外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2010年9月14日(火)

ヘリテージ財団でのパネルディスカッション「日本の新総理と日米同盟への影響」

[ 米国 ]


 日本では民主党代表選が終わり、菅政権が続投することに決まりました。その直後にあたる14日午後(日本の15日早朝)にちょうど、ヘリテージ財団で「日本の新総理と日米同盟への影響」というテーマのパネル・ディスカッションがあったので覗いてきました。
 今回のセミナーを開催したヘリテージ財団は共和党系の財団のため、テーマが米中関係や北朝鮮などの場合、パネリストがやや、保守系に偏るきらいがあるのですが、今日のセミナーのパネリストはケント・カルダーSAIS教授(モンデール駐日大使の上級補佐官)、ジム・アウワー・バンダービルト大学教授(元国防省日本部長)、ブルース・クリングナー・ヘリテージ財団上級研究員(元CIA朝鮮半島担当分析官)、と比較的バランスが取れていました。
 肝心のセミナーですが、菅総理の続投が決まってまずは一安心、といった雰囲気でした。まだ代表選が終わったばかりということで、あまり新しいこともなかったのですが、それでも印象に残ったやり取りがありました。ブルース・クリングナー氏が「日本はGDPで中国に抜かれ、米国にとってのアジアでの最も頼れる同盟国の座を韓国に持って行かれた」という発言をしたのですが、これに対してジム・アウワー教授が「歴代の米国政権は意識して日本を軽視しようとしたとは思わない。むしろ日本が軽視されていると感じるのであれば、それは日本が世界で積極的に役割を果たそうとしなかったり、政治の決断が遅く、思い切った政策が取れないなど、原因が日本にある場合が多いのでは」と言ったのです。これは日本にとっては耳の痛い発言ではないでしょうか。
 余談ですが、ワシントンでは毎日、色々なシンクタンクが様々なセミナーを開催していますが、時宜にかなったテーマでタイミングよくセミナーを開催するのもシンクタンクの評判にとって重要です。その意味で、このヘリテージ財団のセミナーはタイミングとしては非常に良く、同業者としては「先を越された!」という感じです。しかし、周りを見渡してみると、聴衆にはアメリカ人の姿はほとんどなく、大半が日本のメディアの特派員。いかに日本に対するワシントンの関心が低いかを痛感しました。

(このセミナーはウェブでも閲覧可能ですhttp://www.heritage.org/Events/2010/09/Japan-Election)


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員