一昔前の資料では、「100万キロワット級の原子力発電所1基分の発電量をメガソーラーで補うには、山手線の内側1つ分の面積が必要だ」と説明されることがあった。だが、最近の実績を踏まえると、この数字は見直す必要がある。特に問題になるのは、森林、原野、湿原周辺などに建設される大規模太陽光発電所(メガソーラー)である。
太陽光パネルは、工場跡地や埋立地のような平坦な土地であれば比較的効率よく並べられる。しかし、山林や原野ではそうはいかない。斜面、谷筋、管理道路、調整池、残置森林、離隔距離などが必要になる。地形があるため、パネルをぎゅうぎゅうに敷き詰めるわけにはいかないのである。
そこで、環境影響が問題になりやすい森林・原野・湿原周辺型のメガソーラーについて、土地利用を1メガワットあたり2.5ヘクタールと置いて計算してみる。この値は、公開資料から案件別に集めたデータで、大規模案件や林地・原野系案件の中央値が2.5ヘクタール前後になることを踏まえたものである(計算の諸元は付録を参照されたい)。
100万キロワット級の原子力発電所が設備利用率80%で稼働すると仮定する。一方、事業用太陽光発電の設備利用率を近年の実績に近い15.9%と置く。この場合、同じ年間発電量を得るには、認可出力(交流出力)ベースで約500万キロワットのメガソーラーが必要になる。
この500万キロワットに、1メガワットあたり2.5ヘクタールを掛けると、必要面積は約1万2600ヘクタール、すなわち約126平方キロメートルとなる。山手線の内側の面積はおおむね63平方キロメートルとされる。つまり、森林や湿原周辺に建設されるようなメガソーラーで原子力発電所1基分の年間発電量を代替しようとすれば、山手線の内側約2つ分の土地が必要になる計算だ。
これは決して小さな面積ではない。山手線の内側2つ分の森林や原野、湿原周辺を開発するというのは、単なる「再生可能エネルギーの導入」ではなく、大規模な土地改変そのものである。
なお、年間発電電力量が同じでも、電源としての機能は同じではない。メガソーラーは昼間、しかも天候のよい時間に出力が集中する。原子力発電所のように昼夜を問わず安定して供給する機能を持たせるには、夜間や曇天に備える巨大な蓄電池、調整力、送電網が別途必要になる。これは現実的ではない。
さらに問題なのは、こうしたメガソーラーの面積、出力、パネル容量、実発電量、設備利用率、土地の種類などのデータが、国によって十分に整理され、公表されていないことである。火力発電所については、発電所やユニットごとの発電実績がかなり詳しく公開されている。ところが、メガソーラーについては、土地改変を伴うにもかかわらず、案件別に「どれだけの土地を使い、どれだけ発電しているのか」を検証しやすい形にはなっていない。
再生可能エネルギーであっても、環境負荷は発生する。森林を伐採し、湿原周辺を改変して建設される太陽光発電所については、発電量だけでなく、土地利用に伴う影響を検証する必要がある。これだけメガソーラーの環境問題が社会問題化しているにもかかわらず、案件別の基礎データが整理されておらず、これは国の不作為と言わざるを得ない。