メディア掲載  国際交流  2026.09.29

最先端技術、平和的活用の道を

電気新聞【グローバルアイ】(2026年9月15日)に掲載

科学技術・イノベーション

◆災害復旧や介護分野も非軍事で無限の広がり

米中大国間競争が激しさを増している。特に注目すべきは最先端科学技術分野での競争だ。「科学に国境はない。しかし科学者には祖国がある」。これは中国の習近平国家主席が語った言葉だ。かくして科学技術と祖国愛との間に国際政治が割り込んでくるのだ。

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米国大統領府の科学技術政策局(OSTP)は国家安全保障科学技術戦略(NSSTS)を8月に公表した。これによると、対中戦略を念頭にして米国が海中、宇宙、そしてAI・自律性という3つの技術分野に注力する事を示している。

20ページほどの資料に関して、現在、米欧、そしてシンガポールの友人たちと議論を続けている。ある友人が、「技術は進歩するが、残念だが人間は進歩しないね。いつまでたっても人間は争う事をやめない」と語った。

それに対し筆者はフランスの思想家ポール・ヴァレリーの小論を紹介した―すでに天国にいる天才的科学者、例えばアルキメデス、ニュートン、ガリレオに、現代の使者が、彼らの時代以降に発明された発電機を届けたとしよう。彼等は機械の知識を持っているが、電磁誘導に関する知識は持っておらず、発電機の中のコイルを見ても理解できないはずだ。すなわち天才的な彼らでも、アンペールやファラデーといった後世の科学者の知識は理解できない。このように科学技術は、人間が真剣に学んでいる限り、不可逆的に進歩する。

翻って人間の性格は進歩する事が難しい。だから、アリストテレスや孔子の教えは、現在の我々にとっても“新鮮”に映るのだ。

「世紀は進む。しかし個々人は必ず最初から始めるしかない」とゲーテは語った。また、第一次世界大戦の悲劇を目にしたフロイトは、高度な文明を持つ民族が、他民族に対する無知・無理解から憎しみを抱き、攻撃的になるという集団心理的な後退性を指摘した。

悲しい事に今も最先端技術を取り込んだ戦闘が各地で繰り広げられている。この「軍事における革命(リボリューション・イン・ミリタリー・アフェアーズ=RMA)」という現象の最先端現場はウクライナだ。AI搭載ドローンが飛躍的進歩を示し、高い殺傷能力を実現している。

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ウクライナでのRMAに衝撃を受けた米中両国も、AI・ロボティクスの軍事的技術開発に懸命になっている。こうした中、米IT企業パランティアの共同創業者兼CEOが語った言葉は印象的だ―「世界の先進国の間で新たな形の軍拡競争が行われている。意識的に、あるいは無意識的に、AIの軍事利用を躊躇するならば、我々は将来むくいを受ける事になる」、と。

だが、我々は科学者には祖国があると同時に、彼等の心の中に倫理観がある事を忘れてはいけない。

このため筆者は友人たちとAI・ロボティクスの平和的活用について議論している。特に市民生活上のAI・ロボティクスに関し技術面で、社会の制度・組織改革において、日本がリードする事ができると考えている。

地震や火災、さらに原発事故といった災害現場での危険作業、高齢者の介護、街の保全などAIをはじめとする最先端技術の平和的活用方法は無限に広がっているのだ。