ワーキングペーパー エネルギー・環境 2026.09.01
CMIP6年平均全球気温における自己相関・変動振幅・スペクトルの個別モデル検証
本稿はワーキングペーパーです。
気候モデルが外力に対する気温の応答を正しく計算するためには、外力を加えなくても生じる自然変動を現実的に再現できなければならない。とりわけ、ある年の高温・低温がその後何年残るか、変動の大きさが時間平均によってどのように減るか、どの周期帯の変動が強いかという時間構造が重要である。本稿は、第6期結合モデル相互比較計画(Coupled Model Intercomparison Project Phase 6: CMIP6)の過去再現実験(historical experiment)318ラン・58モデルと、5種類の観測気温系列を用い、個々のモデルが1880~2014年の年平均全球気温の自然変動を再現しているかを検証する。ここでランとは、同じモデルを異なる初期値で計算した1回のシミュレーションをいう。
自然変動を測る指標には、自己相関関数(autocorrelation function: ACF)のラグ1~20年、1・5・10・20年平均の標準偏差、4次自己回帰モデル(autoregressive model of order 4: AR(4))から推定した正規化スペクトル32点、および13点の統合指標を用いる。同じモデルの全ランについて指標点ごとの中央値を取り、それらを結んだ曲線を、そのモデルの「代表曲線」とする。5観測系列が示す最小値から最大値までを「観測幅」とし、各モデルの代表曲線がこの範囲を外れる点数を数える。事前に定めた指標点の半数以上が観測幅を外れた場合を、主たる不一致判定とする。これは仮説検定ではなく、モデルと観測の差がどの程度広範に現れるかを示す単純な診断である。
すべての指標点が観測幅に入ったモデルは、自己相関関数で0/58、変動振幅で10/58、AR(4)スペクトルで0/58、統合指標で0/58であった。反対に、指標点の半数以上が観測幅を外れたモデルは、それぞれ53/58、36/58、57/58、42/58である。58モデルと各指標点の組み合わせをすべて数えると、観測幅を外れたのは、自己相関関数804/1,160、変動振幅133/232、スペクトル1,476/1,856、統合指標494/754であった。
各モデルに含まれるランの過半数で、指標点の半数以上が観測幅を外れたモデルは、自己相関関数56/58、変動振幅43/58、スペクトル58/58、統合指標54/58である。さらに、観測幅を上下それぞれ2倍に広げても、同じ不一致判定となるモデルが、自己相関関数33、変動振幅17、スペクトル39、統合指標24残った。
自己相関、変動振幅、スペクトルは、自然変動と外力に対する応答を結び付ける揺動応答関係の基礎となる統計量である。また、イベントアトリビューションで計算する事象の発生確率や確率比も、モデル内の自然変動の大きさ、極端な値の現れ方、持続性、地域間の相関に左右される。本稿で検討した年平均全球気温の自己相関、変動振幅、スペクトル構造に照らすと、CMIP6モデルの大半は、自然変動を適切に表現しているとは言い難い。したがって、強制応答の計算にもイベントアトリビューションにも、使用する個々のモデルが観測された自然変動を再現しているかを事前に確かめる必要がある。