ワーキングペーパー  エネルギー・環境  2026.08.28

ワーキング・ペーパー(26-019J)蛍光灯2028年規制を撤回すべき理由

エネルギー政策

概要

水銀に関する水俣条約第5回締約国会議(COP5)の決定を受け、一般照明用蛍光ランプの製造・輸出入は、種類に応じて2026年から2028年にかけて禁止される。家庭にある蛍光管の使用や在庫品の販売・購入は直ちに禁止されない。しかし、蛍光管の新品供給が途絶えれば、蛍光管が切れた家庭は、まだ使える器具を含めてLED器具へ取り替えざるを得なくなる。

照明業界は、既設蛍光灯器具へLEDランプだけを装着すると発煙・発火・落下の危険があるとして、器具ごとの交換を推奨している。他方、政府・業界の広報はLED化による省エネと電気代削減を前面に出す。だが、長時間点灯する居間の計算は、短時間しか点灯しない仏間、客間、納戸などに適用することは適切ではない。

本稿は、多室の既築戸建てに住む高齢単身者を想定し、居間、台所、寝室、玄関・廊下、浴室・洗面、仏間、客間・納戸の7か所を一括交換する費用便益を計算した。総費用は10万3,430円、年間節約額は2,727円、単純回収年数は37.9年、10年間の便益費用比は0.21となる。これに対し、居間1灯だけなら、費用1万7,270円、年間節約額2,303円、回収年数7.5年、10年間の便益費用比1.08である。全室の一括交換は、費用が便益を大きく上回ることから、家計にとってほとんど正当化できない。

この国際規制の負担は各国で同じではない。間接照明を主に使用する欧米とは異なり、日本では環形・直管形の蛍光管を用いる天井照明が既築住宅に多数あり、高齢単身世帯の居間でも蛍光灯使用率は43.5%と高い。禁止という措置は特に日本において大きな負担をもたらす。

蛍光管の供給が細れば、一般家庭は、必要な蛍光管をあらかじめ買いだめするか、切れた照明をそのままにして不便な生活を我慢するか、高額な一括交換を前倒しするかの選択を迫られる。これは水銀対策の名の下に国民へ過大な費用と手間を押し付ける政策である。政府は一般照明用蛍光ランプを対象とする水俣条約附属書Aの再交渉を提起し、日本の生活実態に即した適用除外または期限見直しを実現した上で、国内の製造・輸出入禁止を撤回すべきである。

キーワード:蛍光灯、LED、費用便益分析、高齢単身世帯、水俣条約、規制撤回

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