米国ロッキーマウンテン研究所(RMI 2024)は、中国を世界で最初の大規模な「電力国家(electrostate)」と規定し、電化と風力・太陽光設備の拡大を化石燃料からの転換として描く。しかしながら、この規定は中国のエネルギー構造と政策を誤認している。中国は、電力が化石燃料を代替しつつある再エネ電力国家ではなく、石炭・石油・天然ガスを一次エネルギー、発電、産業原料および安全保障の中核に据えつづけている化石燃料国家である。
中国のエネルギー政策は、利用可能なあらゆるエネルギー源を開発する全方位型である。風力・太陽光・水力などの再エネに加えて、原子力についても、またあらゆる化石燃料についてもそのインフラを大規模に開発している。化石燃料は、最大の一次エネルギー源であり、最大の発電量を占めると同時に、製造業における熱源および原料となっている。
中国国家統計局によれば、2025年の一次エネルギー消費は61.7億トン標準炭で、その78.3%を化石燃料が占めた。2020年から2025年までに一次エネルギー消費総量は24.2%増加し、石炭は構成比を下げながらも消費量を増やした。電力部門でも、風力・太陽光は設備容量こそ47.3%であるが発電電力量では21.8%にとどまっている一方で、火力発電は59.8%を供給した(中国国家統計局 2026a, 2026b)。
中国は再エネ製造大国でもある。しかし、太陽光パネル、蓄電池、電気自動車の価格競争力と大量生産能力は、石炭を中心とする安価で安定したエネルギー、石油コークス、化学原料、素材産業および巨大な重工業基盤に支えられている。中国は今後も、2030年に向けて、化石燃料の国内生産、輸入、備蓄、精製、輸送および石炭転換能力を増強する計画である(国家発展改革委員会 2026a; 中国能源報 2026)。この化石燃料基盤は、ホルムズ危機においても供給体制の強靱性を遺憾なく発揮した(Tice 2026b)。中国を、化石燃料国家と呼ぶことこそが、その実態に最もよく合致する。