
10日 統一地方選挙(東京都知事選、神奈川県知事選など県知事選13都道県;神奈川県議会選、京都府議選、大阪府議選など44道府県;横浜市議会選、川崎市議会選、大阪市議会選など16政令市議会)
10日 ペルー大統領選挙
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問