ワーキングペーパー  エネルギー・環境  2026.06.23

ワーキング・ペーパー(25-009J)メガソーラーによる森林損失の費用評価

本稿はワーキングペーパーです。

経済理論 エネルギー政策

要約

メガソーラーが森林を伐採して建設される場合、その発電事業は売電収入を生む一方で、森林が持っていた多面的機能を失わせる。森林は木材を生産するだけではない。二酸化炭素を吸収し、土壌流出を防ぎ、山腹崩壊を抑え、洪水を緩和し、水を貯留し、水質を浄化し、保健休養の場を提供している。これらの多くは市場で取引されないため、発電事業者の損益計算書には現れない。

林野庁は、日本学術会議答申等をもとに、森林の多面的機能のうち貨幣評価が可能な一部について年間評価額を公表している。ただし林野庁は、機能ごとに評価手法が異なるため、合計額は記載していないとしている。本稿ではこの留意点を明記したうえで、外部費用の桁を把握するための一次近似として、林野庁掲載値を単純合算し、森林面積で割る。掲載値を合算すると年間70兆2,638億円であり、令和4年3月31日現在の日本の森林面積2,502万haで割ると、森林生態系サービスの価値は概算で約280.8万円/ha/年となる [2][3]。

次に、同じ1haの土地をメガソーラーに利用した場合の年間発電量を計算する。既報に基づき1haあたり設備容量を0.67MW、設備利用率を12%と置くと、年間発電量は70.4万kWh/ha/年となる[1]。売電単価を8.9円/kWhとすれば、年間売上は約627万円/ha/年である。森林価値280.8万円/ha/年をこの発電量で割ると、森林喪失の外部費用は約3.99円/kWhとなる。

政府の発電コスト検証では、2023年時点の事業用太陽光モデルプラントの発電コストは政策経費ありで10.9円/kWh、2040年時点では政策経費ありで6.9〜8.8円/kWhとされている [7]。森林喪失の外部費用3.99円/kWhを加えると、2023年運転開始のモデルプラントの社会的発電コストは14.9円/kWh、2040年運転開始のモデルプラントの社会的発電コストは12.4円/kWhとなる。

これは、森林を伐採して設置するメガソーラーについては、立地に伴う自然資本の喪失を明示的に考慮する必要があることを示している。


キーワード:森林、メガソーラー、太陽光発電、外部費用、生態系サービス、森林の多面的機能、環境経済学、自然資本、FIT/FIP、立地規制

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