メディア掲載  財政・社会保障制度  2026.04.22

外国人との共生で必要なこと

『税務経理』(時事通信社)第10324号(2026年4月7日)に掲載

日本

政府の官民競争入札等監理委員会の専門委員を務めて13年が経つ。私たち委員は、国の機関が行う行政サービスの「民間競争入札実施要項」などの資料のチェックを行い、気づいたことを委員会で指摘する役割を担っている。そうした中、この間、重要な指摘ができたと自負する案件があった。

近年、日本が力を入れている「外国人との共生社会の実現」を目指し、文部科学省では、生活者としての外国人のための日本語学習サイト「つながるひろがるにほんごでのくらし」を運営している。日本全国には、外国人向けの日本語学校がない地域もあるため、独学できるように制作された事業である。確かに日本語の習得だけでも大変だろうに、日本の生活習慣を身に付けるのは容易ではないだろう。

委員会に備えて、「『生活者としての外国人』のための日本語教育ハンドブック」を読んでいると、「Ⅳ 目的地に移動する」という章で、「07 公共交通機関を利用する」と「08 自力で移動する」という項目があった。「07」では、電車、バス、タクシー、飛行機、船などを利用するケースが想定され、具体的なやり取りのコンテンツが作られているが、「08」では徒歩で移動するケースしか想定されていなかった。

昨今の道路事情では、特に東京や横浜、大阪などの大都市で、自転車や電動キックボードのマナーの悪さが指摘されている。日本全体で自動車の事故は相変わらず起きている。外国人も、国際免許証があれば、自動車の運転は可能だし、購入やレンタル、シェアリングサービスにより自転車や電動キックボードも運転できる。事故が起きてからでは遅い。これらを運転するのならば、交通ルール、駐車や駐輪の仕方、保険の加入、事故の場合の対応など理解しておく必要がある項目は多い。

これらの移動方法についても、日本のルールを把握していただくことが重要であるため、「08 自力で移動する」に、自動車や自転車、電動キックボードなどの項目の追加をお願いしたところ、文科省は検討すると言ってくれた。

出入国在留管理庁でも外国人向けの生活マニュアルが整備されているし、外国人従業員を抱える企業では日本のルールを教えているとも聞く。しかし、外国人との共生社会の実現はたやすいことではない。あらゆる機会をとらえ、畳み掛けるように連続的な働き掛けが必要で、それが相互理解につながると考える。