メディア掲載  エネルギー・環境  2026.01.16

「50年CO2ゼロ」の非現実性、高市政権の覚悟 「脱炭素」の終わりの始まり

週刊フジ(2025年12月29日)に掲載

エネルギー政策

2025年は、日本のエネルギー政策、とりわけ「脱炭素」政策にとって、大きな転換点となる1年であった。象徴的なのが、メガソーラーをめぐる逆風である。北海道・釧路湿原国立公園周辺など各地で環境破壊が問題となり、これまで「環境に優しい」とされてきた太陽光発電に、国民の厳しい視線が向けられるようになった。

自民党総裁選では、高市早苗候補が「美しい日本の国土を外国製のソーラーパネルで埋め尽くすことには反対だ」と明言した。他の候補者も、メガソーラーの乱開発には否定的であり、与党内の空気が明らかに変わりつつあることが示された。

自民党は12月になって、メガソーラーを支援する政府補助を打ち切るなどの提言をまとめている。

メガソーラー補助廃止方針

しかし、その一方で、政府全体としては、いまなお「グリーントランスフォーメーション(GX)計画」を着実に進めている。経済産業省は排出量取引制度の制度設計を進め、来年度から本格導入する方針だ。このGX計画は「50年までにCO2排出を実質ゼロにする」という目標を掲げているが、これは20年に菅義偉首相が打ち出した「CO2ゼロ宣言」を出発点としている。

だが、これはその後の「世界情勢の急激な変化」にまったく追いついていない。ロシアによるウクライナ侵略を契機に、欧州はロシアからの石油・天然ガス輸入を断ち、ロシアはその資源を中国やインドに振り向けた。同時に、米国と中国はAI分野で激しい覇権争いを繰り広げている。

AIの普及には莫大な電力が必要だ。米国の電力消費はいま日本の約4倍であるが、今後10年間でさらに「日本一国分」に相当する需要が上積みされると見込まれている。米国はこのほとんどをガス火力発電で賄うことになる。

中国も同様に、米国に匹敵する規模でデータセンターを増設する。その電力は大半が石炭火力で供給されることになる。

短期間で電力供給を増やすには、原子力は間に合わない。また、天候に左右される再生可能エネルギーでは、24時間365日稼働するデータセンターに、安定かつ安価な電力を供給することはできない。現実的な答えは、火力発電しかない。ところが、日本は「脱炭素」を理由に火力発電所を罰し続けている。

中国、米国、インド、ロシアの4カ国だけで、世界のCO2排出の約半分を占めている。これらの国々はいずれも、化石燃料を活用し、安全保障と経済成長を達成しようとする。

一方で、日本のCO2排出は「世界全体のわずか3%」に過ぎない。にもかかわらず、日本だけが「官僚的な慣性」のままにGXに突き進んでいるのが現状だ。

26年には、日本はGXから脱却し、火力発電を軸とした安定的で安価な電力供給体制を整えるよう、かじを切らねばならない。さもなくば、日本は「AI競争においても敗北する」ことになる。

この政策転換は可能である。

かつて菅首相が「CO2ゼロ」を宣言した際、経産省は官邸の強い圧力によって一気にGX推進へとかじを切った。今度は逆に、高市政権が腹をくくって命ずれば、経産省は再び、「安定供給」と「経済成長」を重視する現実的なエネルギー政策へと戻ることになるだろう。

すでに国民は、SNSから情報を得て、50年CO2ゼロという目標の非現実性に気づいている。メガソーラーの件でも明らかになったように、オールドメディア・霞ヶ関・永田町のエコーチェンバー(=特定の意見しか入ってこない現象)でつくられた「世論」と、実際の「国民感覚」は乖離している。脱炭素一辺倒のエネルギー政策は、もはや国民の支持を得ていない。26年は、その現実に政治が向き合う年であるべきだ。