メディア掲載  エネルギー・環境  2026.04.21

電気自動車は石油供給危機の救世主になるか? いま大量導入に舵を切るべきなのか冷静に考えてみる

Japan In-depth(2026年4月16日)に掲載

エネルギー政策

【まとめ】

  • 自家用車用のガソリンは日本の石油需要の3割にすぎないため、石油の安定供給の確保が必要なことは変わらない。
  • 電気自動車(EV)は石油需要の削減にはなるが日本の電源構成の下では化石燃料需要の削減には必ずしもならない。
  • 石油供給の多様化に加え高燃費化・ハイブリッド化・プラグインハイブリッド化を進める方が費用効果的にエネルギー安全保障を確保できる


中東でエネルギー危機が勃発して、日本の石油供給が危機にさらされている。これを受けて、EVに期待する声がある。
ではEVでガソリン自動車を代替すると、今後の日本のエネルギー安全保障にどのくらいの寄与ができるのだろうか。

まず、EVで代替できるのは石油全体の約3割である自家用車のガソリン需要に過ぎないことに注目する必要がある(図1)。残りの7割はEVでは代替できない。

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図1
https://www.enecho.meti.go.jp/about/energytrends/202506/pdf/energytrends_all.pdf


トラック、建設機械、農業機械、漁船などのほとんどはディーゼル燃料を必要とする。化学原料のナフサも電気では代替できない。灯油や重油などは、ガスのほか、電気でも代替できるかもしれないが、これは従前に比べて全体に占める割合は小さくなった。

以上から分かることは、仮に自家用車の動力のほとんどをEVに替えたとしても、原油ないし石油製品としての石油の安定供給は依然として必要である。このことの政策上の重要性は今後も変わらない。EVで石油供給の問題のすべてが解決するわけではない。

EVは化石燃料依存を必ずしも減らさない

さて、EVを導入するとして、それが自家用車用のガソリン消費量を減らすにしても、それが果たして最も有効な方法なのかどうか、これについては検討する余地がある。

ガソリン消費を減らす手段としては、EV化の他に、

  • 既存のガソリン自動車の燃費の改善
  • ハイブリッド化
  • プラグインハイブリッド化

がある。EV化を図るよりも、費用効果的に、ガソリン消費量全体を減らすことができる。

またEVは、化石燃料の消費量の低減を必ずしも意味しない。というのは、日本の電源構成であれば、電源の7割は火力発電であるためだ。石油の消費量は確かに減るが、その一方で、ガスや石炭の消費量は増えることになる。ただし、中東依存度でいえば、石油が95%、ガスが10%程度なので、中東が危機にあるいま、より安定な供給が望めることにはなる。

EV導入のコストと資源リスク

では、いま起きている石油価格の高騰により、EVの方がコスト的に有利になるだろうか。少なくともこれまでは、EVは割高であったので、補助金や税制優遇など、さまざまな政策的支援に頼って導入されてきた。

想像をめぐらすべきことは、今般の中東危機のような供給ショックが起こると、資材価格全般が上昇するということである。EVは、ガソリン自動車に比べて資材投入が多いから、それによるコストアップも大きくて、必ずしもEVが有利になるとは限らない。

またEVを導入するとなると、そのバッテリーやモーターの製造工程における中国依存が問題になる。

モーターにおいては、いまのところ、レアアースの一つであるネオジムを大量に使用する。バッテリーにおいても、リチウムやコバルトを使用するが、中国がそのサプライチェーンを握っている。

これら鉱物資源の採掘・精錬・加工工程を、中国は武器化するようになった。折しも、中東危機を受けて、世界全体での地政学的緊張が高まっている。今後は、経済安全保障の観点から、中国依存を高めることにはますますリスクを伴うのではなかろうか。

トヨタが分かりやすく説明しているように、同じ量のバッテリーを使ってEVを一台作るよりも、ハイブリッド自動車を何十台も作った方が、大いに石油の節約にもなるし、CO2の削減にもなる(図2)。

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図2
https://toyota.jp/info/e-toyota/news/carbonneutral-vehicle/article_36/


エネルギー安全保障には多様な手段が必要

そして、EVを導入してガソリン自動車を置き換えるといっても、それが目に見えてガソリン消費を減らすには、この先何年もかかるであろう。それよりは、石油の調達先を多様化してゆく努力に加えて、燃費改善、ハイブリッド化、プラグインハイブリッド化を進めることで費用効果的にガソリン消費を削減する方が、エネルギー安全保障の観点から有効な手段なのではなかろうか。
なおバイオエタノールは、その製造工程において化石燃料を多く使用するし、平時においても割高なものが、有事になるとガソリン同様に値上がりしてしまうので、エネルギー安全保障の観点からは意味が乏しい。

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図3
https://thebreakthrough.org/issues/food-agriculture-environment/biofuel-policy-is-failing-consumers-and-the-climate


CO2が減るというが、エタノール生産工程でのCO2排出も多いことが指摘されている(図3)。加えて、日本がエタノールを輸入する一方で、その輸入先の米国やブラジルは石油を増産しつづけて使っている。これでは日本はお金を損するだけでCO2排出削減にも寄与しているか疑わしい。

米国やブラジルからバイオエタノールを輸入するぐらいなら、米国やブラジルから石油を輸入するほうが低コストであり、石油の調達源が多様化できるので日本のエネルギー安全保障にも大いにプラスになるのではないか。


【参考サイト】

  1. 資源エネルギー庁「エネルギー動向(2025年6月版)」 https://www.enecho.meti.go.jp/about/energytrends/202506/pdf/energytrends_all.pdf
  2. トヨタ自動車「カーボンニュートラル車の考え方」 https://toyota.jp/info/e-toyota/news/carbonneutral-vehicle/article_36/
  3. ブレークスルー研究所「バイオ燃料政策の問題点」 https://thebreakthrough.org/issues/food-agriculture-environment/biofuel-policy-is-failing-consumers-and-the-climate