ワーキングペーパー  エネルギー・環境  2026.08.05

ワーキング・ペーパー(26-017J)住宅用太陽光発電の政策的推進を終えるべき理由

本稿はワーキングペーパーです。

エネルギー政策

概要

本稿の結論は、住宅用太陽光発電を義務化や補助金等で普及させる政策を終えるべきだ、というものである。最大の理由は、住宅用太陽光発電は事業用太陽光発電(メガソーラー)よりさらに高価であり、国民に莫大な費用を負担させることである。大量導入を進める政策は正当化できない。

費用が高くなる理由は、太陽光発電が本質的に二重投資となるためである。太陽光発電を増やしても、火力発電所や原子力発電所をなくすことはできない。日照が乏しいときや夜間にも電気は必要だからである。したがって、太陽光発電への投資に加えて、発電しない時間の供給力も維持しなければならない。大量導入が進めば、蓄電池や送電網への投資も必要になり、需給調整の費用も増える。よく再エネ賦課金が注目されるが、それは太陽光発電の本当の費用の一部に過ぎない。(杉山 2023b; 2024a)

住宅用太陽光発電はメガソーラーより高価である。政府の2040年モデルプラント試算においても、メガソーラーが8.5円/kWhであるのに対し、住宅用太陽光発電は10.2円/kWhとされている(発電コスト検証ワーキンググループ 2025)。住宅が対象であると、規模の経済が働かない。すなわち住宅用では、一棟ごとに現地調査と設計を行い、足場を組んで施工する。引渡し後の保証や機器の交換にも個別に対応しなければならない。屋根の改修や建物解体時の撤去にも費用がかかる。

政府は更に、太陽光発電を大量に導入した場合、火力発電の調整運転、蓄電池の充放電損失、出力制御などの「電力系統統合コスト」によって発電コストが大幅に上昇するという試算を示している。この政府試算を用いて、第七次エネルギー基本計画に従って太陽光発電等の大量導入をした場合の発電コストを試算すると、メガソーラーは43.4円/kWh、住宅用太陽光発電は52.0円/kWhとなった。このように、電力系統への統合費用を考慮すれば、住宅用太陽光発電は極めて高価な電源となる。

だが政府や自治体は、住宅用太陽光発電を設置すると「採算が合う」「お得」と強調する。だがこれはまず、一般の国民による補助金等の原資の負担に依存している。加えて、家庭用の電気料金制度を通じても一般の国民は費用を負担している。太陽光発電を設置した建築主は晴れた昼間に買電量を減らす一方で、夜間や悪天候時には従来と同じように電力系統から電気を受け取っている。従って、本来であれば、原子力・火力発電所や送配電網の固定費を負担しなければならない。だが家庭用電気料金の多くは、買電量に応じて課金されているので、建築主は固定費の負担をせず、それはその他の一般の国民の負担となっている。「グリッドパリティ」という考え方は、電力システム全体を維持する費用を見落としている。(東京都環境局 2024; 国土交通省 2026; 杉山 2024a)

分配面でも、家庭用太陽光発電導入政策の受益者は所得の高い層である一方、費用は国民全体が負担するという逆進性の問題がある。太陽光パネルを設置できるのは、基本的には持ち家に住み、初期投資をする資金があり、日当たりのよい屋根を持つ人である。環境省の統計では、太陽光発電の使用率は戸建住宅で11.7%である一方、集合住宅では0.0%である。戸建住宅に限っても、年間世帯収入250万円未満では使用率は4.3%と低いが、2000万円以上では25.8%であり、約6倍の開きがある。その一方で、太陽光パネルを設置できない人も、再エネ賦課金や税を通じて費用を負担している。(環境省 2025; 杉山 2026b; 2026e)

住宅用太陽光発電はまた、メガソーラーと共通の多くの問題を抱える。太陽光パネルの製造が中国に大きく依存していることは変わらない。新疆ウイグル自治区を含む上流工程には人権侵害の疑いがある。また石炭火力を多用した製造工程によるCO2排出は無視できない。水害や火災の際には感電の危険がある。将来は撤去と廃棄の費用もかかる。

ペロブスカイト太陽電池は興味深い技術ではあるが、太陽電池である以上、発電量は天気に左右されるので、大量導入をすると系統統合費用が嵩むことには変わりはない。政府は20GWという大量導入目標を掲げて巨費を投じているが、これも巨額の国民負担となるおそれがある。(杉山 2022b; 2022c; 2025a; 2026c; 2026d)

日本はすでに、再エネ賦課金の急増を経験した。これに加えて、政府は、再生可能エネルギーと系統整備・調整力について今後10年間で合計約31兆円以上の官民投資を見込んでいる。投資の原資は、税や電気料金などを通じて、最終的には国民が負担する。これに加えて、太陽光発電の大量導入を実現する第七次エネルギー基本計画に沿った電源構成が実現するとなると、2040年度の発電コストは、既存火力・既存原子力を活用する場合より年間30兆円規模で増加し得る。これはやはり年間30兆円規模の、電気料金総額の上昇に直結する。(内閣官房 2025; 杉山 2026a)

以上を総合すると、住宅用太陽光発電を政策的に大量導入する便益は乏しくかつ富裕な層に偏っている一方で、一般の国民にとっての費用負担は莫大なものとなる。義務化や補助金等によって大量導入を図る政策は終えるべきである。

キーワード:住宅用太陽光発電、系統統合コスト、出力制御、電気料金、再エネ賦課金、逆進性、ペロブスカイト太陽電池

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