ワーキングペーパー  グローバルエコノミー  2026.10.20

ワーキング・ペーパー(26-018E)New Assets, Limits to Arbitrage, and Bubbles in Dividend-Yielding Assets

本稿はワーキングペーパーです。

経済理論

技術革新や金融革新、規制緩和の時期には、新たな企業や証券の登場とともに資産価格が高騰することがある。鉄道ブームやドットコム・バブルなどの歴史研究は、新資産の登場とバブルの関連を指摘してきた。しかし、新しい資産の誕生がなぜ価格をファンダメンタル価値(将来配当の割引現在価値)以上に押し上げ得るのか、その理論的メカニズムは十分に説明されていない。本論文は、新規資産の継続的な創出と「未誕生の資産への請求権を事前に取引できない」という制約に着目し、この仕組みを一般均衡モデルで示す。

ここでいう合理的バブルとは、経済主体が合理的に行動しているにもかかわらず、資産価格がファンダメンタル価値を上回る状態である。従来の代表的モデルの多くが無配当資産のバブルを扱ってきたのに対し、本論文は、株式や不動産のように収益を生む資産でもバブルが成立する条件を明らかにする。

基本モデルは、若い世代が貯蓄のために資産を購入し、老年期に配当と売却収入で消費する世代重複モデルである。資産は配当を生む「ルーカス・ツリー」として表され、新しい木が毎期誕生する。重要な仮定は、①新規資産が継続的に供給されること、②誕生時期の異なる資産を区別できること、③未誕生の資産への請求権を事前取引できないこと、の三つである。本論文は、これらの仮定の下で、バブルのない均衡に加えてバブル均衡が成立する条件を明らかにした。このバブルは、不確実性や非合理的な期待に依存せず、均斉成長経路でも成立する。

これら三つの仮定は、Santos and Woodford(1997)のバブル非存在定理を支える市場構造の条件を緩和する役割を果たす。同定理の関連する条件は、現在取引可能なポートフォリオによって、経済全体の将来賦存の現在価値に有限の上限が与えられることである。本モデルでは、新たな資産が継続的に生まれる一方、その将来所得への権利は既存資産に含まれず、誕生前に独立した請求権として取引することもできない。このため、現在の資産だけでは総賦存の現在価値に有限の上限を与えるポートフォリオを構成できなくなる。このように同定理の条件を緩和することで、本論文では配当付き資産において合理的なバブルが成立し得ることを示している。

さらに、我々の設定は、設備投資や研究開発を通じて資産が創出されるモデル、空売り制約のある無限期間モデルにも適用できる。新規資産が独立した請求権として登場するか、既存資産の所有者にその権利が帰属するかも、バブルの成立を左右する。本論文は、新資産の創出だけでなく、その所有権と取引可能性の重要性を示し、革新や規制緩和に伴う新資産の登場とバブルを結び付ける歴史研究に、理論的な裏付けを与える。

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