省エネ性能の高いエアコンは、使えば使うほど電気代を減らせる。しかし、そのために高くなる購入費は最初に支払わなければならない。あまり使わないエアコンでは電気代の節約が小さく、購入時の差額を取り戻すまでに長い年月がかかる。
2027年度の省エネ基準を満たす6畳用エアコンにも、工事込みで10万円前後の製品が出てきた。一方、基準を満たさない廉価な製品には、6畳用で6万円台、10畳用で8万円台のものがある。本稿で比較した機種では、達成機との価格差が1台当たり3万4千円あった。
たとえば、地方の戸建てで一人暮らしをする高齢者が、居間と寝室に1台ずつ設置し、冬は灯油ストーブを使う場合を考える。エアコンは冷房にしか使わず、一人が二つの部屋を使い分ける。この条件では、2台分の差額68,460円を電気代の節約で取り戻すのに東京の気候条件において65.0年かかる。冷房需要の少ない寒冷地では回収期間はさらに長くなる。
日中ほとんど留守にするワンルームの単身者では、6畳用1台の差額を取り戻すのに37.6年かかる。一人が居間、書斎、寝室の3台を順番に使う場合も、差額は3台分かかるのに、3台を同時に運転するわけではないため、37.6年を要する。居間のほかに三つの寝室がある家族世帯でも、寝室の使用時間は限られるので、4台分の差額を取り戻すのに22.2年かかる。
このように、購入時の差額は台数に応じて増えるが、電気代の節約は実際に運転した分しか生じない。モデルケースでは採算が取れる製品であっても、冷房にしか使わない家庭、外出時間が長い家庭、複数の部屋を使い分ける家庭では、電気代の節約の効果は限定的になる。
収入が限られ、しかも使用時間が短い世帯では、購入時の数万円の差額の負担感は大きい一方で、毎年の節約額は小さい。政府は、製品ごとの消費電力量や使用条件に応じた光熱費の目安を分かりやすく示すなど、情報提供に努めるにとどめるべきである。消費者が必要な冷房を手頃な価格で確保できるよう、2027年度基準による規制強化は撤廃すべきである。
本稿は、家庭用壁掛けエアコンの2027年度省エネ基準について、基準達成機と廉価な未達成機の価格差を、電気代の節約で回収できるかを検討する。2026年9月に確認した6畳用の基準達成機は、標準工事費込みで96,300円から106,300円であった。一方、未達成の廉価機には、6畳用62,600円、10畳用80,890円の販売例がある。ケーススタディで比較する達成機はそれぞれ96,420円、115,530円であり、価格差は33,820円、34,640円となる。この価格差は規制だけによる値上がり額ではないが、購入費を抑えたい消費者が実際に負担する差額である。
同一メーカー、同一年モデル、同一販売店の製品を比べると、価格差は6畳用で21,740円、10畳用で20,710円となる。電力量単価を31円/kWhとした場合、JISの標準条件による年間節電額はそれぞれ2,697円、3,441円であり、価格差は8.1年、6.0年で回収できる。このように、標準条件に近い使い方であれば、基準達成機が家計にも有利となる例がある。
しかし、JISに基づく期間消費電力量は、東京の気象条件の下で、冷房期と暖房期に毎日6時から24時まで運転するものとして算出される。6畳用の年間節電額がJISの標準条件で算出した額の半分なら回収期間は16.1年、3分の1なら24.2年となり、購入後の買替えまでの機器の平均使用年数13.4年を上回る。暖房にエアコンを使わない家庭や、複数の部屋に設置した機器を短時間ずつ使う家庭では、標準条件どおりの節電額を得られない可能性が高い。
四つの生活例に市場価格の差を当てはめると、回収期間は22.2年から65.0年となった。いずれも13.4年を上回る。なお、これらは一定の使用条件を置いた試算であり、該当世帯の割合や全国平均の負担額を示すものではない。しかし、購入時の価格差は使用時間にかかわらず生じ、複数台を必要とする世帯では台数分だけ嵩む。
2027年度基準を評価する際には、JISの標準条件による効果だけでなく、冷房と暖房の使い分け、部屋ごとの使用時間、設置台数、購入時の負担を考慮する必要がある。政府は、冷房時と暖房時の消費電力量や使用時間に応じた費用の目安などの情報提供に努めるにとどめ、2027年度基準による規制強化は撤廃すべきである。