気候変動とそれに関係する諸課題に、日本社会がどう向き合うべきかを問う本プロジェクト「気候変動の問題性再考研究会」では、気候変動問題を「2050年のネットゼロ」つまり温室効果ガスの排出削減目標をいかに達成するか、という問題に限定せず、日本が直面する様々な社会課題や環境問題との関係の中で捉え直すことを目指している。諸課題と気候変動の関わりをオムニバス式に取り上げ、研究会の開催およびレポートと動画を中心とする成果の発信を行う。
そもそも、気候変動は科学の問題、あるいは科学的に定義し解決策を導ける問題ではなく、社会のあり方そのものに深く関わっている。今、気候変動による社会的影響の多様さや、1.5度目標を達成することの困難さ、そして大気と他の地球科学システム間の相互作用をはじめ、気候変動問題の複雑さの全貌が、目まぐるしい規模とペースで明らかになりつつある。この現実を受け止め、立ち止まって、問題の捉え方や取り組み方を振り返るべきではないか。気候変動を引き起こした社会システムと同じ発想や力学の中で、環境負荷を削減する「イノベーション」の事業化を通じて、環境問題を解決できる、という立場を無批判に奉じつづけることは、結果として大きな社会的不公正への加担につながることが強く懸念される。
今求められているのは、気候変動の緩和と適応を両立するための政策の微修正や、誰かの責任を追及し対立を煽るような先鋭的な思想でもない。むしろ、具体的な社会課題や問題状況に照らして、気候変動の問題性を再考することや、気候変動をきっかけとして、社会―環境問題を捉え直すことだと考えられる。気候変動のように、人間が依拠し恩恵を享ける近代的な社会経済システムが、副作用ではなく本来的な作用として、人間に様々な生きづらさをもたらす有り様を直視し、それを出発点にシステムの改良や社会としての対応を考えること。こうした試みは、課題ごとに見れば国内にも多くの蓄積があり、それらを参照しながら、新たな切り口で日本の社会課題を言語化し、さらなる研究課題を導く取り組みとしたい。
目次本研究プログラムについて
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日本政府の気候変動・エネルギー政策は、「なぜ社会全体で取り組むべきか」という根本的議論が不足しており、2050年カーボンニュートラル達成という数値目標や具体策が先行している。欧米では気候変動を「社会全体の課題」として多角的に議論してきた歴史があるが、日本では産業競争力重視のGX政策が中心となり、気候変動の社会的影響や他の課題との関係性が十分に検討されていない。
欧米や国際社会では、気候変動がどのような問題であり、なぜ社会全体で取り組むべきか、すなわち気候変動への「向き合い方」について、多様なナラティブが展開されてきた。その一部を例示する:
これらに対しては、問題の過度な焦点化による、他の社会課題や民主的意思決定プロセスの軽視、根本的な社会構造改革の欠如など、様々な批判も存在する。
GX政策は実質的に産業政策であり、環境省などの他省庁政策との連携が不十分である。そもそも日本では以前から環境政策が構造的に弱く、対処療法的な技術導入に偏りがちであることが指摘されている。
「世界と足並みを揃えて排出削減」そして「産業競争力強化」を前提とする向き合い方を続けることには、いくつかの問題が考えられる。いずれも、日本について繰り返し指摘されてきた課題である。
本プロジェクトは、日本社会の文脈で「気候変動がなぜ、どのように日本社会にとって問題なのか」を考える実験的・試験的な試みである。エネルギー・気候変動分野の若手専門家を中心に、「文系的」知見も学びながら、多角的に気候変動の問題性を再考する。本プロジェクトの成果として、以下が期待される:
1.若手研究者・有識者による研究会/ワークショップ
2. デジタルコンテンツ(動画やパンフレット)の作成
気候変動とそれに関係する諸課題に、日本社会はどう向き合うべきか
<< 随時公開予定 >>
【CIGS・気候変動再考研究会 ワークショップレポート】
日本の気候変動・エネルギー政策のUncertainty Landscape を考える 〜原子力・核燃料サイクルに着目して〜