二酸化炭素(CO₂)濃度の上昇は、気候変動の悪影響の原因として評価される一方で、植物生理、農業生産、水利用効率、陸域生態系、人間の健康に対して好影響も及ぼしている。本稿は、温暖化影響の悪影響評価で標準的に用いられてきた積み上げ型(enumerative)評価の考え方を、CO₂増加に伴う好影響にも対称的に適用し、その年間便益を世界規模で試算する。
評価対象は、(1)CO₂施肥による作物収量・生産性向上、(2)作物水利用効率向上による灌漑水節約、(3)グローバル・グリーニングによる生物物理的冷却、(4)乾燥地緑化による砂漠化・土地劣化防止、(5)作物生産性向上による農地拡大回避・自然生態系保全、(6)温暖化による寒冷関連死亡の減少である。
中心推計では、CO₂増加に伴う好影響は年間約1.93兆ドル、2024年世界GDP比で約1.73%となる。現在の大気中CO₂濃度は産業革命前の約1.5倍であり、倍増には達していない。それにもかかわらず、積み上げ評価により得られる便益が世界GDP比で約1.7%に達することは、CO₂を純粋な外部不経済として扱う従来の社会的炭素費用(SCC)評価に対して、便益側を明示的に組み込む必要性を示している。
キーワード:CO₂施肥効果、グローバル・グリーニング、作物生産性、寒冷死亡、砂漠化、灌漑水、積み上げ評価、社会的炭素費用