メディア掲載  エネルギー・環境  2026.05.13

「愚かで高い脱炭素」「成長を阻む再エネ」高市政権は エネルギー政策の大転換を

週刊フジ(2026年5月5日付)に掲載

エネルギー政策

ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続いている。「脱炭素」を最優先にする一方で、「石油の中東依存」を放置してきた、菅義偉首相以来の日本のエネルギー政策は完全に破綻した。

日本は石油の95%を中東に依存してきたが、そのほとんどはホルムズ海峡経由であった。

イランはミサイル、ドローン、機雷によって海峡を封鎖する能力を有しており、これは米国とイスラエルによる猛烈な空爆によっても失われていない。仮に、今後戦闘が停止しても、中東情勢は不安定なままであろう。事実上の封鎖がいつまで、どの程度続くのか、全く予断できない。

資源エネルギー庁は、石油ショックが発生した1973年に、資源とエネルギーの安定供給を使命として設立された。

ところが、菅首相が2020年に「50年CO2ゼロ」という目標を掲げて以来、「脱炭素」を最優先とする組織に変貌してしまった。

その一方で、「石油の中東依存が極めて高い」という致命的な問題が、たびたび指摘されながらも、何らの手も打たれず放置されてきた。これは同庁の存在理由に関わる由々しき問題である。

いま日本はホルムズ海峡以外からの石油と天然ガスの輸入に奔走している。だが、どこまで確保できるかは全く予断できない。

代替するエネルギーとしては、いまなお日本の発電量の3割を占める石炭火力を一層活用すべきである。

ところが、ここ数年、日本政府は脱炭素のためとして、石炭や石油の使用を抑圧するような政策ばかりを実施してきた。

特に大問題なのは、この4月から本格導入された「排出量取引制度」である。これは約400社の大規模排出者に排出枠を設定し、それを超えて排出する企業に、政府ないし他企業からの排出枠購入を義務付けるものだ。制度の名前こそ取引制度だが、実態は「CO2の総量規制」である。

日本全体の排出削減目標が13年比で30年46%減、40年73%減、50年100%減という「無謀な数値」に設定されている中で、かかる総量規制が導入される。事業者は、いつ排出枠を大幅に減らされ、高額の排出権購入を余儀なくされるか分からない。

この制度が廃止されなければ、石炭火力は死刑宣告を受けたのも同然で、次々に閉鎖されるだろう。

石油の使用も抑圧されるため、企業はホルムズ海峡に依存しない油田への開発投資や、南北アメリカなどの多様な調達先の開拓をする動機を失う。石油を罰するやり方では、中東依存の問題は解決しないのだ。

脱炭素政策、とりわけ排出量取引制度は、石炭と石油という死活的に重要な手段を日本から奪うものだ。これは国家のエネルギー安全保障に完全に逆行する。

では、「再エネ」についてはどうか。

高市早苗政権になってから、メガソーラーによる乱開発や、ソーラーパネルのリサイクルに関する規制は強化された。これは正しい方向の一歩ではある。

しかし、再エネの大量導入という方針は変更されていない。

すなわち、現行のエネルギー基本計画では、20年時点で全電力の1割に過ぎなかった太陽光・風力発電を40年には3割から4割にするという。このとき、楽観的な政府試算によっても、発電コストはキロワット時当たり30円前後となる。普通の火力発電や原子力発電であれば10円前後であるから、3倍にもなる。これでは光熱費は高騰する。

役人は脱炭素により「グリーン成長」すると唱え続けてきたが、成長などするはずがない。

高市首相は「安定的で安価な」エネルギーを目指すと所信表明演説で述べた。その言や善し。

だが、脱炭素を最優先するという日本のエネルギー政策は、いまだ前任者のときから何ら変わっていない。役所が「再エネの予算・縄張り」といった利権にどっぷりと漬かっているからだ。こうなると役所が自ら方向を変えることはおぼつかない。

いまこそ高市政権は、官邸の意思によって、この利権構造を断ち切り、愚かな脱炭素政策を止めなければならない。

原子力政策についてはどうか。

原子力規制委員会は26年4月、運転中の原子力発電所のテロ対策設備の完成期限について一定の延期を認めた。これは正しい方向への一歩ではあるが、小さすぎる一歩でもある。

課題は山積している。最大の問題は、いまの原子力安全規制そのものにある。これは11年の東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故を受けて制定されたものだ。

これを当時の菅直人首相は「原発を規制し、再稼働を難しくするための改革」だと説明した。この言こそは、まさに「いまの体制の問題点」を端的に表現している。

すなわち日本の原子力安全規制は、「リスクを合理的に管理する規制」ではなく、「リスクゼロを目指す何重もの規制」になってしまっている。

すでに、東日本大震災の教訓を踏まえて、複数の非常用電源を配備したり、建屋に水密扉を設置するなど、津波対策は何重にも強化されている。

現実を見れば、原子力発電所を動かすリスクよりも、動かさないことのリスクこそ顕在化している。いまの危機において原子力発電所を止めたままでは、電力は高騰し不足する。

原子力安全についてだけリスクゼロを追い求めると、国全体としての経済ひいては安全保障のリスクが大きくなる。合理的な再稼働を進める政策への転換が必須である。

国会の過半数を確保できるいまの政権であれば、これを法改正によって実現できるはずだ。いまこそ、高市政権は「原子力安全規制を抜本的に合理化する」ための法改正をすべきである。