電力広域的運営推進機関(OCCTO)の2040年シナリオ③は、今後の電力需要の増加を見込み、再生可能エネルギーの導入拡大と火力発電所の低CO₂化によって排出量の削減を図るシナリオである。本稿は、このシナリオで供給力不足を補うために追加された火力を含む設備構成を対象に、電力需給と年間発電コストを評価した。
年間需要を1,100TWhとし、2025年度の需要と再エネ出力の時間変化を用いて、全国10地域の需給を30分間隔で計算した。その結果、本稿の設備配置・運転・送電の想定の下では、OCCTOが示す補完後の設備で、対象年のすべての時点の通常需給を満たす運転が得られた。供給余力は別途、各時点の需要の8%を目安に点検し、LNG火力22.6万kWを追加計上した。これは簡易な容量評価であり、予備力を含めた安定供給を保証するものではない。
年間費用はOCCTO③ケースが24.09兆円、追加の再エネ・CCS・混焼設備を導入しない既存火力活用ケースが14.33兆円で、差は9.77兆円となった。両ケースの需要と原子力の設備量・発電量は共通である。
発電所の化石燃料由来の直接CO₂排出量は、OCCTO③ケースが約0.82億t/年、既存火力活用ケースが約3.91億t/年となった。OCCTO③ケースの再エネ発電量比率は約44%であるが、太陽光は発電端換算で約19%にとどまり、政府の2040年度見通し23~29%を下回る。本稿は、政府見通しの電源構成を達成する費用を求めたものではない。
本試算は単年度の気象・需要を事前にすべて把握した完全予見の下での最適化であり、厳しい気象年、設備故障、予測誤差、燃料途絶に対する供給信頼度を検証していない。また、CCSや水素・アンモニア利用は個別の設備の実証試験段階に留まっており、本稿で想定する大規模な導入量と高い稼働率、それを支える燃料供給網・CO₂輸送貯留網の実現は不透明である。そのため費用推計にも大きな不確実性があり、実際には試算値から大幅に乖離し得る。