2026年8月上旬、国際機関で働く幹部を増やすため、候補となる人材を育成する官僚の専門枠「グローバル・キャリアトラック」創設検討のニュースが、新聞やテレビで相次いで流れた。発端となったのは、2026年6月8日に、自民党経済安全保障推進本部(本部長・大野敬太郎衆議院議員)が、高市早苗首相に申し入れた「国家安全保障戦略など三文書見直し及び骨太方針に向けた提言」である。提言では、日本が積極的・主導的な役割を果たして、新しい国際秩序を形成することが必要で、そのため、国際機関の邦人幹部人材拡大、「世界で勝負できる人財」の育成、公務員制度改革、民間やアカデミアの人材発掘の強化を訴えていた。
日本は長年、国際標準や国際規格などの国際ルールの関与の強化に取り組んできた。昔から多くの国際機関に拠出金や分担金を拠出しており、座長の席数を拡張しようと試みているが、なかなか実現するのは難しい状況である。
国際標準・国際ルールを作る国際機関に、日本人幹部を継続的に増やそうという取り組みは、今の社会経済状況からみて、時流に合っていると思う。どちらかといえば遅いくらいであって、速やかな対応が望ましい。取り組みが成功するには、国際舞台で華々しい成果を上げても元の人事路線に戻ってしまう、現在の公務員キャリアパス(昇進・昇格ルート)を変革できるかどうかにかかっている。
かつて、米国メトロポリタン美術館で働いていた友人が、職員間のパワーゲームに驚いたと言っていた。国際機関内でも職員間のパワーゲームはあると思われるので、他国に負けない強靭な体力・精神力も必要かもしれない。
私の場合でいえば、税制・税務行政の国際組織のカンファレンスに毎年呼ばれているが、各国の顔ぶれがほとんど変わらないので、毎年同じ人たちに会っている。13年間も参加し続けていると、各国や国際組織の動き方が見えてくる。リーダーシップを発揮する人はだいたい決まっていて、明るく誠実で貢献的なタイプや、明るく精力的なタイプである。昨今、グローバリズムだけでなく、リージョナリズムやナショナリズムの進展により、さまざまなレイヤーで関係強化がなされている。日本も可能な限り、幅広く関係強化を図った方がよい。そう言い続けて10年くらいたつ。ほぼ諦めかけていたところ、この動きによって、改革の機運が高まりそうで、うれしい限りである。