ワーキングペーパー  グローバルエコノミー  2026.11.05

ワーキング・ペーパー(26-020E)Common Ownership and Intertemporal Price Discrimination

本稿はワーキングペーパーです。

経済理論

同じ投資家が競合する複数の企業の株式を持つ「共通所有(common ownership)」は、企業が合併しなくても競争を弱めうるのか。これは、投資家の株式保有や経営への関与を競争政策上どう扱うかに関わる重要な問題である。一社の値下げで別の投資先の利益が減れば、共通の株主が値下げから得る利益も小さくなる。米国の航空市場では、共通所有が運賃を押し上げるとの研究がある一方、共通所有を測る指標に市場シェアの影響が含まれるため、共通所有自体の影響とは言い切れないとの反論もある。

こうした実証結果を政策判断につなげるには、共通所有が価格に影響を与える経路と消費者の得失を結び付ける、経済理論の分析が必要になる。本論文は、航空券のように事前割引があり、消費者が安さを優先して早く買うか、予定が確かになるまで待つかを選ぶ需要不確実性のある市場を分析する。共通の株主の利害を反映して企業が前売価格と利用直前の価格に差をつけることで「異時点間での価格差別」を行う状況を考える。

モデル分析の結果、共通所有が強まると前売価格が上がり、早期購入の割引幅が縮小するため、購入を後に延ばす消費者が増えることが示される。自分に適した商品について事前に得られる情報が十分に乏しい場合には、利用時点の価格が下がることもある。それでも、割安な前売りを利用する人が減る効果が加わるため、消費者が実際に支払う平均価格は上昇する。ただし、その上昇幅は、購入時期によらず同じ価格を設定する場合よりも小さい。この結果は、航空市場における共通所有の価格への影響を、そのまま価格が一律の市場に当てはめると、影響を過小評価する可能性を示唆している。

さらに、平均支払価格が上昇しても、消費者全体の利益が増える場合がある。購入を待つことで、より確かな情報に基づいて自分に合った商品を選べる利点が生じるためである。各時期の購入者数を考慮したとき、利用時点の値下がりによる利益が、前売りの値上がりによる負担を上回れば、消費者全体の利益は増加する。事前に得られる情報が十分に乏しい場合には、共通所有の小幅な増加についてこの条件が満たされる。消費者全体の利益が減る場合でも、その減少幅は、購入時期によらず同じ価格を設定する場合より小さい。

本研究は、共通所有を競争政策の観点から評価する際、各時期の価格と購入者の割合に加え、情報を得てから購入することによる商品選択の改善を併せて捉える必要性を示している。

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