ワーキングペーパー エネルギー・環境 2026.10.08
東京都の補助制度と電気料金を通じた利益と負担の配分
本稿はワーキングペーパーです。
太陽光発電と蓄電池を導入すると、家庭の電気代は大きく減る。しかし、その一方で、導入にかかる費用を負担する家庭も発生する。本稿は、東京都の住宅への導入を例に、導入家庭にどれだけの利益が生まれ、その費用を他の家庭がどれだけの負担をするか試算する。
対象は、既築住宅に太陽光発電6kWと蓄電池13kWhを設置する場合である。設備・工事費は税込328.5万円とする。2025年度の東京都の補助金228万円を受けられる条件では、家庭の自己負担は100.5万円となる。
このとき、月々の電気代は約1万8,600円から約3,500円に減る。これにより、導入家庭は15年間で134.8万円の黒字となる。他方で、設備の供給と維持管理を担う事業者には、計325.6万円の税抜売上が生じる。
家庭の電気料金は、基本料金よりも使用量に応じて払う部分が大きい。導入家庭ではこの支払いは大きく減るが、電力の安定供給を担うための発電や送電の設備は引き続き必要であり、この負担は他の家庭の負担に転嫁される。
補助金の原資も含めた他の家庭の負担は、導入1件につき、15年間で総額423.1万円となる。なお燃料費は2016~2020年度の実績に近い5円/kWhで計算した。2024年度の実績に近い10円/kWhとしても、この負担は385.8万円となる。
このように、太陽光発電と蓄電池の導入家庭では15年間で134.8万円の黒字になり、その設備の供給と維持管理の事業者には325.6万円の売り上げが立つ一方で、他の家庭には385.8~423.1万円もの負担が発生する。
住宅用太陽光発電(PV)と蓄電池の導入は、家庭の電気代を減らし、設備を供給する事業者に売上をもたらす。本稿は、こうした利益に対応する費用を誰が負担するかを、導入家庭、太陽光発電事業者、他の家庭の三者に分けて分析する。公的部門と電気事業者については、導入に伴う費用と便益をすべて他の家庭に転嫁または還元し、両者の収支に影響を残さないと仮定する。
東京都の既築住宅にPV6kWと蓄電池13kWhを導入する場合を対象とし、設備・工事費には成約価格調査の平均である税込328.5万円を用いる。助成対象経費などの要件を満たす場合、東京都の補助額は2025年度制度で228万円、2026年度制度で192万円となる。中心となる評価期間は、同容量級の蓄電池の設計上の標準使用期間に基づく15年とする。
電気の使用量と自給率には、近い容量帯の設備に関するメーカーの公表試算を用いる。月499kWhの需要の86%を自給し、初年度の購入電力量は月約70kWhに減るとする。また、パネルの経年劣化を考慮して購入電力量の削減効果を年0.5%ずつ小さくし、維持管理費を年1.98万円計上する。
系統側で回避できる費用は火力発電の燃料費とする。その単価には、2016~2020年度の実績に近い5円/kWhを中心ケースとして用い、直近の2024年度の実績に近い10円/kWhについても試算する。
2025年度の補助を利用する中心ケースでは、導入家庭の15年間の収支は134.8万円の黒字となる。太陽光発電事業者には、設備販売298.6万円、維持管理27.0万円、合計325.6万円の税抜売上が生じる。これによる電力システムへの負担は税収の還元後で460.4万円となり、ここから燃料費削減37.3万円を差し引くと、他の家庭の負担は423.1万円となる。燃料費を10円/kWhとした場合には、他の家庭の負担はやや下がり15年間で385.8万円となる。