外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

  • 当サイト内の署名記事は、執筆者個人の責任で発表するものであり、キヤノングローバル戦略研究所としての見解を示すものではありません。
  • 当サイト内の記事を無断で転載することを禁じます。

2011年1月31日(月)

外交・安保カレンダー(1月31日-2月6日)

[ 2011年外交・安保カレンダー ]


 今週予想される動きと留意点を取り纏めてみました。「事前予想」ではなく、あくまで研究者としての「心構え」です。

 今週はカイロに注目したい。悲しいかな、日本の一部には現在のエジプト情勢を「民衆革命」などと、およそ見当違いの解説を試みる向きがある。FacebookやTwitterなどで動員された「付和雷同の民衆」は今回の政治劇の真の主役ではない。
 今日のエジプト内政は、①エジプト政治の主役である「軍エリート」と腐敗した「ムバラク家」との対立、②軍部と警察等治安組織との確執、③主流政治エリートと「イフワーン(ムスリム同胞団)」との対立、④軍内の(世俗的)上層部と(宗教的?)中堅将校との温度差、という4つの軸を中心に詳細に分析すべきだろう。
 これまでの報道を読む限り、残念ながら、日本語による報道には本質を突く分析がほとんどなく、英文の記事をよく読むしかない。現在もエジプト内政のシナリオを書こうとしているのは極少数の政治エリートたちだけであり、しかもその筋書きですらシナリオ通りに進む保証など全くない。これがエジプト内政の現状なのである。
恐らくポイントは「軍と民衆の関係」だろう。1月29日以降前面に出てきた軍が今後「発砲」に追い込まれ、「流血の事態」となれば軍のシナリオは完全に失敗し、混乱の中でイフワーンが台頭しかねない。逆に、軍が状況をコントロールできれば、ムバラク一家は「一巻の終わり」、その後は付和雷同分子とイフワーンへの厳しい弾圧が始まるだろう。
 いずれにせよ、今のままではエジプトの「民主革命」など決して実現しないのだ。

2月1日 外務省の欧州大使会議開催
2月2-4日 第5回東アフリカ石油会合・展示会(ウガンダ・カンパラ)
2月4日 EU臨時首脳会議(ブリュッセル)
2月4日 インドネシア外相訪日
2月4-6日 ミュンヘン安全保障会議
2月6日 愛知県知事選・名古屋市長選
2月6日 チャド国民議会議員選挙

【来週の予定】
2月7日 第2回中東・北アフリカ天然ガス・ディストリビューション年次サミット(カイロ、9日まで)
2月7日 石川知裕衆院議員ら小沢氏の元秘書3人の初公判
2月8日 ウズベキスタン大統領来日
2月10日 ベルリン国際映画祭(独) 
2月10日 実習船「えひめ丸」と米原潜「グリーンビル」衝突から10年
2月10-16日 第15回国際トレードフェア「ACITF」(アジズアベバ)
2月11日 シカゴ自動車ショー
2月13日 グラミー賞授賞式(米)
2月13日 スイス国民投票(武器暴力からの保護に関する国民発議)

宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問