ワーキングペーパー  エネルギー・環境  2026.09.16

ワーキング・ペーパー(26-025J)エアコン2⁠0⁠2⁠7⁠年⁠問題:省エネ基準強化による家計の費用負担

エネルギー政策 規制・法制度

平易な要約

省エネ性能の高いエアコンは、使えば使うほど電気代を減らせる。しかし、そのために高くなる購入費は最初に支払わなければならない。あまり使わないエアコンでは電気代の節約が小さく、購入時の差額を取り戻すまでに長い年月がかかる。

2⁠0⁠2⁠7⁠年⁠度の省エネ基準を満たす6⁠畳⁠用エアコンにも、工事込みで1⁠0⁠万⁠円前後の製品が出てきた。一方、基準を満たさない廉価な製品には、6⁠畳⁠用で6⁠万⁠円台、1⁠0⁠畳⁠用で8⁠万⁠円台のものがある。本稿で比較した機種では、達成機との価格差が1⁠台当たり3⁠万4千円あった。

たとえば、地方の戸建てで一人暮らしをする高齢者が、居間と寝室に1⁠台ずつ設置し、冬は灯油ストーブを使う場合を考える。エアコンは冷房にしか使わず、一人が二つの部屋を使い分ける。この条件では、2⁠台⁠分の差額6⁠8⁠,⁠4⁠6⁠0⁠円を電気代の節約で取り戻すのに東京の気候条件において6⁠5⁠.⁠0⁠年かかる。冷房需要の少ない寒冷地では回収期間はさらに長くなる。

日中ほとんど留守にするワンルームの単身者では、6⁠畳⁠用1⁠台の差額を取り戻すのに3⁠7⁠.⁠6⁠年かかる。一人が居間、書斎、寝室の3⁠台を順番に使う場合も、差額は3⁠台⁠分かかるのに、3⁠台を同時に運転するわけではないため、3⁠7⁠.⁠6⁠年を要する。居間のほかに三つの寝室がある家族世帯でも、寝室の使用時間は限られるので、4⁠台⁠分の差額を取り戻すのに2⁠2⁠.⁠2⁠年かかる。

このように、購入時の差額は台数に応じて増えるが、電気代の節約は実際に運転した分しか生じない。モデルケースでは採算が取れる製品であっても、冷房にしか使わない家庭、外出時間が長い家庭、複数の部屋を使い分ける家庭では、電気代の節約の効果は限定的になる。

収入が限られ、しかも使用時間が短い世帯では、購入時の数万円の差額の負担感は大きい一方で、毎年の節約額は小さい。政府は、製品ごとの消費電力量や使用条件に応じた光熱費の目安を分かりやすく示すなど、情報提供に努めるにとどめるべきである。消費者が必要な冷房を手頃な価格で確保できるよう、2⁠0⁠2⁠7⁠年⁠度基準による規制強化は撤廃すべきである。

要旨

本稿は、家庭用壁掛けエアコンの2⁠0⁠2⁠7⁠年⁠度省エネ基準について、基準達成機と廉価な未達成機の価格差を、電気代の節約で回収できるかを検討する。2⁠0⁠2⁠6⁠年9⁠月に確認した6⁠畳⁠用の基準達成機は、標準工事費込みで9⁠6⁠,⁠3⁠0⁠0⁠円から1⁠0⁠6⁠,⁠3⁠0⁠0⁠円であった。一方、未達成の廉価機には、6⁠畳⁠用6⁠2⁠,⁠6⁠0⁠0⁠円、1⁠0⁠畳⁠用8⁠0⁠,⁠8⁠9⁠0⁠円の販売例がある。ケーススタディで比較する達成機はそれぞれ9⁠6⁠,⁠4⁠2⁠0⁠円、1⁠1⁠5⁠,⁠5⁠3⁠0⁠円であり、価格差は3⁠3⁠,⁠8⁠2⁠0⁠円、3⁠4⁠,⁠6⁠4⁠0⁠円となる。この価格差は規制だけによる値上がり額ではないが、購入費を抑えたい消費者が実際に負担する差額である。

同一メーカー、同一年モデル、同一販売店の製品を比べると、価格差は6⁠畳⁠用で2⁠1⁠,⁠7⁠4⁠0⁠円、1⁠0⁠畳⁠用で2⁠0⁠,⁠7⁠1⁠0⁠円となる。電力量単価を3⁠1⁠円⁠/⁠k⁠W⁠hとした場合、JISの標準条件による年間節電額はそれぞれ2⁠,⁠6⁠9⁠7⁠円、3⁠,⁠4⁠4⁠1⁠円であり、価格差は8⁠.⁠1⁠年、6⁠.⁠0⁠年で回収できる。このように、標準条件に近い使い方であれば、基準達成機が家計にも有利となる例がある。

しかし、JISに基づく期間消費電力量は、東京の気象条件の下で、冷房期と暖房期に毎日6⁠時から2⁠4⁠時まで運転するものとして算出される。6⁠畳⁠用の年間節電額がJISの標準条件で算出した額の半分なら回収期間は1⁠6⁠.⁠1⁠年、3⁠分⁠の⁠1なら2⁠4⁠.⁠2⁠年となり、購入後の買替えまでの機器の平均使用年数1⁠3⁠.⁠4⁠年を上回る。暖房にエアコンを使わない家庭や、複数の部屋に設置した機器を短時間ずつ使う家庭では、標準条件どおりの節電額を得られない可能性が高い。

四つの生活例に市場価格の差を当てはめると、回収期間は2⁠2⁠.⁠2⁠年から6⁠5⁠.⁠0⁠年となった。いずれも1⁠3⁠.⁠4⁠年を上回る。なお、これらは一定の使用条件を置いた試算であり、該当世帯の割合や全国平均の負担額を示すものではない。しかし、購入時の価格差は使用時間にかかわらず生じ、複数台を必要とする世帯では台数分だけ嵩む。

2⁠0⁠2⁠7⁠年⁠度基準を評価する際には、JISの標準条件による効果だけでなく、冷房と暖房の使い分け、部屋ごとの使用時間、設置台数、購入時の負担を考慮する必要がある。政府は、冷房時と暖房時の消費電力量や使用時間に応じた費用の目安などの情報提供に努めるにとどめ、2⁠0⁠2⁠7⁠年⁠度基準による規制強化は撤廃すべきである。

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