外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2010年9月13日(月)

外交安保カレンダー(9月13日-19日)

[ 2010年外交・安保カレンダー ]


 外交安保関係で今週予想される動きと留意点を取り纏めました。くどいようですが、これは「事前予想」ではなく、あくまで研究者としての「心構え」ですので、念のため。

9月13日 米議会(上院、下院)再開
 例年米議会はレーバーデーまで休み、今週から活動を再開する。特に今週は16日のガイトナー証言が注目される。

9月13-17日 国際原子力機関(IAEA)理事会(ウィーン)
 6日、IAEAが配布した報告書は、イランが査察活動を妨害する一方で、濃縮度約20%のウランを22キロ製造するなど濃縮活動を強化していると指摘している。今回の理事会ではこの報告書の内容をめぐり、激しい議論が行われる可能性がある。
 この報告書、エルバラダイ事務局長時代には考えられないようなイランに厳しい内容だが、所詮はイランに対する「口撃」でしかない。イランがこれによって態度を変える可能性は低いだろう。

9月14日 第65回国連総会開始(ニューヨーク)
 総会は始まるが、各国首脳演説は23日からだ。また、20-22日にはミレニアム開発目標(MDGs)サミット、22日に生物多様性サミットなどが予定されているが、日本からの出席者と訪米日程は日本の政治日程次第ということなので、外交当局としては頭が痛いだろう。ご苦労様です。

9月14日 (日本)民主党代表選挙
 菅首相が優勢との報道があるが、どうなることやら。12日の名護市議会選では移設反対派が多数を占めたそうなので、普天間問題もますます動かなくなるだろうし、11月の知事選に向けややこしい問題がまた一つ増えたということか。誰が次期首相になるにしても、当分「塩漬け」にするしかないだろうが、それで持つのか。

9月14-15日 第二回中東和平会議(エジプト・シャルムエルシェイク)
 現在米マスコミの関心事はこれだ。仲介役のクリントン米国務長官は13日中に当地入りするそうだが、この程度のことでパレスチナ問題が動くとは思えない。ちなみに、90年代前半は中東和平問題で二国間交渉と多国間交渉が進展し、日本は環境部会の議長までやっていた(そんな時代もあった)のだから、隔世の感がある。
 当時はまだPLOのアラファトが健在だったが、それでも彼は政治決断しなかった。PLOとハマスに分裂した現在、パレスチナ側に決断できる政治家はいないだろう。米国は入植地凍結をイスラエルに求めるだろうが、これも動きそうもない。
 これまでの経験から申し上げれば、近くイスラエルの強硬派が何らかの大問題を起こす、パレスチナ側が態度を硬化させる、交渉が行き詰るという「お決まり」のパターンが繰り返されそうな予感がする。

9月16日 ガイトナー財務長官、公聴会で人民元問題につき証言
 ガイトナーが米上院銀行委員会と下院歳入委員会で証言する。先週のサマーズ訪中で何が話し合われたか明らかではないが、報道では米中間で「一時休戦」したともいわれており、ガイトナーの証言内容が注目される。
 最近の米議会は人民元問題で「怒り狂って」おり、対中強硬論を唱える議員が増えている。中国からの輸入品に制裁関税を課す法案の審議が進み、少なくとも下院で通過する可能性も指摘されているので、今後の米中関係を見る上では要注意だ。

9月16日 米商務省、10年第2四半期経常収支発表
9月16日 欧州理事会(EU首脳会議)
9月17日 CIS経済評議会会合(モスクワ)

9月18日 アフガニスタン下院議員選挙
 下院は昨年の大統領選後、カルザイ大統領との対決色を強めてきた。今回反カルザイ勢力が伸長すれば、今後の政権運営はますます困難になる。また、最近はタリバンによるとみられる候補者などの殺害や誘拐が相次いでおり、イラクと同様、選挙投票日前後に大規模テロが起きる可能性は否定できない。
 いずれにせよ、米国はアフガニスタンでは勝てない、というより、歴史上アフガニスタンを支配できた外国勢力はない。米国が例外となる可能性もない。これが現実である。アフガニスタンについても、今後は如何に名誉ある撤退を行うかが焦点となろう。

9月19日 スウェーデン総選挙
 報道によれば、スウェーデンの総選挙で、本人の知らないうちに、王女2人と王子1人がある少数政党の立候補名簿に名を連ねていたそうだ。それでも、スウェーデンの選挙法上は違法ではないという。何と平和な国であろうか。

(来週の動き)
9月20〜24日 第54回IAEA通常総会(ウィーン)
9月22〜24日 中秋節連休(中国、香港)
9月27日 IAEA理事会(ウィーン)
9月下旬 ロシアのメドベージェフ大統領、旅順、上海、北京訪問


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問