外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2011年3月1日(火)

外交・安保カレンダー(2月28日-3月6日)

[ 2011年外交・安保カレンダー ]


 今週予想される動きと留意点を取り纏めました。これらは「事前予想」ではなく、あくまで研究者としての「心構え」です。
 中東で大規模な反政府デモが始まってからまだ二ヶ月しか経っていない。結論を出すのは時期尚早だが、その間各国で「騒乱」は起きたものの、トップが退陣した「政変」はチュニジアとエジプトだけ。しかも、いずれも政体変更を伴う「革命」には程遠い。ここは「騒乱」と「政変」と「革命」をそれぞれ明確に区別していかないと判断を誤るだろう。
 今週の焦点はリビアだ。ひょっとすると今回は「革命」になるかもしれない。そもそもカダフィ一族支配という以外「政体」らしい「政体」が存在せず、軍部もエジプトなどのように強力ではないからだ。但し、問題はカダフィという独裁者が何時「退陣」するかではない。
 真の問題は「革命」成就後のリビア原油を誰が管理するかである。最悪の可能性まで考えると、現時点でリビアの将来を正確に予測するのは最も困難であろう。敢えて申せば、イスラム過激主義諸勢力の浸透を防止すべく、独裁者を失った弱体な軍が、どの程度、迅速かつ一枚岩で動けるかが鍵になると思う。

2月28日 「政府と経済」に関する第1回国際会議(テヘラン) 
 最近イラン情勢は比較的静かである。先週海軍の艦船2隻がスエズ運河を航行したが、特段の騒ぎにはなっていない。イランと他のアラブ諸国には違いがあるのか、あるとすれば、それは何なのかをイメージに流されず詳しく検証する必要がある。

2月28日-3月13日 APEC高級実務者会合(ワシントン) 

2月28日 予算案が衆院予算委員会で可決?
 菅内閣がどうなるかも関心事項ではあるのだが、予算案の行方ばかりが注目されることは如何なものか。悲しいかな、日本の内政が現在の国際社会の最大関心事項である中東情勢から「隔離」されていることの象徴であろう。
2月28日 日中戦略対話(外務次官級、東京)
 「戦略」なる語を使うのは良いが、現状では日中間で本当の「戦略」を話す状況にはない。以前日米間でも「戦略対話」を毎年のようにやったことがあるが、結局は日本国内の「国会答弁振り」を調整することに終わったと、米側が嘆いていたのを思い出す。
 「戦略」対話をするには、まず日本側に「戦略」がなければならない。更に、本当に戦略を語りたいなら、そう頻繁に開催できるものでもない。その点については今も昔も、日米も日中も、あまり変わらないようだ。
2月28日-3月4日 日米経済調和対話事務レベル会合(東京)

2月28日 日本・メキシコ二国間経済協議会(メキシコ・シティ)

3月1-3日 エネルギー会議2010(ヨハネスブルク) 

3月1-3日 第2回ウクライナ・エネルギー・フォーラム(キエフ) 

3月1-5日 情報通信見本市「CeBIT」(独・ハノーバー)

3月2-3日 東南部アフリカ共同市場(COMESA)バンキング・電子マネー会議(ナイロビ) 

3月2-6日 ASEAN・インド・ビジネスフォーラム(ニューデリー)
 中東ばかりが注目されるが、東南アジアにおけるインドの存在感も無視できない。インド外交は中国ほど「行け行け」ではないが、ASEAN諸国の対中意識が変わりつつある中、インドがどこまで影響力を伸ばせるかという視点は重要であろう。
 

3月2日 予算案の年度内自然成立の衆院通過期限

3月2日 第三回日本・バルト3国セミナー(科学技術関係、東京)
 ほとんど話題になっていないが、同じロシアの隣国として日本はバルト海三国に無関心であってはならないと思う。こういう地道で真面目な努力はもっと広く知られるべきだ。
3月3日 ジャーナリスト会議2011(公開シンポジウム、東京)
 アジア太平洋のジャーナリストが集まり議論を行うシンポ。彼らが何を語るかは興味がある。時間は13:00~16:30、場所は日本プレスセンタービル 10階ホール(東京都千代田区内幸町2-2-1)だ。ご関心があれば聴きに行っては如何だろう。
3月3-4日 気候変動に関する更なる行動に関する非公式会合(東京)
 2009年のCOP15、2010年のCOP16の結果を踏まえ、今後の交渉について率直な意見交換を行うのが目的で、2002年から日本が主催してきたもの。具体的な結果が出るわけではないが、こうした地道な活動を続ける以外に、将来のCOP??会合で大きな合意がまとまる可能性はないのだ。
3月3日 ジュネーブ国際自動車ショー

3月5日 中国、全国人民代表大会開幕
 中東のジャスミン革命が中国にも「波及」するのではという希望的観測が流れている。デモの呼びかけは全人代開催中も続くだろうが、中国の場合は「騒乱」にすらならないのではないか。今後もインフレが続けば、話は別だが・・・。
3月5日 東北新幹線「はやぶさ」運行開始

3月6-8日 湾岸環境フォーラム2011(ジッダ) 

3月6日 エストニア議会選挙

【来週の予定】

3月7-11日 IAEA(国際原子力機関)理事会(ウィーン)

3月7-9日 第5回アフリカ経済フォーラム(ケープタウン)

3月7-8日 「日本とイスラム世界との未来への対話」セミナー(UAE・アブダビ)

3月7-10日  セルビア共和国大統領の来日

3月8-11日 アフリカ道路会議(ヨハネスブルク)

3月12日 九州新幹線鹿児島ルート開業


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問